【最新2024年度診療報酬改定】薬局薬剤師も押さえておきたい 医療機関の2024年度診療報酬改定―病院薬剤師確保やバイオ後続品の対策などー| 薬剤師の転職・求人・募集なら【マイナビ薬剤師】

第4回 薬局薬剤師も押さえておきたい
医療機関の2024年度診療報酬改定
―病院薬剤師確保やバイオ後続品の対策など―

薬局薬剤師も押さえておきたい 医療機関の2024年度診療報酬改定 ―病院薬剤師確保やバイオ後続品の対策などー 薬局薬剤師も押さえておきたい 医療機関の2024年度診療報酬改定 ―病院薬剤師確保やバイオ後続品の対策などー

 2024年度診療報酬改定について、主に保険薬局に関連するトピックを解説してきました。最終回となる第4回目は、病院薬剤師に関連する内容や薬局に関わりのある医療機関の改定項目に注目していきます。

 医科診療報酬のことはよくわからないという薬局薬剤師の方もいるかと思いますが、リフィル処方箋やバイオ後続品の使用促進などのように、医療機関と薬局の両方に関わるテーマもあります。今後の医療制度の動向を知るためにも押さえておきたいポイントです。

薬剤師確保対策や外来化学療法での新たな評価

薬剤師の地域偏在への一手となるか
「薬剤業務向上加算」の新設

 2024年度診療報酬改定の病院薬剤師関連項目では、賃上げのためのベースアップ評価料が大きなトピックとなりましたが、それ以外にも「薬剤業務向上加算」や「がん薬物療法体制充実加算」、「バイオ後続品使用体制加算」など新たな評価も導入されました。保険薬局には直接関係のない医科診療報酬ではありますが、薬局との関わりや薬剤師全体を取り巻く動向を踏まえながら紹介していきます。

 今、薬剤師について地域偏在や、病院と薬局という業態での偏在が問題になっていることはご存じの方も多いかと思います。適切な医療提供体制の確保のために都道府県が策定する、2024年度からの第8次医療計画にも、病院薬剤師不足や無薬局町村の解消策などを盛り込むことになっています。特に病院の薬剤師不足は顕著で、診療報酬での薬剤師確保対策の後押しなども要望されていました。

 今改定で病棟薬剤業務実施加算の加算として新設された「薬剤業務向上加算 100点(週1回)」は、そうした薬剤師不足への対応と、薬剤師のキャリア形成促進を骨子とした点数です。同加算では、免許取得直後の薬剤師に対する総合的な研修体制とともに、都道府県と協力して薬剤師不足の医療機関に自施設の薬剤師を出向させる体制を評価しています。

大学病院や基幹病院に求められる
若手教育と地域支援機能

 免許取得直後の薬剤師の研修体制については、高度化する薬物治療に対して、医師の臨床研修制度のように、薬剤師にも卒後研修の標準的カリキュラムが必要という議論や、それを踏まえたモデル事業の実施などが背景にあります。薬剤業務向上加算の施設基準では、免許取得直後の薬剤師を対象にした、調剤や病棟薬剤業務、チーム医療、医薬品情報管理などを広く修得できる研修プログラムや、多職種からなる研修に関する委員会の設置などが位置づけられています。薬剤師レジデント制度の導入に向けた試金石という側面もありそうです。

 一方、他の医療機関への薬剤師の出向については、都道府県の担当部署と連携して、薬剤師不足の地域の医療機関で地域医療に係る業務を実践的に修得させる体制の整備を要件としています。つまり、地域医療の研修と、薬剤師不足の医療機関の支援という一石二鳥を目指した仕組みです。出向の対象は、新卒の薬剤師ではなく、概ね3年以上の病院勤務経験のある薬剤師(その医療機関に概ね1年以上勤務)で、その後は「出向元の医療機関に戻って勤務」することも明記されています。

 なお、同加算を算定できるのは、大学病院をはじめとする特定機能病院や、それに近い高度専門医療を手がけている基幹病院(急性期充実体制加算1、2の届出機関)に限られます。今は制度が少し変わりましたが、大学が若手教育と地域への医師派遣を担う、医師の医局制度を連想させる仕組みです。薬学部は必ずしも附属病院を持たず、医局制度もないため、薬剤師偏在の解消・供給を担う拠点として、今後大学病院や基幹病院が重要な役割を果たすことになるかもしれません。

「がん薬物療法体制充実加算」で
医師の診察前の情報収集や処方提案を評価

 外来がん化学療法については、病院薬剤師の新たな関わりについて評価が設けられました。外来化学療法の実施に伴い、医師の診察前に薬剤師が患者さんに面談を行い、服薬状況や副作用の発現状況などの情報収集をして医師へ情報提供や処方提案などをすることが、「がん薬物療法体制充実加算 100点(月1回に限り)」で評価されたのです(図1)。

