病院薬剤師の給料は安すぎるって本当?薬局薬剤師との比較データを紹介

病院薬剤師は薬局薬剤師と比べて給料が安いといわれることがあります。仕事の幅が広く専門性も求められるにもかかわらず、収入に反映されにくいと感じている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、厚生労働省の資料をもとに病院薬剤師と薬局薬剤師の年収を比較しながら、給料が安いといわれる理由や、給料アップを目指すための具体的な方法を解説します。
目次
1. 病院薬剤師の給料は安すぎるって本当?
病院薬剤師の給料は、キャリアの前半では薬局薬剤師より低い傾向にあります。厚生労働省の「薬剤師確保のための調査・検討事業 報告書」(2022年3月)によると、新卒薬剤師の初任給(基本給・賞与・各種手当を含む年額)の平均は、病院が372万7千円、薬局が415万3千円となっており、両者には40万円以上の差があります。年代別の年収分布を見ても、年収500万円未満が占める割合は、20代で病院91.8%・薬局67.1%、30代で病院49.5%・薬局28.0%となっており、いずれの年代でも病院薬剤師の方が低い年収帯に集中しているのが実情です。
一方で、40代以降はこの傾向が逆転します。年収700万円以上の薬剤師が占める割合は、40代で病院31.2%・薬局30.2%とほぼ同水準、50代では病院55.5%・薬局36.4%となっており、病院薬剤師の方が年収700万円以上の割合が高くなっています。つまり、生涯年収で考えると、病院薬剤師と薬局薬剤師に大きな差はない可能性が高いといえるでしょう。
また、厚生労働省「薬剤師の偏在への対応策」では、65歳まで常勤で働くことを想定した累積年収を比較しています。病院薬剤師は2億3280万円、薬局薬剤師は2億2768万円と、その差額は512万円にとどまっています。
参考:薬剤師確保のための調査・検討事業 報告書|厚生労働省
参考:薬剤師の偏在への対応策|厚生労働省
2. 病院薬剤師の平均年収はいくら?
厚生労働省の「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査) 報告」によると、2024年度の病院薬剤師の平均年収は、581万1246円でした。ただし、病院の開設者によって年収に差があります。開設者別の平均年収は、以下のとおりです。
| 開設者 | 病院薬剤師の平均年収 | 平均年収の伸び率(前年度比) |
|---|---|---|
| 国立 | 602万8,116円 | -0.2% |
| 公立 | 626万6,808円 | +3.6% |
| 公的 | 603万9,181円 | +1.4% |
| 医療法人 | 539万5,961円 | +1.1% |
| その他 | 550万4,103円 | +2.2% |
| 法人その他全体 | 581万859円 | +2.1% |
| 全体 | 581万1,246円 | +2.1% |
公立病院が最も高く、医療法人との差は約87万円です。また、前年度比ではほとんどの開設主体でプラスとなっており、全体で+2.1%の伸びを示しています。国立のみ-0.2%とわずかに減少していますが、病院薬剤師の平均年収は上昇傾向にあるといえるでしょう。
2-1. 病院薬剤師は薬局薬剤師よりも年収が低い?
「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査) 報告」によると、2024年度の薬局で働く一般薬剤師の平均年収は479万4684円、管理薬剤師の平均年収は725万3583円でした。薬局では管理薬剤師と一般薬剤師の間に約246万円の差があり、役職によって年収が大きく異なります。
| 区分 | 平均年収 |
|---|---|
| 薬局(管理薬剤師) | 725万3,583円 |
| 薬局(一般薬剤師) | 479万4,684円 |
| 病院薬剤師 | 581万1,246円 |
病院薬剤師の平均年収と比較すると、薬局の管理薬剤師よりは低いものの、薬局の一般薬剤師よりは約102万円高い水準です。「病院薬剤師は薬局薬剤師より年収が低い」と一概にはいえず、どの役職と比較するかによって結論は異なります。
参考:第25回医療経済実態調査(医療機関等調査) 報告|厚生労働省
3. 病院薬剤師の給料が安いといわれる理由
「病院薬剤師の給料が安い」と感じられる背景には、給料の絶対額だけでなく、業務の負荷や責任の重さとのバランスも関係しています。ここからは、病院薬剤師の給料が安いといわれる理由について解説します。
3-1. 20代・30代の給料水準が高くない傾向にあるため
病院薬剤師の給料が安いといわれる理由の一つが、20代・30代の給料水準が薬局薬剤師より低い傾向にあることです。これには、病院ならではの事情が関係しています。
「薬剤師の偏在への対応策」によると、就職先を決める際に重視した点について、病院薬剤師は業務内容・やりがい・給料水準の順であるのに対し、薬局薬剤師は給料水準・通勤時間・勤務時間の順でした。就職先に病院を選ぶ薬剤師は、給料よりもやりがいを優先する傾向があり、病院側は人材を確保しやすいといえます。
一方で薬局やドラッグストアでは人材確保のために初任給を高めに設定するため、20代・30代の給料水準に差が生じやすくなっていると考えられます。
3-2. キャリアアップの選択肢が限定的な場合があるため
キャリアアップの選択肢が限定的な場合があることも、病院薬剤師の給料が安いといわれる理由の一つです。
全国展開している薬局チェーンやドラッグストアでは、店舗数が多い分だけ管理薬剤師やエリアマネジャーなどのポストも豊富です。その一方、病院では昇進できるポストの数が限られており、経験を積んでもキャリアアップできず、給料に反映されにくいケースが見られます。
例えば、病院の薬剤部長は、薬剤師全体の統括やハイリスク薬の管理など幅広い責任を担うポジションです。就任するには、専門・認定資格の取得やマネジメント経験が求められる他、規模の大きい病院では勤続年数が重視されることもあるため、短期間で目指せるポストではありません。キャリアアップまでのハードルの高さも「病院薬剤師の給料は安い」と感じる一因になっているのでしょう。
3-3. 仕事内容に見合った収入を得られていないと感じるため
病院薬剤師は、調剤や服薬指導にとどまらず、幅広い業務を担っています。入院患者の持参薬の確認や医薬品の在庫・品質管理、医師や看護師への医薬品情報の提供など、その範囲は多岐にわたります。
さらに、がん化学療法における抗がん剤の無菌調製や、救急搬送された患者に対して薬剤を選択する場面など、高い専門性と判断力が求められることも少なくありません。病院によっては夜勤や当直があり、昼夜を問わず対応が必要になることもあるでしょう。
業務の幅が広く専門性も求められる一方で、給料に十分反映されているとはいいにくいのが現状です。負荷と報酬のバランスへの不満が、安すぎるという実感につながっていると考えられます。
4. 病院薬剤師が給料アップを目指すには?
