製薬会社の志望動機の書き方とは?専門職の把握がポイント

製薬会社の志望動機の書き方とは?

製薬業界は人気の高い業界であるため、たとえ薬剤師免許を持っていても、就職・転職は狭き門となりがちです。その第一歩として、魅力的な応募書類が不可欠。志望動機も「薬剤師としての知識があります」だけではNGで、プラスアルファのアピールが欠かせません。

そこでここでは、製薬業界の概要と製薬会社の中で薬剤師が活躍できる職種について解説し、職種ごとの志望動機の書き方を例文付きで紹介します!志望する職種の特性と求められるスキルを把握し、採用担当者を惹きつける志望動機を書きましょう。

1.製薬業界とは

製薬業界とは、医薬品を製造・販売する会社からなる業界です。日本の医薬品業界の売上高は約10兆円。新たな薬剤を開発するのに莫大な費用がかかることが特徴で、売上高に対する研究開発費比率は約10%にもおよびます(製造業平均は約4%)。

参照元:厚生労働省/日本製薬工業協会の政策提言

「社会に貢献できる」「安定している」というイメージを持たれやすい一方、実際には創薬の道のりは遠く、薬価の決め方も年々変化するなど、実はきわめて変化の大きい業界です。

1-1. 製薬会社も多様化している

製薬会社は、国内に306社が存在しており、その規模や事業形態は多様化してきています(2019年度厚生労働省調査)。

その内訳は、資本別にみると、内資が269社(約88%)、外資が37社(約12%)。規模別にみると、従業員数100人以下の会社が103社(約34%)、100人超1000人未満が132社(約43%)、1000人超が71社(約23%)。取扱品目別にみると、104社が主に医療用医薬品を製造販売しており、そのうち39社は主に後発医薬品を製造販売しています。

国民皆保険制度のもと、国内の医薬品市場は長らく成長を続けてきましたが、ここ数年では薬剤費の抑制が求められており、今後は伸び悩むことも予想されます。さらには、かつて製薬会社の収益を支えてきた生活習慣病薬などの特許切れが進み、それに伴って後発医薬品の数量シェアが2020年には79%に達するなど、市場構造に変化がみられます。また、ここ数年注目されるがん領域では創薬コストが高騰しており、多くの資金やデータを集められる外資系製薬会社の存在感が増していることも特徴です。

1-2. ここ数年は海外への販売を強化

日本では医薬品市場が抑制される傾向にあるのに対し、世界では薬剤費が大きく伸びている国もあります。そうした背景から、特に大手製薬会社では海外への販売を強化しています。国内大手14社の売上高において海外売上高が占める比率は、2019年度には6割に達したという報告もあるほどです(医薬産業政策研究所の報告)。

そのため、「5. 英語スキルがあるとなお良い」でも後述する通り、製薬会社を志望するときには英語力が重要なアピールポイントになります。

1-3. 研究開発や実務へのIT導入が課題

日本の製薬業界は、海外に比べてIT技術の導入が遅れており、今後の迅速なデジタル化(DX)が課題といわれています。たとえば、AI(人工知能)を活用したAI創薬は、新薬の候補をすばやく探し出せるため、開発の期間と費用を低減するといわれています。

治験では、バーチャルクリニカルトライアルとして、ウェアラブルデバイスやIoT、オンライン診療などを活用してデータを収集する試みも始まっています。

さらに実臨床でも、「デジタルセラピューティクス(DTx)」、いわゆる「治療アプリ」などを用いた治療支援に厚生労働省の薬事承認が下りるなど、変化の波が押し寄せています。

薬剤師にとっても、たとえば今後の創薬ではAIの専門家と協働することがあるでしょう。また、治験や営業の業務では、患者さまや医療従事者と直接対面せずにオンラインでいかに上手く対応するかが既に喫緊の課題となっています。

最新技術に忌避感を持つことなく、柔軟に取り組んでいく姿勢が重要です。

2.製薬会社における薬剤師の役割は?

製薬会社では多くの薬剤師が活躍しています。

たとえば、新薬を生み出す「研究開発」、その新薬の安全性を確かめるための臨床試験を支える「CRA」「CRC」、医薬品の製造・保管に関わる「管理薬剤師」「品質管理・品質保証」、臨床の現場で広く使ってもらうための「営業(MR)」など、活躍の場は多岐にわたります。

なお、研究開発や薬事・学術といった職種は製薬会社の本社など限られた地域での勤務となることが多いですが、MRやCRCなどは、各地の医療施設などに足を運ぶため、全国で採用がみられる傾向があります。

詳細は以下のページをご覧ください。

3.製薬会社の志望動機の書き方

製薬会社への就職・転職では、志望動機はどのように書くべきでしょうか。

「薬剤師としての知識・スキルを活かしたいからです」と書きたくなるところですが、それだけではほかの応募者と差別化できません。下記の手順を踏むことで、より説得力のある志望動機を書くことができます。

