薬剤師や臨床検査技師を目指すには-仕事内容の違いや資格の取得方法について紹介
医療機関で働くコメディカルのなかで、看護師と並んで一般によく知られているのが薬剤師と臨床検査技師ではないでしょうか。医療職への進路を考えるとき、この両者を選択肢とする方も多いと思います。
ここでは薬剤師と臨床検査技師について、それぞれの仕事内容と両者の違い、資格の取得方法や収入、転職事情などを解説していきます。
目次
1.臨床検査技師とは
臨床検査技師とは、医師または歯科医師の指示に基づき、正しい診断と治療のために臨床検査をおこなう医療専門職です。
ここから、臨床検査技師を目指すために必要なことや仕事内容、年収についてご紹介します。
参照元:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag/臨床検査技師
1-1.臨床検査技師を目指すには
臨床検査技師を目指すには、臨床検査技師国家試験に合格しなければなりません。
大学の医療系学部、3年制短大の臨床検査学科や専門学校・養成所などを卒業することで、国家試験の受験資格を得ることができます。
医療医系大学の保健学科で検査技術専攻を卒業して国家試験に臨むのが一般的ですが、医師・薬剤師・獣医師などの学部から不足する科目を短大など養成所で履修して国家試験に進む道もあります。
大学の偏差値は30台後半から60まで幅があり、勉強しやすく自分に適した立地や環境を選ぶのが良いでしょう。国立大学を目指すのであれば偏差値は55前後が目安となります。
年間の学費は国立大学の場合、初年度80~90万円程度で2年目以降の授業料は50~60万円となっています。
私立大学の学費は実習費や施設費など含め、年間150~180万円程度としている大学が多いようです。
参照元:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag/臨床検査技師
厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag/薬剤師
1-2.臨床検査技師の仕事内容
臨床検査技師の仕事は2種類に大別されます。血液、尿や糞便、組織などの検体を使用しておこなう「検体検査」と、医用検査機器で脳波や脈波、心電図などを収集・解析する「生理機能検査」があります。
臨床検査がおこなわれるのは病院やクリニックだけでなく、検体検査を専門におこなう検査機関や健康診断を専門におこなう検診センターなどもあります。
ここ数年では検体検査のアウトソーシングが進んでいるため、医療機関では超音波検査などの専門領域に従事することが多い傾向にあります。
そのほか、検査機関や製薬会社、医療機器メーカーなども臨床検査技師の就職先となっています。
医用画像診断装置のうち、レントゲンやCT、マンモグラフィーなど放射線を扱う業務は診療放射線技師がおこないますが、超音波診断装置やMRIは臨床検査技師と放射線技師のどちらも扱えます。
また、日本消化器内視鏡学会では、実務経験を経て認定試験に合格した臨床検査技師や看護師に対して、内視鏡検査の介助をおこなう「消化器内視鏡技士」を認定しています。
院内に検体検査室を持つ大規模医療機関の場合は、シフトによる24時間体制や緊急呼び出し、あるいは当直業務が必要となることもあります。
また、医療界全体でタスクシフティング(タスクシェアリング)が進んでおり、臨床検査技師の業務範囲も徐々に拡大しています。
自動化によって検体検査における臨床検査技師の業務が減少する一方で、子宮頸がん検診の推進による細胞検査士の需要増や、ニーズの高い超音波検査士など、専門分野のエキスパートとして臨床検査技師の需要は今後も増えていくものと思われます。
タスクシフティング(タスクシェアリング)について詳しくは下記記事をご覧ください。
参照元:一般社団法人 日本消化器内視鏡学会/内視鏡検査はだれがやっているの?
