薬剤師は残業が多い?少ない?残業が少ない職場の探し方やポイントを紹介

薬剤師 残業
どの職場でも忙しいイメージがある薬剤師の仕事。残業でお悩みの薬剤師の方も、多くいらっしゃるはずです。では、実際の職場環境や職場ごとの残業はどうなっているのでしょうか。

この記事では、薬剤師の残業時間の現状や職場別の残業の原因、残業が少ない職場などについて解説しています。さらに残業対策のポイントや残業が少ない職場の探し方も紹介しているので、残業でお悩みの薬剤師の方は必見です。

1.薬剤師の残業時間はどれくらい?

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」によると、薬剤師の残業時間に相当する1カ月あたりの超過実労働時間は平均10時間(男女合計)、男性では平均11時間、女性では平均9時間となっています。

医師の残業時間(20時間)ほどは長くありませんが、看護師(6時間)と比べると、薬剤師はかなり残業時間が長い結果に。また、残業時間は、職場の規模が大きくなるほど増える傾向が見られます。

1,000人以上の大企業になると平均15時間と、もはや医師と変わらないくらいの残業時間となり、忙しい勤務状況といえるでしょう。

参照元:厚生労働省/令和5年賃金構造基本統計調査

2.薬剤師の働く場所別で残業が多くなる原因は?

どの業種もそうですが、薬剤師も職場によって残業が増える原因が異なります。まずは、職場別に残業の原因を確認してみましょう。残業時間や残業が多くなる時期なども、職場によって変わってくるようです。

2-1.製薬会社(MR)の場合

MRは薬剤師の職場の中で、とくに残業が多いといわれています。
その原因の一つは、MRの大事な仕事である医師・薬剤師への医薬品の情報提供が、夕方以降の遅い時間に行われることが多いこと。新薬などの説明を医師にする場合、医師が仕事を終える夕方以降に業務を行うことも少なくありません。

また、薬を扱う仕事のため、医師とのコミュニケーションも大切になってきます。人によっては、医師とのコミュニケーションを図るために、通常業務とは関係のない時間帯に多くの時間を割いているというケースもあり、残業となってしまうようです。

さらには、病院薬剤師・調剤薬局の薬剤師への自社製品の紹介や勉強会などが夜に行われることもあり、説明会用の資料の作成で、MRの業務量が増えてしまいます。

MR自身が知識を習得するための勉強会や会議なども通常の業務後に行われることが多いため、やりがいのある職種ではあるものの、残業が多くなってしまいがちな職種といえるでしょう。

2-2.病院の場合

病院勤務では、病棟業務や会議などが原因で残業が多くなることがあります。

外来患者への調剤は、院外処方箋の対応もあって減少しましたが、その分、病棟業務が増えました。入院患者の薬剤管理や服薬指導など、病棟薬剤業務実施加算に相当する業務をこなさなければなりません。

また、大規模の病院であれば、医師や看護師などの他職種で組むチーム医療に参加することもありますし、会議に出席することもあります。加えて、医師の要請を受けて患者さんに対して行う高カロリー輸液の調製業務など、調剤業務以外の業務もたくさんあります。そのため、「薬局に戻ったときには、終業時間近だった」ということも多く、残業の原因となっているようです。

終業時間に業務が終わることももちろんありますが、病院薬剤師もあらゆる業務に追われていることから、いつも終業時までに業務を終わらせるのは至難の業といえます。

2-3.ドラッグストアの場合

薬剤師のハードな職場の代表といえるドラッグストア勤務ですが、業務の多様化と人手不足が、残業の原因になりやすいようです。

調剤併設型であれば、調剤業務はもちろん、OTCの販売など、薬剤師の業務だけに専念するわけではありません。薬剤師としての業務は終わっても季節商品の入れ替えや業者への対応、他店舗との価格戦争に打ち勝つための会議、店舗で扱う食料品や日用品などの商品に関わる勉強など、業務の多様化により薬剤師以外の仕事で残業が日常化する傾向にあるようです。

