薬剤師に求められるコミュニケーションスキルとは?必要とされる理由や高める方法について

薬剤師に求められるコミュニケーションスキルとは?必要とされる理由や高める方法について

薬剤師の仕事は患者さんをはじめ、ほかの医療スタッフ、製薬会社の医薬品情報担当者など多くの方とコミュニケーションを取らなければなりません。しかし、中には「人と話すのが苦手」「職場で思うように意思疎通が図れない」と思う方もいるのではないでしょうか。ここでは薬剤師に求められるコミュニケーションスキルについて、必要とされる理由や高める方法などを解説します。

1.薬剤師にコミュニケーションスキルが必要な理由

なぜ薬剤師にコミュニケーションスキルが必要なのでしょうか。その理由について説明します。

1-1.薬機法改正や新たな制度が始まったため

2020年の薬機法改正により、薬剤師には服薬指導のフォローが義務付けられました。薬剤を渡す時だけでなく、患者さんが服薬している期間中の服薬状況、身体状態の変化などを把握し、継続的なフォローが必要となったのです。

また、2016年には「かかりつけ薬剤師制度」も始まりました。患者さんのかかりつけ薬剤師として服薬相談を24時間受け付け、地域医療の一員としてサポートをしていかなければなりません。

そのような背景から、薬剤師には患者さんの状況を把握するため、より高度なコミュニケーションスキルが必要となったのです。

以下の記事ではかかりつけ薬剤師について詳しくまとめています。興味がある薬剤師の方は、ぜひご一読ください。

参照元:厚生労働省/薬機法改正2020年5月
参照元:厚生労働省/平成28年度調剤報酬改定及び 薬剤関連の診療報酬改定の概要

1-2.患者さんとのやりとりのため

薬剤師の専門的な知識を活用するためには、患者さんと信頼関係を築くことが重要です。

そのためには話を傾聴し、相手の立場に寄り添ったコミュニケーションが欠かせません。患者さんは何かしらの持病があり、不安や悩みを抱えている方がほとんどです。相手の気持ちを察して、安心させてあげられるような声かけが求められます。

1-3.医者やさまざまな職種、地域とのスムーズな連携のため

薬剤師には「疑義照会」という、処方箋の内容について疑問点があった場合に、医師へ内容の問い合わせをする業務があります。疑義照会はある意味、医師にミスや漏れを指摘する業務ともいえ、伝え方や言葉使いに配慮した適切なコミュニケーションが求められるのです。

また、介護分野では医師だけでなく看護師や介護士、ケアマネジャーなどとの連携が必要となります。例えば、認知症によって服薬管理が難しい患者さんに対して薬剤師は、服薬の問題点や改善策を多職種に伝えなければなりません。
時には複数の医療機関から処方された薬の飲み合わせについて確認をしたり、患者さんが利用している施設に服薬状況を確認したりすることもあるでしょう。

さまざまな職種や地域とのスムーズな連携のためにも、薬剤師にはコミュニケーションスキルが求められるのです。

以下の記事では薬剤師における多職種との連携についての情報を詳しくまとめています。興味がある薬剤師の方は、ぜひご一読ください。

2.薬剤師に求められるコミュニケーションスキルとは

コミュニケーションスキルはさまざまな要素から成り立っていますが、薬剤師には何が求められるのでしょうか。薬剤師に求められるコミュニケーションスキルについて見ていきましょう。

2-1.傾聴力

傾聴力とは、相手の話に耳を傾けて理解しながら聞く能力です。相手が伝えたいことを引き出し、理解することを目的としています。

通常の服薬指導では、患者さんの話を聞くよりも薬の容量や効果の説明などを優先してしまうことが多いかもしれません。しかし、患者さんによっては初めての服薬で不安に感じていたり、間違った解釈をしていたりすることもあります。

信頼される薬剤師になるためには、一方的に指導するだけではなく患者さんが困っていることを引き出し、傾聴する姿勢が重要です。

2-2.共感力

共感力とは相手の意見に同調したり、感情に寄り添ったりする能力です。患者さんの考えや感情に共感することで安心感を与え、より深い信頼関係を築くことを目的としています。
例えば、患者さんから「喉の痛みで食事するのもつらい」と話があった際、「私も経験ありますが、喉が痛いと飲み込むのが本当につらいですよね」と返すと、患者さんに「同じ経験があってつらさを分かってくれている」というような安心感を与えることができます。
同じような経験がなくても「おつらいですね」「それは大変ですね」など共感する言葉をかけることが大切です。

