薬局長になるために必要なこととは?主な仕事内容や求められるスキルについて解説
「薬局長」は、調剤薬局などで勤務する薬剤師にとって、「管理薬剤師」と同じく
よく耳にする役職です。しかし、薬局長と管理薬剤師の厳密な違いについてはあまり知らないという方もいるのではないでしょうか?
今回は、薬局長の仕事内容や気になる年収、そして求められるスキルなどについて詳しく解説します。
目次
1.薬局長とは
薬局長は、調剤薬局における管理職の一つですが、よく似ている管理職である管理薬剤師やエリアマネージャーなどの役職とは、どのような違いがあるのでしょうか。
管理薬剤師との違いや、エリアマネージャーとの違いに着目し、薬局長の位置づけについて見ていきましょう。
1-1.管理薬剤師との違い
管理薬剤師と薬局長は、どちらもいわゆる薬局の責任者という立場です。しかし、管理薬剤師は、薬機法によって、薬局1店舗ごとに設置することが定められている責任者です。それに対し、薬局長は、法による定めはなく、薬局の経営者が独自に設定する役職のことで、小売店でいえば「店長」と同様の立場になります。
管理薬剤師は、各薬局に必ず1人設置されていますが、薬局長に関しては、設置している店舗もあれば、そもそも設置していない店舗もあるのです。また、管理薬剤師が薬局長を併任していることもあります。
薬局長と管理薬剤師の異なる点としては、ポジションに就くための要件です。管理薬剤師は、厚生労働省が定める要件(5年以上の実務経験と、薬剤師認定制度認証機構などによる認定薬剤師であることなど)を満たした薬剤師のみが就くことができますが、薬局長は必ずしも薬剤師である必要はなく、事務を担当しているリーダーが薬局長になるケースもあります。
参照元:厚生労働省/「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」
について
このように、薬局長と管理薬剤師は、似ているようでまったく異なるポジションであることが分かるでしょう。
管理薬剤師についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
1-2.エリアマネージャーとの違い
薬局長は、薬局1店舗ごとの責任者としてのポジションです。それに対し、エリアマネージャーは、同一企業が地域内で複数の薬局を経営している場合において、それぞれの店舗が適正に運営できているかを確認し、企業オーナーと各店舗との情報共有をサポートする役職です。
厚生労働省のガイドラインでも、エリアマネージャーは、複数の薬局をまわり、オーナーと各薬局とをつなぐ「橋渡し役」として配置するものと明記されています。
多くの場合、エリアマネージャーは大手調剤薬局や全国チェーンの薬局などで配置されています。
エリアマネージャーについて、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
参照元:厚生労働省/「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」
について
2.薬局長の主な仕事内容
薬局長は、薬局でどのような業務を担当するのでしょうか。薬局長は、各企業が任意で設置するポジションのため、薬局長が担当する業務内容や職責は企業ごとに異なります。
ここでは、一般的な調剤薬局における薬局長の主な仕事内容を一例としてご紹介しますので参考にしてください。
2-1.スタッフの管理や指導・育成
薬局長は、店舗責任者として、人事に関する管理や指導・育成などのマネジメント業務に関わるのが一般的です。
例えば、現在勤務しているスタッフのシフト管理や評価・指導などの業務を行います。また、新人の採用や育成に関わる業務も、店舗を総括するポジションとしてこなしていきます。
2-2.医薬品の管理
医薬品の管理に関しての全ての責務は当然、管理薬剤師にあるのが前提とした上で、薬局長は管理薬剤師をサポートする立場として、店舗で扱う医薬品の管理業務を行います。
例えば、管理薬剤師が医薬品の保管状況や在庫を確認し、薬局長は、その指示を受けて医薬品の発注業務や在庫の整理整頓などを行います。このように、医薬品の管理に問題がないかを確認して管理薬剤師に報告するのも、薬局長の大切な業務の一つです。
2-3.医療機関と連携・情報共有
薬局長は医療機関との協力体制を整えたり、適切な調剤業務に必要な情報共有を率先して行うことも業務に含まれます。
例えば、在宅医療の患者さんに対し、調剤を行っている薬局であれば、店舗の代表者として、主治医やケアマネージャーとの情報共有や打ち合わせなどのコーディネートを行います。また、他の医療機関や薬局との情報伝達を目的とする書類や資料の作成を担当することもあるでしょう。
2-4.服薬指導・調剤業務
薬局長が薬剤師資格を持っている場合は、薬局長も率先して患者さんへの服薬指導や日常的な調剤業務を行います。ただし、医薬品取り扱いに関する最終的な責務は管理薬剤師にありますので、その店舗の管理薬剤師の指示に従って、これらの業務を行うことになります。患者さんとスタッフとの間にトラブルやクレームが発生した場合は、管理薬剤師とともにその対応にあたり、解決へと導きます。
2-5.売り上げ・予算管理
薬局長は、店舗の責任者として店舗の売り上げや予算管理など、経営マネジメントに関する業務を行います。経費や予算に関する課題を洗い出し、オーナーに報告をしたり、自ら改善策を提案したりするなど、店舗の経営状況がよくなるように最善を尽くします。
3.薬局長の年収はどれくらい?