図1 がん薬物療法体制充実加算

(新)がん薬物療法体制充実加算  100点(月1回に限り)

[算定要件]
外来腫瘍化学療法診療料1のイの(1)を算定する患者に、医師の指示に基づき薬剤師が、服薬状況、副作用の有無等の情報の収集及び評価を行い、医師の診察前に情報提供や処方の提案等を行った場合に月に1回に限り所定点数に加算

[施設基準]
  1. (1)以下全てを満たす専任の常勤薬剤師の配置
  2.  ・化学療法に係る調剤経験5年以上
  3.  ・40時間以上のがんに係る適切な研修の修了
  4.  ・がん患者に対する薬剤管理指導実績が50症例(複数のがん種であることが望ましい)以上
  5. (2)患者の希望に応じて使用できる、プライバシーに十分配慮した個室の備え
  6. (3)薬剤師が、医師の診察前に患者から服薬状況、副作用等の情報収集・評価を実施し、情報提供や処方提案等を行った上で、医師がより適切な診療方針を立てることができる体制の整備

 外来化学療法を実施する場合、抗がん剤を投与する前に毎回医師が診察を行い、検査データや患者さんの体調などを踏まえ、その日の治療の可否や、投与量の変更、制吐薬など支持療法薬の追加の必要性などを判断しています(図2)。

図2 外来化学療法の流れ

 これまでは薬剤師が面談をする場合、医師の診察後に行うことが一般的でしたが、薬剤師からの情報提供などにより処方修正が必要になることもありました。
 しかし、診察前に薬剤師が面談することで、医師の診察時間を短縮できるうえ、薬剤師からの情報や提案をそのまま処方に反映させられるため、業務の流れがスムーズになります。また、すでにこうした取り組みを実施している病院において、日本臨床腫瘍薬学会が行ったアンケートでも、薬剤師からの情報の有用性や、薬物治療の効果・安全性の向上への寄与などを評価する声が高かったことなども評価への追い風になりました。

 がん薬物療法体制充実加算を算定できるのは、専用のベッドなどを備えた治療室の整備や、化学療法の5年以上の経験のある専任の医師や看護師、薬剤師の勤務・配置など(外来腫瘍化学療法診療料1の届出要件)を満たした病院です。これは、薬局とのがん薬物療法連携を評価した「連携充実加算」(調剤報酬では「特定薬剤管理指導加算2」)の要件と同じです。加えて、がん薬物療法認定薬剤師か外来がん治療認定薬剤師、またはがん専門薬剤師を専任で配置するという、より高いハードルも課されています。そのため、算定できるのは、がん診療連携拠点病院など専門的な治療が可能な病院になるでしょう。

 この加算がついたことで、薬局おいてもがん薬物療法について病院とより連携がしやすくなることが期待されます。トレーシングレポートなどを踏まえて、病院薬剤師が必要な情報を医師に直接伝達してくれることでやり取りもスムーズになりそうです。

バイオ後続品の使用やレフィル処方箋の推進の動きも

「バイオ後続品使用体制加算」で
院外処方での切り替えにも注目

 国がバイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進の方針を打ち出すなか、今回の改定では入院時に算定できる「バイオ後続品使用体制加算」が設けられました。同加算では、その医療機関内で調剤したバイオ医薬品について、バイオ後続品への置き換え割合(*1)が一定以上であることが要件とされています。そのため、かつての後発医薬品使用体制加算の新設時と同様に、医療機関がバイオ後続品の採用を急速に拡大させることが予想されます。

*1…バイオ後続品のある先発バイオ医薬品(バイオ後続品の適用のない患者に対して使用する先発バイオ医薬品は除く)及びバイオ後続品について、その成分全体の規格単位数量に占めるバイオ後続品の割合

 こうした動きから院外処方にも影響が出る可能性があります。バイオ後続品使用体制加算を算定できるのは、急性期の病床を持つ病院や有床診療所に限られますが、インスリン製剤や、関節リウマチなどに用いるインフリキシマブ、エタネルセプトなどのバイオ医薬品について、処方医がバイオ後続品に切り替えることが増えると予想されます(表1)。

表1 バイオ後続品使用体制加算のバイオ後続品への置き換え基準の対象薬剤

※()内は主な治療領域

バイオ後続品への置き換え割合の目標が80%以上の薬剤

  • エポエチン(腎性貧血)
  • リツキシマブ(がん)
  • トラスツズマブ(がん)
  • テリパラチド(骨粗鬆症)