共感する際は、表情や声のトーンなども合わせるとより感情に寄り添えることでしょう。

2-3.雑談力

雑談力は、その名のとおり雑談をする能力です。雑談を挟むことで、相手との心理的な距離を縮めたり、相互理解を図ったりすることに役立ちます。

例えば、患者さんに「食事はしっかりとれていますか」と質問すると「はい」「いいえ」だけで会話が途絶えてしまいやすく、有益な情報が得られません。雑談を挟んで会話を広げることで、どのような食生活なのか、生活習慣の乱れはないかなどの情報を拾い上げやすくなります。

また、普段会話をしない医師や多職種の方には気軽に相談がしにくいこともあるかもしれません。その場合は、日頃から何気ない雑談でコミュニケーションを図り、信頼関係を深めておくとスムーズに連携が取りやすくなるでしょう。

2-4.提案力

提案力とは相手が求めていることに対して、解決方法を伝える能力です。薬剤師として信頼を得られるような提案をするためには、豊富な知識や経験が欠かせません。

例えば、患者さんから痛み止めについて質問されたとします。痛み止めには多くの種類があるため、効果や目的などの知識が乏しければ最適な提案をすることは難しいでしょう。

しかし知識や経験による引き出しが多ければ提案する選択肢は広がり、患者さんを安心させてあげられるはずです。さらに患者さんの症状や既往歴、合併症などを伺い、提案の取捨選択ができれば、さらに薬剤師として信頼されることでしょう。

2-5.臨機応変な対応力

薬剤師には相手に合わせたり、混雑状況を踏まえたりした臨機応変な対応力が求められます。例えば、服薬に不慣れな患者さんに簡潔すぎる指導をしてしまうと、説明不足となり不安にさせてしまうかもしれません。
逆に長時間待たされて不快になっている患者さんには、手短に説明を済ませるなどの配慮が必要です。
薬剤師には相手の状況に合わせた、臨機応変な対応力が求められます。

3.上手にコミュニケーションを取るためのコツ

スムーズにコミュニケーションを図るためにはいくつかコツが必要です。上手にコミュニケーションを取るためのコツを4つ紹介します。

3-1.専門用語を使わず分かりやすい言葉で話す

患者さんに内容を伝えるために重要なのは、専門用語を使用せずに分かりやすい言葉で話すことです。

2009年に国立国語研究所「病院の言葉」委員会が公表した「『病院の言葉』を分かりやすくする提案」では、どのような工夫を行えばよいのか、医療機関での用語の置き換えの例が提案されています。

例えば「疼痛」「浮腫」「口渇」などは医療従事者なら当たり前の言葉でも、一般の方には周知されていません。それぞれ「痛み」「むくみ」「口が渇く」といったように、分かりやすい言葉を使うことで患者さんに理解が得られやすくなります。相手の立場に立って、理解しやすい言葉で話をすることが信頼関係を築くためには大切です。

参照元:国立国語研究所/「病院の言葉」を分かりやすくする提案

3-2.患者さんによって話し方を工夫する

相手の立場や年齢などを考慮した話し方を意識することも大切です。高齢で耳が遠くて聞き取りにくい方には、ゆっくりとはっきり話をした方が伝わりやすいでしょう。

また、子どもに話をする際には本人、保護者を安心させるような話し方をすると信頼度が増します。話をする相手によって臨機応変に話し方を変えることがポイントです。

3-3.話の間に「相づち」や「うなずき」を入れる

話の合間に「相づち」や「うなずき」を入れると、ちゃんと聞いてもらえているという安心感を与えることができ、逆に何も反応がないと、「話を聞いていないのでは」と不安に思われてしまいます。

相づちを入れる際、発する言葉には注意が必要です。「うんうん」「なるほど」などはよく使われている相づちですが、本来は目上の方に使用する言葉ではありません。「はい」「そうですね」「それは大変でしたね」など、相手の立場を考えた言葉を使うようにしましょう。また、相づちは相手の話を遮らないよう、タイミングよく入れることが重要です。

3-4.情報収集・知識のアップデートを行う

薬剤師の専門知識を常にアップデートし、最新の情報を得るようにしておきましょう。忘れてはならないのが、薬剤師は患者さんの命に関わる仕事であるということです。毎年多くの新薬が承認されており、薬剤師は常に最新の医療情報を収集して患者さんの健康を守らなければなりません。

場合によっては、古い情報を与えたことで服薬方法を誤り、取り返しのつかない事態を招いてしまう可能性もあります。

情報収集するには、セミナーや講演会、Webやアプリ、参考書など、さまざまな方法があるため、自分の生活スタイルに合わせた効率の良い方法で知識のアップデートをしていくようにしましょう。