薬局長は管理職のため、一般の薬剤師より高収入の傾向があります。人事院が公開している最新調査で、薬局長の年収を見てみましょう。
2019年(平成31年)職種別民間給与実態調査の結果によると、薬局長(平均年齢50.2歳)の平均月収は、以下のとおりです。(※薬局長に関するデータは、現状2019年が最新のデータとなります。)
- 決まって支給される給与(A):50万3,863円
- うち時間外手当(B):2万5,616円
- 月給(A-B):47万8,247円
- うち通勤手当:1万4,812円
ここから平均年収を算出すると、実質的な平均年収(決まって支給される給与〈時間外手当、通勤手当含む〉×12ヵ月)は604万6,356円になります。
この調査では、ボーナスは含まれていないため、ボーナスを含む年収ではさらに高くなるでしょう。
また、薬局長の平均年齢50.2歳と同世代の一般薬剤師(年齢区分48~52歳)の平均支給額は41万4,920円であり、ここから実質的な平均年収(決まって支給される給与(時間外手当、通勤手当含む)×12ヵ月)を計算すると、497万9,040円になります。
つまり、同年代の一般薬剤師と薬局長を比較した場合、年収におよそ100万円の差があることからも、一般的に薬局長の年収は一般薬剤師より高い傾向にあるといえるでしょう。
参照元:人事院/2019年(平成31年)職種別民間給与実態調査の結果
4.薬局長になるためには
薬局長になるための要件は特に定められていませんが、店舗をまとめる責任ある立場になるため、それなりの覚悟と努力が必要です。薬局長になるための方法や心構えについて見ていきましょう。
4-1.経験や実績を積む
薬局長は、管理薬剤師のように特定の要件があるわけではありません。したがって、薬局長になるためには、薬局での薬剤師としての実務経験や薬局を運営するにあたっての事務経験、人材育成の実績などが重視されます。薬局長になりたい意思をしっかりとオーナーに伝えた上で、日常業務の中で実績を積み、信頼を得ておくことが大切です。
4-2.転職を考えてみる
調剤薬局の中には、即戦力としての薬局長の求人を出しているところだけでなく、将来的に薬局長や管理薬剤師になりたい方のために、研修制度を備えた求人を公開しているところもあります。薬局長になるための研修制度を利用すれば、働きながら、経営や人材教育に関する知識を効率よく身に付けられるでしょう。薬局長としてキャリアをスタートさせたい方は、このような求人を狙って転職してみるのも一つの方法です。
マイナビ薬剤師では、薬局長を目指す方のための求人をご紹介しています。薬局長の求人一覧はこちらをご覧ください。
> 薬局長の薬剤師求人・転職情報一覧
5.薬局長に必要なスキルや能力
薬局長として店舗をまとめるには、どのようなスキルや能力が求められるのでしょうか?実際に現場で求められるスキルや能力についても見ていきましょう。
5-1.マネジメント能力
薬局長は、店舗の責任者として、店の経営や人材を適切に管理する高いマネジメント能力が求められます。地域の患者さんのニーズを捉え、薬局店と患者さんの双方にとって最善のサービスを提供できるように常に考えて行動しなくてはなりません。また、店のスタッフが快適に働けるよう、心地よい職場環境をつくり出す能力も身に付ける必要があります。
5-2.コミュニケーションスキル
薬局長には豊かなコミュニケーションスキルも必要です。調剤や服薬指導の際などに、患者さんとスタッフの間にトラブルやクレームが発生した場合は、薬局長が率先して解決に導かなくてはなりません。また、人材育成の場面や、スタッフ間の人間関係のトラブルに直面したときでも、ためらうことなく、持ち前の人間力を生かして、円滑にコミュニケーションをとり、解決するスキルが求められるのです。
5-3.医薬品に関する知識
薬局を運営するにあたり、薬局長には、医薬品の種類や適正な管理方法、法的な知識など、医薬品に関する幅広い知識が求められます。薬局長の他に、管理薬剤師が配置されている場合でも、管理薬剤師任せにせず、薬局長自身がしっかりとした知識を身に付けておくことが必要です。店舗で何らかの疑問や問題が発生した場合には、知識を基に状況を正しく判断し、迅速に問題を解決する力が求められます。
5-4.情報収集力
薬局長は常に情報を収集するためのアンテナを張っていなくてはなりません。日々登場する新薬や新しい治療法に関するニュース、医療報酬や医療保険制度に関する最新情報をチェックするだけでなく、地域活動や地域経済に関するニュースにも注意を向け、常に幅広い情報を収集する力が必要です。また、取引先の医薬品卸業者のスタッフなどとも積極的にコミュニケーションをとり、タイムリーな情報を収集する力も求められます。
6.薬局長に資格は必要?
薬局長になるために特定の資格が必要というわけではありません。しかし、すでに薬剤師資格を持っている方であれば、さらに上位の資格の取得を目指し、スキルアップを図ることで、より専門性を高めることができます。
例えば、在宅医療や他職種連携に積極的に取り組んでいる地域の薬局であれば、在宅医療やプライマリ・ケアに関連する認定薬剤師資格や専門薬剤師資格を取得することで、日々の業務に生かすことができます。
小児医療に力を入れている薬局であれば、小児関連の薬剤師資格をプラスアルファで取得しておくと、知識と経験を高めることができるでしょう。
上位の資格を取得すると、自身のキャリアアップにつながるだけでなく、手当の優遇を受けられるものメリットです。
マイナビ薬剤師では、薬剤師のキャリアアップに役立つ資格についての情報を提供しています。もっと詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
7.まとめ
薬局長は、薬局を経営している企業が、各店舗の運営責任者として任意で設置する管理職です。管理薬剤師やエリアマネージャーと混同されがちですが、それぞれ役割や立場が異なります。管理職である薬局長は、一般薬剤師と比較すると高収入が期待できるため、ぜひチャレンジしたいポジションです。店と人をマネジメントする力や、高いコミュニケーション能力などが求められ、責任ある立場ではありますが、これまでの経験や自身で積み上げたスキルを活用して挑戦してみましょう。
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