薬剤師の医師への疑義照会と多剤併用(ポリファーマシー)対策
医療費の増加を抑制するために、薬剤費の効率化が急務とされています。2018年度診療報酬改定では、医療機関、保険薬局ともに薬剤師関連業務で「医薬品の適正使用」が重要なキーワードになりました。
経済性だけでなく高齢者の増加という観点からも、こうした流れは今後も継承されると考えられます。今回は医薬品の適正使用で求められる薬局の機能に焦点を当てつつ、疑義照会や服薬情報提供などの改定項目を細かく見ていきます。
新設の服用薬剤調整支援料では医療機関への処方提案による減薬を評価
前回の16年度改定で「ポリファーマシー」がクローズアップされ、医療機関に対して、外来患者などでの6種類以上の内服薬処方の2種類以上の減少を評価する、「薬剤総合評価調整管理料(以下、薬総管理料)」などが新設されました。この加算との整合性を取る形で、18年度改定で調剤報酬に「服用薬剤調整支援料(以下、調整支援料)」が創設されました。薬局薬剤師が減薬の提案に関わることにより、薬総管理料と同様に、6種類以上の内服薬が2種類以上減少した場合を評価するものです。
主な算定要件は図1の通りですが、医療機関での薬総管理料とは算定要件が少し異なる部分があります。
薬総管理料の場合、その医療機関で処方された内服薬が2種類以上減少していることが必要で、その状態が4週間以上継続すると「見込まれた場合」に算定します。それに対して薬局の調整支援料では、その薬局で調剤している内服薬が2種類以上減少し、そのうち最低1種類はその薬局で提案したものであることに加え、その状態が4週間以上「継続した場合」に初めて算定できるという点に大きな違いがあります。
処方医が薬総管理料を算定する際、「薬局からの提案を踏まえ処方内容を調整した場合にはその薬局に情報提供を行う」ことが今改定で義務付けられましたが、4週間の継続実績は薬局側で確認しなければならないわけです。そのため、患者さんがその時々で違う薬局を利用しているようなケースでは、薬局側から処方医などに確認することも必要になるかもしれません。
また、薬局については、同一薬効分類の成分を含む配合剤や内服薬以外の薬剤への変更提案は、減薬に至ったとしてもカウントに含めることはできません。ただし、医療機関の薬総管理料にはそうした要件はないため、処方医が配合剤などに変更して内服薬の種類数が減少した場合には、それを1種類とカウントすることができます。調整支援料は、薬局と医療機関との連携により、不適切な多剤投薬の是正を促す点数ですが、こうした算定要件の違いには注意しましょう。
図1 服用薬剤調整支援料の主な要件
新設 服用薬剤調整支援料 125点(月1回に限り算定)
患者の意向を踏まえ、患者の服薬アドヒアランス及び副作用の可能性等を検討した上で、処方医に減薬の提案を行い、その結果、処方される内服薬が減少した場合を評価
-
対象は6種類以上の内服薬(浸煎薬、湯薬は除く)処方
内服開始から4週間以上経過したものが対象。錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤は1銘柄ごとに1種類として計算
※屯用薬は対象外
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薬剤師が文書により処方医に提案し、2種類以上内服薬が減少。その状態が4週間以上継続した場合に算定(算定は月1回のみ)
減少した薬のうち少なくとも1種類は薬剤師の提案したものであること。また、同時に2種類以上の減薬が行われなくてもよい。
※薬剤師の提案で、同一薬効分類の有効成分を含む配合剤や、内服薬以外への薬剤に変更した場合は、減少した種類数に含めない(医師の発案のものは種類数に含められる)。
※医師は薬局からの提案を踏まえ処方内容を調整した場合にはその薬局に情報提供を行う(医療機関が算定する薬剤総合評価調整管理料の算定要件)。 -
薬剤服用歴への記載・添付事項
処方医への提案を行う際、減薬についての患者の意向や、提案に至るまでに検討した薬学的内容を薬剤服用歴に記載。医療機関から提供された処方内容の調整結果についての内容は薬剤服用歴に添付
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1年以内の再算定
前回算定時(減少後)の種類数から、さらに2種類以上減少した場合は、新たに算定可能
重複投薬・相互作用等防止加算と薬局に求められる“薬学的”疑義照会
医薬品の適正使用につながる報酬には、疑義照会により処方変更がなされた場合に算定できる(在宅)重複投薬・相互作用等防止加算もあります。今改定では、この加算が「残薬調整に係るもの 30点」と、「残薬調整に係るもの以外 40点」との2つに区分されました。ただし、残薬調整とそれ以外の理由で一緒に疑義照会し処方変更があったとしても、2つの区分の点数を同時に算定することはできません。