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター/検体検査室
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会/法改正により追加される業務について
公益社団法人 日本臨床細胞学会/細胞検査士とは
公益社団法人 日本超音波医学会/超音波検査士制度委員会
1-3.臨床検査技師の年収
厚生労働省による賃金統計によれば、令和3年度の臨床検査技師の平均年収は496.5万円、男女別では男性550.4万円、女性472.4万円でした。
また、年齢別で男女合計の平均年収を見てみると、20〜24歳で336.5万円、25〜29歳で412.0万円、30~34歳では434.8万円と、年齢が上がるにつれ年収額も高くなっています。
臨床検査技師の平均年収 | |
---|---|
男女合計 | 496.5万円 |
男性 | 550.4万円 |
女性 | 472.4万円 |
臨床検査技師の年齢別平均年収(男女合計) | |
---|---|
20〜24歳 | 336.5万円 |
25〜29歳 | 412.0万円 |
30〜34歳 | 434.8万円 |
35〜39歳 | 487.2万円 |
40〜44歳 | 518.8万円 |
45〜49歳 | 566.1万円 |
50〜54歳 | 616.3万円 |
55〜59歳 | 609.7万円 |
参照元:e-Stat/職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
2.薬剤師とは
薬剤師とは医師の処方せんに基づいて薬の調剤や患者さまに服薬指導をおこなう医薬品と薬物治療のエキスパートです。
かつては調剤が薬剤師の仕事の大半を占めていましたが、近年では調剤が機械化・自動化され、さらには薬のピッキングや棚入れを調剤補助員やロボットがおこなうケースが増えています。
調剤業務の負担が軽減されることにより、薬剤師は単なる「薬物治療の専門家」から脱却し、地域の住民が自身の健康について最初に相談する「かかりつけ薬剤師」として、未病の段階から国民の健康を守ることが求められています。
これまでは、クリニックや病院近くの「門前薬局」と呼ばれる市中の調剤薬局と、病院における院内薬局が薬剤師の主な職場でしたが、地域密着型のかかりつけ薬剤師として機能すべく、薬局以外にも介護施設や公共機関、ドラッグストアを筆頭にコンビニやスーパーマーケットなどのチェーンストアまで、活躍の場は拡大しています。
2-1.薬剤師を目指すには
薬剤師を目指すには、大学の6年制薬学部を卒業するか、4年制の薬学過程を修了した後、大学院で履修するなどして国家試験の受験資格を得ることになります。
4年制学部の修了後、大学院へ進んだ方も、実習を履修し不足単位を取得することで薬剤師試験の受験資格を得られましたが、その後法改正され4年制過程からの進路で受験資格を得られるのは2017年度入学者が最後となり、現在は原則として6年制薬学部卒でなければ受験資格を得られません。
6年制の学部では4年までは薬学の専門知識を学び、5年時以降では薬局や病院などで実際の業務に携わる実習がおこなわれます。
薬学部の偏差値は低いところでは35程度から国公立大学などの60超えまで幅があり、6年間の授業料も国立大学の約350万円から私立では1400万円くらいまで大きな幅がありますが、1200万円前後が平均的な費用感といえるでしょう。
薬剤師になるまでのステップについて、国家試験の合格率や大学選びなど、さらに詳しい情報は関連記事をご覧ください。
参照元:文部科学省/薬学教育制度の概要
厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag/薬剤師
2-2.薬剤師の仕事内容
薬剤師の仕事の流れはおおむね次のとおりです。処方せんの受付、処方の監査と医師への疑義照会、調剤、監査を経て患者さまへの交付、服薬指導となります。
その後、交付した薬の調剤内容や服薬指導内容、疑義照会の内容などを記録し、保管します。
ドラッグストアなどではこれに加えてOTC医薬品の情報提供や管理などの業務があります。
これまで薬剤師の業務は処方せん受付から始まるのがあたりまえでした。
しかし、現在では自動化や省力化により調剤業務よりも対人業務に重きをおくようになっており、「かかりつけ薬剤師」として来店される方の健康相談にのることや、服薬中の患者さまの体調や生活の状況を把握し、医薬品の効果だけでなく食事や睡眠など生活全般に気を配ることが薬剤師に求められています。