4.コミュニケーション力を高める方法

コミュニケーションスキルが大切だと分かっていても、苦手な方にとっては不安に思うこともあるでしょう。そのような方にもおすすめのコミュニケーション力を高める方法について紹介していきます。

4-1.ノンバーバルコミュニケーション

ノンバーバルコミュニケーションとは、言語以外の手法を使ったコミュニケーションです。具体的には顔の表情や仕草、声のトーンなど、人間の五感に働きかけるコミュニケーションのことを指します。

薬剤師も一人の人間ですから、体が不調な時もあるでしょう。例えば体調が悪い時に、丁寧な対応を心がけたとしても、どこかに不調が表れていればそれが患者さんにも伝わってしまうこともあります。悪気はまったくなくても、相手によっては不安を感じてしまうかもしれません。

服薬指導の場面ではその逆のケースが非常に大切です。患者さんも自分の心配事や不安を全部言葉にできるわけではありません。患者さんの表情や仕草などから、言葉にできない悩みや心配事をかかりつけ薬剤師として気付いてあげることが重要です。

4-2.ミラーリング

ミラーリングとは、相手の仕草や表情を鏡に映したように真似をする方法のことです。自分に近い仕草をする人や、似た人に対して好感を抱く「類似性の法則」という心理学に基づいたコミュニケーションスキルになります。

例えば、症状が改善して患者さんが喜んでいる時に「本当に良かったですね」「私もうれしいです」などと言葉をかけて態度や表情を真似することで、患者さんからも好感を得られやすくなるでしょう。

ただし、ミラーリングは、わざとらしく必要以上に真似をしないように注意することがポイントです。

4-3.バックトラッキング

相手が発した言葉を繰り返して会話を進める方法をバックトラッキングといいます。同じ言葉や内容を繰り返して返事することで、相手に安心感を与えるテクニックです。

例えば、患者さんの「頭が痛くて、しんどい」という言葉に対し、「頭が痛いのはとてもしんどいですよね」と返します。そうすると、患者さんは「会話を受け入れてくれた」「ちゃんと理解してもらっている」といった感情になり、安心感を持つことができます。
バックトラッキングを活用する際は、状況に合わせて表情やトーンを変えるのがポイントです。

5.アサーティブなコミュニケーションも重要?

薬剤師は話を聞くだけではなく、状況に応じて自分の意見をしっかりと伝えることも重要です。特に医師をはじめ、ほかの医療スタッフと話する際は、チーム医療の一員として自分の意見をしっかりと伝えなければなりません。しかし、目上の人に対して意見を述べるのは困難に思うこともあるでしょう。

そんな時に活用したいのがアサーティブネスなコミュニケーションです。アサーティブネスとは相手の意見や考えを尊重しつつ、自分の意見もちゃんと伝えるテクニックのことで、相手を尊重した上で、誠実に、率直に、対等に、自分の意見を相手に伝えることを目的としています。

相手に自分の感情をぶつけるのが「攻撃的なコミュニケーション」、自分の感情を押し殺すのが「受身的なコミュニケーション」だとすると、この二つの中間になるのがアサーティブネスです。

たとえば、医師に無理な依頼をされた時に「それはできません」と返すのが攻撃的なコミュニケーション、無理なのに「はい。分かりました」と自分の感情を伝えないのが受身的なコミュニケーションになります。「今は業務が忙しく、すぐには対応できないかもしれません。明日以降であれば対応できますが、いかがでしょうか」と代替案を提示するのがアサーティブネスな例です。

相手との関係性を壊さず、かつ自分の思いもしっかりと伝えるために重要なコミュニケーションスキルになるので、実践してみると良いでしょう。

6.まとめ

薬剤師に求められるコミュニケーションスキルについて解説してきました。薬剤師の仕事は患者さんや多職種の方ともコミュニケーションを図っていかなければなりません。
薬機法改正や新たな制度などからも薬剤師の役割は増えており、今後もコミュニケーションスキルが求められることは多いでしょう。今回お伝えした内容をぜひ参考にして、より良いコミュニケーションが図れるように取り組んでみてください。

コミュニケーションアップから、キャリアアップを図り、より患者さんや多職種の方と関わりが深い職場をお探しの方はマイナビ薬剤師に相談をしてみてください。
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この記事の著者

メディカルライター

長崎 燿一郎

医療従事者として、病院やクリニックを中心に医療現場で約20年勤務。現在は整形外科クリニックで働く傍らwebライターとしても活動し、5年目を迎える。医療・健康分野を中心に執筆実績多数。

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