残薬調整に係るもの以外の疑義照会とは、①併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む)、②併用薬、飲食物等との相互作用、③そのほか薬学的観点から必要と認める事項を意味します。従来の同加算より10点高く設定されていますが、薬学的な意味での疑義照会を促すことが狙いとしてあります。
今改定では、かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料も引き上げられましたが、かかりつけ薬剤師以外と比べて疑義照会の割合が高いことなどが評価の一因となりました。次回改定では、同加算で残薬調整に係るもの以外の場合の算定割合や内容等が注目されると考えられます。疑義照会機能をどう高めていくかが今後の課題といえるでしょう。
同加算は、先の調整支援料と考え方が似ている部分もありますが、同じ月に両方を算定することも可能です。例えば、1人の患者さんについて2剤の減薬が4週間継続したので調整支援料を算定し、同じ月に疑義照会をして処方変更が行われた場合でも重複投薬・相互作用等防止加算を算定できます。
服薬情報等提供料も2区分に医療機関との連携を評価
これらの見直しと合わせ、服薬情報等提供料でも変更がありました。医療機関から求めがあり情報提供した場合は、「同提供料1」としてこれまでより高い30点を、患者や家族などからの求めがあった場合や薬剤師がその必要性を認めた場合については、「同提供料2」として20点を算定します。
図2 服薬情報提供料の区分の考え方
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服薬情報等提供料1 30点
医療機関から求めがあり情報提供した場合
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医療機関の求めに該当する内容
- 患者の服用薬及び服薬状況の情報提供
- 患者に対する服薬指導の要点、患者の状態等の情報提供
- 処方箋発行医療機関からの患者の服用薬の残薬の報告の求め
- 分割調剤における、2回目以降の調剤時に患者の服薬状況、服薬期間中の体調の変化等についての確認
- 医療機関からの入院前の患者の服用薬についての情報提供の求め
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服薬情報等提供料2 20点
患者又はその家族等の求めがあった場合、薬剤師がその必要性を認めた場合の情報提供。患者の同意を得て、その介護に関わるケアマネジャーなどからの求めに応じて、服薬状況の確認や必要な指導内容について提供した場合も算定可能
※服薬情報等提供料は、かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者では算定できない
今回、同提供料1が設けられたのは、医療機関側の報酬も影響しています。今改定で、向精神薬の多剤処方や、ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬の同一の用法・用量での1年以上の継続処方の状態にある患者に対し、薬の種類や用量を減らしたうえで、医師が薬剤師に状態の変化の確認を指示した場合に、向精神薬調整連携加算が算定できるようになりました。かかりつけ薬剤師は算定できませんが、こうしたケースで薬局薬剤師が減薬後の状態をモニタリングし、処方医に情報提供した場合に同提供料1が算定できます。
同提供料2についても、かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料や在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定していない患者について、ケアマネジャーなどからの求めに応じて情報提供したときも算定が可能です。要介護度の低い段階から、ケアマネジャーと連携を行う場合などに算定しやすい点数です。
これらの内容からうかがえるように、今改定では薬局と医療機関などとの連携が重視されました。処方後の患者の状態をモニタリングして処方医にフィードバックすれば服薬情報等提供料が、それらが処方変更につながれば重複投薬・相互作用等防止加算が算定でき、これらの取り組みで2種類以上の減薬につながり4週間以上継続すれば服用薬剤調整支援料の算定対象となるわけです。
かかりつけ薬剤師指導料などもそうですが、対物業務から対人業務へと調剤報酬の配点がシフトするなかで、これらの調剤報酬に位置付けられた情報提供、疑義照会、処方提案といった機能を活用し、薬局が医薬品の適正化にどう貢献していくかが問われています。
医療系出版社勤務後、2000年に独立。薬剤師としての知識を活かしつつ、医療分野・介護分野を中心に取材を行う。
著書『福祉・介護職のための病院・医療の仕組みまるわかりブック』
『イラストで理解するケアマネのための薬図鑑』(共著)など。
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