バイオ後続品への置き換え割合の目標が50%以上の薬剤

  • ソマトロピン(成長ホルモン分泌不全症)
  • エタネルセプト(関節リウマチ)
  • ベバシズマブ(がん)
  • インスリンアスパルト(糖尿病)
  • インフリキシマブ(関節リウマチ、潰瘍性大腸炎)
  • アガルシダーゼベータ(ファブリー病)
  • インスリンリスプロ(糖尿病)
  • アダリムマブ(関節リウマチ)
※施設基準にあげられた薬剤名に、「個別事項(その5)」p56の表にあった疾患名を入れたものです。

 薬局が扱うバイオ医薬品のなかにも、バイオ後続品への置き換えが進んでいない薬剤があります(表2)。処方元である医療機関と、情報共有を図りつつ対応することが必要になるかもしれません。

表2 院外処方(外来)におけるバイオ後発品の置き換え率

バイオ後続品の名前 主な治療領域 外来(院外)における
置き換え率
ソマトロピン 成長ホルモン分泌不全性
低身長症
15.7%
フィルグラスチム がん化学療法による
好中球減少症
78.8%
インフリキシマブ 関節リウマチ、
潰瘍性大腸炎、クローン病
-
インスリン グラルギン 糖尿病 70.1%
トラスツズマブ がん(乳がん、胃がん) -
リツキシマブ がん(リンパ腫) -
エタネルセプト 関節リウマチ 43.9%
ベバシズマブ がん(結腸・直腸がん、肺がん、卵巣がん) -
テリパラチド 骨粗鬆症 32.7%
アガルシダーゼベータ ファブリー病 -
インスリン リスプロ 糖尿病 18.3%
ダルベポエチン 腎性貧血 100.0%
アダリムマブ 関節リウマチ 5.4%
エポエチンアルファ 腎性貧血 -
インスリン アスパルト 糖尿病 2.8%
ラニビズマブ 加齢黄斑変性、黄斑浮腫、
脈絡膜新生血管、糖尿病黄斑浮腫
-

※バイオ後続品導入初期加算の対象にならず、置き換え率が30%未満の品目
・アガルシダーゼベータ(加齢黄斑変性、黄斑浮腫、脈絡膜新生血管、糖尿病黄斑浮腫)
・ラニビズマブ(ファブリー病)

出典:NDBオープンデータ(令和3年度)
※集計結果が400未満のものは0として集計している。

長期処方やリフィル処方箋交付について
院内掲示で周知を促す要件も

 そのほか、薬剤師に直接関わる項目ではありませんが、2024年度医科診療報酬ではリフィル処方や長期処方を後押しする動きも見られました。診療所や200床未満の医療機関が算定できる、かかりつけ医機能の評価(「地域包括診療料」など)や「生活習慣病管理料」などの施設基準には、28日以上の長期処方、またはリフィル処方箋の交付が可能であることを院内に掲示することなどが追加されました。また、一部の医学管理料の加算において、合計28日以上の処方のほか、リフィル処方箋を発行した場合にも算定可能とするなど“優遇措置”も導入されています。

 前回の改定を受けて2022年度に実施された保険薬局への調査では、リフィル処方箋の受付経験のある薬局は55.6%で、発行した医療機関数は平均で1.5施設でした1)。今回、生活習慣病管理料など届出件数が多く見込まれる報酬の要件にリフィル処方箋の周知が盛り込まれたことで、薬局においても患者さんからの問い合わせが増えることが予想されます。リフィル処方箋の仕組みの説明や、応需する際の対応などについて準備をしておく必要がありそうです。

 2024年度改定では、薬局については医薬品供給体制の強化や在宅業務、医療DXに、病院においては外来がん化学療法や薬剤師確保対策、バイオ後続品使用促進などにスポットが当たりました。また、在宅移行初期管理料の新設などで、病院と薬局の薬剤師のシームレスな連携もさらに必要とされています。

 2024年度改定は、ポスト2025年を見据え、地域包括ケアをキーワードに医療・介護提供体制の整備が進められた最後の改定です。次回の改定から医療制度改革は次のステージに入ります。厳しさを増す医療環境のなかで、地域において薬局がどのような役割を担えるのかを示していくことが一層重要になりそうです。

1)厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和4年度調査) リフィル処方箋の実施状況調査報告書(案)」より

PROFILE
利根川 恵子
医療ジャーナリスト。薬剤師。東京医科歯科大学医療政策学修士。
医療系出版社勤務後、2000年に独立。薬剤師としての知識を活かしつつ、医療分野・介護分野を中心に取材を行う。

著書『福祉・介護職のための病院・医療の仕組みまるわかりブック』
『イラストで理解するケアマネのための薬図鑑』(共著)など。

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