2-3.薬剤師の年収
厚生労働省による賃金統計によれば、令和3年度の薬剤師の平均年収は580.5万円、男女別では男性630.3万円、女性545.3万円でした。
また、年齢別で男女合計の平均年収を見てみると、20〜24歳で378.4万円、25〜29歳で473.3万円、30~34歳では547.0万円と、臨床検査技師と同じく年齢が上がるにつれ年収額も高くなっています。
薬剤師の平均年収 | |
---|---|
男女合計 | 580.5万円 |
男性 | 630.3万円 |
女性 | 545.3万円 |
薬剤師の年齢別平均年収(男女合計) | |
---|---|
20〜24歳 | 378.4万円 |
25〜29歳 | 473.3万円 |
30〜34歳 | 547.0万円 |
35〜39歳 | 613.6万円 |
40〜44歳 | 640.7万円 |
45〜49歳 | 635.4万円 |
50〜54歳 | 683.2万円 |
55〜59歳 | 642.2万円 |
参照元:e-Stat/職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
3.臨床検査技師の資格の取得方法や難易度
臨床検査技師になるには大学や専門学校などで必要過程を履修し、国家試験に合格しなければなりません。
まず目指すべきは国家試験突破ですが、専門課程での努力次第では必ずしも狭き門というわけではないようです。
参照元:厚生労働省/国家試験合格発表
厚生労働省/第68回臨床検査技師国家試験の合格発表について
3-1.資格取得の流れ
臨床検査技師の資格を取得するは、臨床検査技師国家試験に合格する必要があります。
国家試験の受験資格を得るには、臨床検査技師養成機関(4年制大学の専門課程、3年制以上の短大もしくは専門学校)を卒業するか、大学の獣医学部、薬学部で正規過程と厚生労働大臣の指定科目を履修した者、または大学の医学部・歯学部を卒業すると受験資格が得られます。
これらの教育機関、大学を卒業した後、国家試験に合格することで臨床検査技師として就業することができます。
薬剤師などほかのコメディカルが臨床検査技師国家試験の受験資格を取得するには、現在の資格に追加で必要な科目の講義と実習を受け、所定の単位を取得する必要があります。
例えば、薬剤師から臨床検査技師に転職するには、放射薬品学、病態検査学Ⅱ、臨床生理学、医用工学概論の講義を受け、実習を履修して単位を取得します。
3-2.臨床検査技師の難易度
過去5年間の臨床検査技師国家試験の合格率は以下のとおりです。
2018年 79.3%(うち新卒者90.5%)
2019年 75.2%(うち新卒者86.5%)
2020年 71.5%(うち新卒者83.1%)
2021年 80.2%(うち新卒者91.6%)
2022年 75.4%(うち新卒者 86.4%)
受験者全体では概ね70~80%が合格、新卒に限れば80~90%が合格しています。200点中120点取れば合格となりますので、試験対策をしっかりしておけば決して難しい試験ではありません。
ただし、臨床検査技師は最新の検査機器を扱う専門家として、コンピュータや電子回路、情報処理や通信などの医用工学を学ぶ必要があります。
薬剤師など他の医療職から転職する場合には、デジタル分野の勉強が特に重要となります。
参照元:
厚生労働省/第64回臨床検査技師国家試験の合格発表
厚生労働省/第65回臨床検査技師国家試験の合格発表
厚生労働省/第66回臨床検査技師国家試験の合格発表
厚生労働省/第67回臨床検査技師国家試験の合格発表
厚生労働省/第68回臨床検査技師国家試験の合格発表
4.薬剤師の資格の取得方法や難易度
薬剤師を目指すには、まず6年制の薬学過程を修了して国家試験に合格しなければなりません。
薬剤師国家試験の合格率をみるとおおむね70%前後となっており、新卒者に限れば80%以上となっています。6年間きちんと勉強することが合格への最短ルートといえそうです。
ただし大学によって合格率には差があり、大学選びも重要なポイントといえるでしょう。
4-1.資格取得の流れ
薬剤師の資格を取得するには、薬剤師国家試験に合格する必要があります。
薬剤師国家試験の受験資格は、6年制の薬学部もしくは薬科大学に入学して薬学を学び、4年次におこなわれる薬学共用試験に合格、実習を修了し卒業することで得られます。
その後、薬剤師国家試験に受験し、合格後に薬剤師名簿に登録するための申請をおこない、薬剤師名簿に登録され薬剤師免許証の交付を受けてはじめて薬剤師として就業することができます。