3-1. 志望する製薬会社と職種を決める

(1)まず、「なぜ製薬会社なのか?」を明確にしましょう。

同業他社からの転職であれば自明ですが、新卒採用の場合や、ドラッグストアや調剤薬局、病院などからの転職の場合は特に重要です。書きやすいのは、よりよい薬を提示することで人の命を救いたい、役に立ちたいという想いを主張する方法です。家族や友人との過去の交流、さらにはこれまでの業務経験(新卒採用の場合は研究室や実習での経験)などを棚卸しして、そうした熱意の伝わるエピソードを探します。

(2)次に、「なぜその会社なのか?」について言語化しましょう。

志望する会社の製品や開発パイプライン、理念などを確認して、魅力的に感じる点を探します。主力の領域・製品、製品数、経営方針、社風などに対し、なぜそれを魅力に感じるのか、それが自分のスキルとどのようにマッチするのかを掘り下げましょう。

(3)最後に、「なぜその職種なのか?」に応えられるようにしましょう。

志望する職種を絞り、その業務内容を確認します。職種により求められる能力は異なるため、それに沿ってアピール内容を決めます。詳細は後述します。

3-2. 応募職種の業務内容、求められるスキルを把握する

製薬会社での勤務といっても、職種により求められる能力は大きく異なります。もちろん薬剤師としての専門知識は重要ですが、それに加え、たとえば問題探索能力、プロジェクト管理能力、コミュニケーション能力などが求められるのです。志望する職種で求められるスキルを把握し、そのスキルを持っていることが伝わるように、志望動機を書くことが重要になります。

職種ごとに求められるスキルは、「4. 製薬会社の志望動機の例文」でも紹介します。

3-3. 職務に対応できるスキルを中心に志望動機をまとめる

応募する職種に求められるスキルを把握したら、そのスキルを自分が持っているとアピールできる具体的なエピソードを考えましょう。

ここまでの手順を踏めば、(1)製薬会社を志望する理由、(2)その会社を志望する理由、(3)その職種を志望する理由が揃います。これを志望動機の骨子として、履歴書の分量などにあわせて内容を調整していきましょう。

4.製薬会社の志望動機の例文

製薬会社に入るためには、あなたの適性とスキル、そして熱意の伝わる志望動機が重要です。ここでは職種ごとに志望動機の例文を紹介します。

4-1. 営業職

製薬業界の営業職は、その地域に根差し、医療機関に対して製品情報を提供する重要な役割を果たします。体力も求められる職種なので、エネルギーに満ちた志望動機を書きましょう。

4-1-1. MR

MR(メディカル・​リプレゼンタティブ)は、製薬会社の営業職。ここ数年は減少傾向にあるものの、募集人数が多く、文系から志望する人も少なくないのが特徴です。「医療従事者との関係を築くコミュニケーション能力」「自社の製品を紹介するプレゼン能力」「自分で病院回りのスケジュールなどを調整する自己管理能力」が求められます。

(志望動機の例文)
病院薬剤師として5年間勤務しています。特に循環器の患者さまが多く、常に最新の医薬品情報をキャッチアップしています。そうした勉強の中で、ここ数年の治療の進歩を目の当たりにし、よりよい治療法の普及に関わりたいと考えるようになりました。貴社では循環器領域の薬剤を多く持っておられるので、これまで培ってきた知識をもとに貢献できると考えて志望しました。病院での勤務経験から、現場の医療従事者のニーズを汲んだ情報提供を心がけ、最良の治療選択肢を伝えることで多くの患者さまをサポートしたいと考えています。

4-1-2. MS

MS(マーケティング・スペシャリスト)は、医薬品卸会社の営業職。MRが医師への情報提供などを主目的にするのに対し、MSはさまざまな製薬会社から仕入れた製品を病院に提供し、価格交渉なども行います。そのため、「自分で病院回りのスケジュールなどを調整する自己管理能力」「多方面の関係者との利害調整能力」が求められます。

(志望動機の例文)
調剤薬局での実習中に、頻繁にMSの方が来ており、病院や患者さまにとってのベストは何なのかを考えながら提案しておられる様子に感銘を受けました。貴社は医薬品卸としてさまざまな製薬会社の製品を扱っておられるため、幅広い製品の中から偏ることなく、最良の選択肢を提案していけると考え、貴社を志望しました。薬剤師として学んだ専門性を活かし、医療従事者と製薬会社、患者さまの懸け橋になりたいと考えています。

詳細は以下のページをご覧ください。

4-2. 研究・開発職

研究職は新たな医薬品の探索や、そのための基礎研究を行う職種です。製薬会社の中でも特に就職難度が高いため、薬剤師としてのスキルだけでなく、プラスアルファのアピールが重要になってきます。長期にわたり新薬開発に携わるため、「答えのない課題を追究する好奇心・問題探索能力」「一つのプロジェクトに継続して打ち込む持続力」が求められます。