病院薬剤師が給料を上げるには、今の病院で収入を増やす方法と、転職によって年収水準を上げる方法があります。自身のキャリアプランやライフスタイルに合わせて、検討してみてください。
4-1. 専門薬剤師・認定薬剤師の資格を取得する
がん専門薬剤師や感染制御専門薬剤師、糖尿病薬物療法認定薬剤師といった専門資格の取得は、給料アップにつながりやすい方法です。病院によっては資格手当が支給されることがあります。また、特定の業務や役職に就く機会が広がり、キャリアアップも期待できるでしょう。
病院薬剤師が資格を取得するメリットは、習得した知識やスキルを日々の臨床業務にそのまま生かせる点です。例えば、感染制御認定薬剤師であれば、院内の感染対策チームの一員として病院全体の感染対策に携わることができます。
その他にも、小児薬物療法認定薬剤師や漢方認定薬剤師、在宅療養支援認定薬剤師など、薬剤師にはさまざまな認定資格があるため、自身の興味がある分野の資格について調べてみるとよいでしょう。
4-2. 管理職・役職へのキャリアアップを目指す
すでに病院薬剤師としてのキャリアがあれば、薬剤部長や主任といった管理職を目指すことで、給料アップを見込める場合があります。病院によっては管理職手当が支給される場合もあり、キャリアアップが収入に直結しやすいポイントです。
管理職を目指すにあたり、日々の調剤業務や病棟業務を着実にこなすことに加えて、院内のプロジェクトや委員会に積極的に関わったり、後輩の指導を担ったりと、マネジメント面で実績を示していくことが評価につながります。専門・認定資格の取得も、キャリアアップの判断材料として有利に働く場合があるでしょう。
4-3. 国公立病院へ転職する
今の病院での給料アップが難しい場合は、国公立病院への転職を検討するのも一つの方法です。先述のとおり、国公立病院における薬剤師の平均年収は、病院薬剤師の中でも高い傾向にあります。
特に国立病院で働く場合は、公務員として医療職の俸給表に基づいた給料体系が適用されるのが一般的であり、定期的な昇給が見込めます。また、公務員として転職すれば、産前・産後休業や育児休業などの福利厚生も手厚く、ライフステージが変わっても働き続けやすい環境が整っています。
4-4. 薬剤師が不足している地域での勤務を検討する
薬剤師の年収は、都市部よりも地方の方が高くなるケースがあります。都市部は薬学部を持つ大学が集中しており人材を確保しやすい一方、地方では薬剤師が不足しがちです。そのため、人材確保の目的で給料を高めに設定している場合があります。
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、年収が最も高かったのは高知県の690万1500円で、続いて岡山県の655万1900円、宮城県の652万4千円でした。一方、東京都は538万7800円、大阪府は532万7100円です。地方でも都市部を下回る地域はあるものの、全体としては地方の方が年収は高い傾向にあるでしょう。
ただし、地方で新しい生活を始める場合は、知り合いがほとんどいない状態からのスタートになることが多いです。交通機関が限られている地域では車が必要になることもあるため、生活面での準備も考えておきましょう。
4-5. 薬局やドラッグストアへ転職する
給料アップを目指すのであれば、薬局やドラッグストアへの転職を検討するのもよいでしょう。先述のとおり、キャリアの前半では病院薬剤師よりも薬局薬剤師の方が平均年収が高い傾向にあります。評価体制が整備されている薬局を選べば、継続的な昇給も期待できるでしょう。
近年は、調剤薬局を併設するドラッグストアも増えています。全国展開しているドラッグストアであれば、管理薬剤師やエリアマネジャーといったポストが豊富にあり、キャリアアップの機会も広がります。
特に病院で得た臨床経験は転職市場で評価されやすく、認定資格を持っていればさらに交渉を有利に進められるでしょう。
5. 病院薬剤師の給料が安いと感じたら、転職も視野に入れてキャリアを見直そう
病院薬剤師の年収は20代・30代では薬局薬剤師より低い傾向にあるものの、40代以降は逆転する傾向にあるため、生涯年収で見ると両者に大きな差はありません。
病院薬剤師の給料が安いといわれる背景には、就職先に病院を選ぶ薬剤師は給与よりもやりがいを優先する傾向があり、人材を確保しやすいことが挙げられます。また、昇進できるポストの数が限られていることや、業務の幅が広く専門性も求められる一方で給料に反映されにくいことも、不満を感じやすい要因といえるでしょう。
給料アップを目指す方法としては、専門・認定資格の取得や管理職へのキャリアアップのほか、国公立病院や薬局・ドラッグストアへの転職などが挙げられます。給料が安いと感じている場合は、転職も視野に入れつつ、今後のキャリアを考えてみてはいかがでしょうか。
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