薬剤師国家試験に合格しただけでは薬剤師業務はおこなえないので必ず登録申請が必要です。
4-2.薬剤師の難易度
過去5年間の薬剤師国家試験の合格率は以下のとおりです。
2018年 70.58%(うち新卒者84.87%)
2019年 70.91%(うち新卒者85.50%)
2020年 69.58%(うち新卒者84.78%)
2021年 68.66%(うち新卒者 85.55%)
2022年 68.02%(うち新卒者 85.24%)
受験者全体では概ね70%が合格、新卒に限れば85%前後が合格しています。
薬剤師国家試験は、2015年以前は「得点率65%以上」が合格とされていましたが、2016年以降は標準偏差による相対基準で合否を判定しています。
大学によっても合格率に差があるので、大学選びも重要ですが、なにより6年間しっかり勉強してストレート合格を目指すのが薬剤師への最短ルートといえるでしょう。
参照元:
厚生労働省/第103回薬剤師国家試験 大学別合格者数
厚生労働省/第104回薬剤師国家試験 大学別合格者数
厚生労働省/第105回薬剤師国家試験 大学別合格者数
厚生労働省/第106回薬剤師国家試験 大学別合格者数
厚生労働省/第107回薬剤師国家試験 大学別合格者数
5.薬剤師と臨床検査技師の転職事情
薬剤師と臨床検査技師の転職事情にも触れておきます。
先ほども述べたとおり、薬剤師の主な勤務先には病院・調剤薬局・ドラッグストア・製薬会社などがありますが、それぞれの業務内容には違いがあります。
薬剤師が転職をする場合、転職後は以前とまったく違う業務内容になる可能性が考えられます。
転職前の職場で身につけたスキルと、新しい職場で求められるスキルが異なる場合にはそもそも採用に至らない可能性もあるので注意しなければなりません。
また、薬剤師の転職には実務経験が求められることが多いので、若いうちに急性期病院や大学病院などでさまざまな経験を積める環境に身を置いておくと、将来転職したくなった時に有利な条件で転職できる可能性があります。
臨床検査技師の転職に関するポイントとしては「病院における臨床検査技師の定員数は定められていない」ということが挙げられます。
多くの検査を外部の会社に委託するなど、院内では必要最低限の検査しかおこなわない病院もあります。したがって臨床検査技師の求人は少なく、転職先を探すのも容易でない地域もあります。
転職を検討する場合には入念な準備をした方が良いでしょう。
また臨床検査技師は、日々の業務の中で転職に役立つような実績を作るのが難しい職種です。
学会発表や関連資格の取得は転職の際にアピールポイントになる可能性があるので、将来的に転職する可能性を考えている場合は積極的に実績を作っておくようにしましょう。
6.薬剤師・臨床検査技師への転職は転職エージェントを活用しよう
薬剤師の求人市場が年々厳しくなるなか、薬剤師の転職先は病院や薬局だけでなく、治験企業や医薬品卸、MRやMSLなど多岐に渡ります。
臨床検査技師も、臨床検査を専門機関に委託する病院が増えているため、病院での求人ポスト自体が少なく、病院から検査を受託する専門の検査機関や、医療機器メーカーへの就職も想定する必要があります。
つまり薬剤師も臨床検査技師も多岐に渡る就職先から自分に最適な一つを見つけるのは難しい時代であるといえるでしょう。
そこで、実際に転職活動をする際には、薬剤師や臨床検査技師に適した多くの求人情報を収集している転職エージェントを活用するのがおすすめです。
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7.まとめ
臨床検査技師は最新の検査機器を駆使する検査のエキスパート、一方の薬剤師は医薬品のスペシャリストにしてコミュニケーションの達人であることが基本といえます。
臨床検査技師になるには4年生の専門課程か養成機関での教育が必要となり、一方の薬剤師は6年制薬学部での履修が必須となります。履修科目も電子工学が主となる臨床検査技師に対し、薬剤師は薬学が中心となります。
臨床検査技師は検体を調べる検体検査から、患者さまの身体そのものを調べる生理機能検査へと重心が移りつつあり、薬剤師もまた調剤中心の業務から患者さまとのコミュニケーションを主体とする対人業務へとシフトし始めています。
いままで解説した仕事内容や収入の比較、資格を取得するまでの道のりや難易度などを踏まえて今後の進路選択や転職にお役立てください。
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