薬剤師にもノルマはある?職場別のノルマについても解説

薬剤師にもノルマはある?職場別のノルマについても解説
厚生労働省の発表によると、令和元年度の全国の薬局数は6万0171施設。前年度よりも558施設増加したことがわかっています。

これは、人口10万人あたり47.7施設で、全国のコンビニエンスストアの店舗数を上回る数字です。これほど多くの薬局の経営を支えているのが、薬剤師たちです。薬剤師は全国に31万1,289人。そのうち58%にあたる18万415人が薬局で働いています。
参照元:厚生労働省/平成30年『医師・歯科医師・薬剤師統計の概要』15p 施設・業務種別にみた薬剤師数

さて、そんな薬剤師には、一般の営業職にあるような「ノルマ」は存在するのでしょうか。ここでは、薬剤師のノルマの実態について、詳しく解説します。

1. 薬剤師にノルマはあるの?

「薬剤師のノルマ」と聞くと、ピンとこない方も多いと思いますが、実際、薬剤師にノルマを求める調剤薬局やドラッグストアは多いのが事実です。

中でも多くの薬剤師を悩ませているのが、「かかりつけ薬剤師」同意書の取得ノルマといえるでしょう。

かかりつけ薬剤師とは、薬や治療などの知識が豊富な薬剤師がひとりの患者さんの服薬状況をまとめて管理し、休日や夜間、在宅対応など、24時間体制で服薬指導や相談に応じる薬剤師のことです。薬局で患者さんからかかりつけ薬剤師の指名を得るには、同意書に患者さんの署名が必要になります。

かかりつけ薬剤師指導料は処方箋受付1回に対して76点と高く、薬局の収益に大きく関わってくるがゆえに、かかりつけ薬剤師のノルマが課されることが多いのです。
参照元:厚生労働省/令和2年度診療報酬改定 Ⅱ-1 かかりつけ機能の評価 -④

だからといって、すべての薬局やドラッグストアのノルマが厳しいわけではありません。中には薬剤師の働きやすさを考慮して、あえて厳しいノルマを課さない薬局もあります。

2. 薬剤師にノルマが存在する理由

薬剤師にノルマがあるのは、ノルマを課さないと薬局の収益確保が難しいためです。
主な薬局の利益は、全国一律で定められている薬価と仕入れ値との差額と、調剤技術料です。調剤技術料は処方箋に基づいて調剤する基本料と調剤料で構成されており、薬局の収益を上げるためには、できるだけ多くの調剤技術料を獲得する必要があります。

コンビニエンスストア並みに増えている薬局同士の競争は激化しています。さらに、18年度の診療報酬改定で「地域支援体制加算」が新設され、地域医療へ貢献していることを評価された薬局には、調剤基本料に38点(2020年の改訂で35点から増額)が加算されます。
参照元:厚生労働省/令和2年度診療報酬改定 地域医療に貢献する薬局の評価

しかし、この加算を得るためには、常勤薬剤師に対して時間外、夜間・休日等の算定回数が年400回以上、かかりつけ薬剤師指導料の算定回数が年40回以上などの厳しい条件があり、薬剤師のノルマが厳しくなっている要因の一つになっています。

3. ノルマがある職種・職場は?

薬剤師のノルマがあるといっても、その内容は職種や職場によって違いがあります。では、どのようなノルマがあるのか、かかりつけの薬剤師、調剤薬局、ドラッグストア、MR(医療情報担当者)を例にあげて説明します。

3-1. かかりつけ薬剤師

かかりつけ薬剤師にノルマを設定している薬局は少なくありません。

かかりつけ薬剤師に指名をしてもらうために、薬局を訪れた患者さんに「かかりつけ薬剤師制度をご存じですか?」などと声掛けをしなければならず、ノルマが厳しい薬局ほど負担は大きくなります。また、かかりつけ薬剤師になると、特定の患者さんの相談に原則24時間対応しなければならなくなり、ストレスを抱えている薬剤師も多いと思います。

3-2.調剤薬局

調剤薬局の薬剤師が抱えるノルマの中でも、最も大きなものが「かかりつけ薬剤師」の指名でしょう。

かかりつけ薬剤師指導料は処方箋の受付1回につき76点と高いため、薬剤師は患者さまに声掛けをして「かかりつけ薬剤師の同意書を獲得するように求められがちです。ほかにもジェネリック医薬品の使用や薬剤服用歴管理指導料の加算などがノルマになることがあります。

3-3.ドラッグストア

ドラッグストアであっても薬剤師にノルマが課されるところがあります。

よく聞かれるのが、店にとって利益率の高い「販売強化品」の売上に対するノルマです。販売強化商品はOTC医薬品のみならず、自社ブランドや栄養ドリンク、化粧品のこともあります。一定の期間で特定の商品の売上を店舗ごとで競う「販売コンクール」なるイベントを多く開催するドラッグストアもあります。
そのほか、処方箋の受付回数の増加やかかりつけ薬剤師同意書の取得が求められるケースも増えています。