一方、開発職はそれにより生まれた新薬を、臨床試験(治験)にかけて安全性を調べる職種です。チームで治験に取り組むため、「一つのプロジェクトに継続して打ち込む持続力」のほか、その役割により「大規模なプロジェクトを管理する能力」「膨大なデータを取り扱う能力」などが求められます。

(志望動機の例文)
大病院の門前薬局で4年間勤務してきました。そこでさまざまな薬剤を取り扱う中、より先進的な知識を身につけて社会に貢献したいという思いが強くなり、治験業界に魅力を感じるようになりました。祖父が長らくがんで闘病していたのを見てきたため、特にがん領域に多くの新薬パイプラインを持つ貴社を志望しました。薬剤師として培った患者さまや医療従事者とのコミュニケーション能力と責任感を生かし、患者さまへ一刻も早く新薬を届けるお手伝いをしたいと考えています。

4-3.管理薬剤師

製薬会社で働く管理薬剤師は、医薬品の管理が主な仕事です。本社や支社で勤務する場合は、医薬品の在庫管理のほか、DI(医薬品の情報管理)、学術、MRや医師への問い合わせ対応などを兼務することもあります。そのため「新しい知識を常に吸収する向上心」「膨大な情報を正確に伝える細やかさ」「臨機応変なクレーム対応能力」が求められます。

工場で勤務する場合は、製品の製造工程を監督し、品質管理に努めます。ほかのスタッフの監督、製造に関わる許可申請などの事務的な業務も多いでしょう。「製造工程に問題がないか探索し、解決する能力」「チームを円滑に動かすコミュニケーション能力」が求められます。

(志望動機の例文)
薬剤師として皮膚科クリニックの門前薬局で勤務していました。服薬指導では、同じ薬剤でも剤形やメーカーにより使用感や効果が異なるとの声を患者さまから聞くことがあり、その違いを常に意識して学んできました。そうした工夫に触れる中で、医薬品の製造に関わりたいと考えるようになり、貴社を志望しました。積極的な設備投資と厳格なスタッフ教育を行い、高品質の医薬品を製造することに注力しておられる貴社の工場において、私も薬剤師として実地で学んできた鋭敏な感覚を活かし、さらなる品質向上に貢献したいと考えています。

詳細は以下のページをご覧ください。

4-4. 総合職

製薬会社にも、人事や総務などの間接部門があります。一般的な事務作業は派遣社員で賄っていることも多いですが、より専門性の高い職種では、薬剤師のスキルを活かすこともできます。たとえばマーケティング職は、薬剤師としての医薬品の知識をベースとして経験を積み、広告宣伝や経営などの知識・スキルもあわせて磨いていくことになります。

(志望動機の例文)
MRとして5年間勤務しています。製品のほかにない機能や魅力をプレゼンし、採用してもらえることに喜びを感じる中で、より視野を広げて製品のブランディングにチャレンジしたいと考えるようになりました。貴社では医薬品に加え、ヘルスケアに関わる幅広い製品ラインナップを揃えておられます。私もMRとして学んできた医薬品のPRスキルを活かし、貴社の製品の魅力アップに取り組んでいけたらと思っています。

5.英語スキルがあるとなお良い

製薬会社で働きたい場合、ビジネスレベル(TOEICなら700点以上)の英語力があると有利になります。最新の知見を得るために学術論文などを読み込んだり、製品に関する英語のレポートやメールを書いたりといった業務もこなせると心強いからです。なかには、海外学会への出席や海外企業との協業といった場面のある職種もあり、その場合はさらに高レベルの英語力を求められるでしょう。

志望する会社が外資か内資かに関係なく、ビジネスレベル以上の英語スキル・実務経験がある場合は、アピールに織り込んでおくことが大切です。

6.まとめ

製薬会社で働くための志望動機の書き方を紹介しました。製薬会社は高い専門性を求められ、それに伴って高い待遇も得られる業界です。そのため人気が高く、調剤薬局やドラッグストアなどに比べると募集人数が少ないこともあって入社難度は高いといえます。

ここで紹介した職種別の求められるスキルについて掘り下げていく考え方は、魅力的な志望動機を書く手助けになります。ぜひ、自分の言葉で書き出してみてくださいね。上手く書ける自信がない、これでよいのか客観的に判断できない、という場合は、転職エージェントなどに登録してアドバイスを求めると、さらにブラッシュアップすることもできます。

この記事の著者

医学ライター・編集者

青柳 かなた

出版社勤務を経て、医学専門の通信社に所属。
書籍編集、記事執筆などを11年以上にわたり手がける。
特にがんや免疫、遺伝、代謝疾患などの領域を得意とする。

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