3-4.MR(医療情報担当者)

1991年の独占禁止法の改正で、医療機関と価格交渉ができるのは医薬品卸業者のみになりました。つまり、製薬会社は製品を医薬品卸業者に渡したら、価格交渉に一切介入できなくなったのです。
そのため、MR(医療情報担当者)は一般の営業とは違い、自社製品の価格交渉ができず、厳しい営業を強いられることになりました。

一般的には、製品の総売上や製品ごとに売上目標が掲げられ、前年の同時期を上回る数字をあげるといったノルマが多いようです。売上目標の達成がMRの評価基準になるところもあります。

4. 薬剤師のノルマは店舗ごとに異なる

薬剤師にノルマが課せられるのは、収益を確保するためにも避けられないことですが、その厳しさの度合は店舗ごとに異なります。では、ノルマが厳しい店舗と緩い店舗の違いについて見ていきましょう。

4-1. ノルマが厳しい店舗の特徴

ノルマが厳しいかどうかは、調剤基本料が大きくかかわっています。
調剤基本料は次のように決められています。

調剤基本料1…42点 医療資源の少ない地域に所在する保険薬局
調剤基本料2…26点 処方箋受付回数
月4,000回超かつ集中率70%超
月2,000回超かつ集中率85%超
月1,800回超かつ集中率95%超
特定の保険医療機関の処方箋が月4,000回超の保険薬局
調剤基本料3…21点 集中率85%超(同一グループ 月4万回超、月40万回超)
集中率95%超(同一グループ 月3.5万回超~4万回以下)
特定の保険医療機関と不動産の賃貸借関係がある保険薬局
同一グループの保険薬局の処方箋受付回数の合計が月3.5万回超~40万回以下
(*40万回超は16点)
特別調剤基本料 9点 保険医療機関と特別な関係(敷地内)かつ集中率70%超
調剤基本料に係る届出を行っていない薬局

参照元:日本薬剤師会/調剤報酬点数表

大学病院や総合病院などの付近にある門前薬局や大手の調剤薬局は、「処方箋受付回数」と「特定の医療機関の処方箋」の集中率が高くなる傾向があります。

そのため、調剤基本料1の半分の調剤基本料3が算定されがちで、収益の確保が難しくなるのです。少しでも収益の高い調剤基本料1を算定されるためには、特定の医療機関の処方箋集中率を下げるなどの対策が必要です。

例えば、かかりつけ薬剤師が増えれば、患者さんは門前病院だけでなく、さまざまな医療機関の処方箋を持ってきてくれますし、特定医療機関の処方箋の集中率を下げることにもつながります。さらに、かかりつけ薬剤師指導料を算定できるメリットもあります。

このような理由から、かかりつけ薬剤師のノルマなどが厳しくなる傾向があるのです。

4-2. ノルマが緩い店舗の特徴

一方で、中小調剤薬局やドラッグストア併設の調剤薬局はノルマが緩い傾向にあります。

門前薬局や大手の調剤薬局と違い、処方箋受付回数が少なく、特定の医療機関の処方箋集中率も低い傾向があります。それは、調剤基本料1を算定しやすいため、収益を確保しやすく、薬剤師に厳しいノルマを課す必要がないためです。

もちろん、中小調剤薬局だからといってノルマが緩いとは限りません。比較的緩い傾向があるというだけで、厳しいところもあるでしょう。

5. ノルマがキツイと感じたら転職を考えてみよう

薬局やドラッグストアによって、ノルマがあるところも、ないところもあります。
また、ノルマが厳しいところもあれば、緩いところもあります。

どんなに薬剤師の仕事にやりがいがあったとしても、ノルマが厳しいと心身ともに疲弊してしまいます。自分にとって、ストレスの少ない環境で仕事をすることは、心地よく患者さんと接するためにも大切です。

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6. まとめ

薬剤師であっても収益確保のために、調剤薬局であれば調剤基本料の更なる獲得、ドラッグストアであれば販売強化品の売り上げ向上、MRであれば製品の総売り上げなどのノルマがある場合があり、それをストレスに感じている人がいるのも事実でしょう。

もし、ノルマが厳しいと感じたら、転職を考えてみるのも一つの方法です。薬剤師の転職に強い転職サイトに登録すれば、さまざまな職場の情報を得られ、転職の準備に有効です。

この記事の著者

メディカルライター

山原 佳代

大学卒業後、医療機器メーカーに就職。その後、介護企業、広告代理店等を経てライターとして独立。
医療、ヘルスケア関連の広告物やメディアの記事執筆、ドクターへの取材、薬機法を考慮したコピーライティングを中心に活動している。

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