2-4.調剤薬局の場合

調剤薬局で残業が発生する主な原因は、閉局間際に来店する患者さんや、特定季節に増加する疾患患者さんへの対応などによるものです。

門前薬局の場合、近隣クリニックの診療時間が延びれば、患者さんが来店する時間も遅くなってしまうため、定時を過ぎてから服薬指導を始めると、どうしても残業が発生してしまいます。

また、患者さんが増える季節も残業が発生しがちです。例えば、内科では風邪やインフルエンザといった季節性の感染症が流行する時期に、耳鼻科では花粉症の時期に急増します。来店する患者さんが増えるほど薬剤師の業務量も増えるため、残業時間が季節に影響されやすくなる傾向にあります。

かかりつけ薬剤師や在宅薬剤師として働く場合には、患者さんのコールに対応したり、患者さんの自宅まで薬を届けたりと、終了時間がさらに患者さんに左右されやすくなるでしょう。

3.薬剤師が働く職場で残業が少ないところは?

理想は残業がない職場ですが、薬剤師の仕事は忙しく、なかなかそうもいきません。そこで、薬剤師の残業が少ないといわれる職場についてご紹介します。

3-1.医薬品卸は残業がゼロに近く、人気の職場

薬剤師が働く職場の中で、医薬品卸は残業の少なさがトップクラスで、人気の高い職場です。ただし、薬剤師の求人はそれほど多くありません。

医薬品卸の薬剤師には調剤や営業などの業務がなく、社内の薬品の在庫や品質の管理が主な仕事です。また、MSを介して得意先の病院や薬局に対する医薬品の情報提供や、得意先からの専門的な問い合わせにも対応します。

このような一連の業務は、終業時間内に行われる場合がほとんどです。
子育てや家事との両立に苦労しているパパ・ママ薬剤師には理想的な職場といえます。

3-2.企業内勤務は残業しない薬剤師が有能!?

企業内で働く場合は研究、品質管理、法的業務(薬機法書類の作成など)のような業務に携わりますが、ほとんど残業することはないでしょう。

最近の風潮として、残業は「仕事を時間内に終わらせる能力がない」と評価されてしまうケースも少なくありません。そうした職場の文化があるため、企業で働く薬剤師の残業は、他の薬剤師と比べると少ないといえます。

しかし、薬剤師というより化学者としての高いクオリティーを求められるため、ハイレベルな薬剤師が求められる職場といえるでしょう。残業が少ないということだけで企業に就職、転職をするのではなく、よく考えた上で決める必要があります。

3-3.残業の少ない派遣薬剤師で働く

パパ・ママ薬剤師、あるいはプライベートを優先したい薬剤師には、残業がない、または残業があってもわずかな時間で済みそうな派遣薬剤師という職務スタイルもあります。派遣会社と派遣先の調剤薬局との契約がしっかりできていれば、よほどのことがない限り、契約内容と違う職務を求められることはありません。

何かと忙しいパパ・ママ薬剤師や終業後の過ごし方にこだわりがある場合は、派遣薬剤師という職種は理想的といえるでしょう。

4.残業が多い場合はどうしたらいい?

残業が多かったり、残業代が出ずに悩んでいたりする薬剤師の方も多いでしょう。
中には、「職場の環境を改善するためにどうすればいいのか」「現状の職場に対してどういうアピールをすれば状況が改善されるのか分からない」という方もいるはずです。「納得できないまま残業はしたくない」そんな残業にまつわる対策をご紹介します。

4-1.人手が不足していることを伝えてみる

「人手が足りない」「業務量が膨大で仕事が回らない」という現状を、職場に伝えてみましょう。経営者や上司が現場の業務をよく理解しておらず、忙しさが伝わっていない可能性があります。

例えば、1人の薬剤師が調剤できる処方箋の枚数は40枚/日と決められていますが、「処方箋の枚数が多いから忙しい、枚数が少ないから楽」というわけではありません。枚数が少なくても次のような状況になると、業務はかなり忙しくなります。

  • 予製剤のない散薬がある処方箋が多いとき
  • 医師に疑義照会しなければいけない処方箋が多いとき
  • 処方箋に在庫のない薬がいくつもあるとき
  • 患者さんの服薬指導に時間がかかったとき
  • 長話をする患者さんの対応に追われたとき……など

上記のような事例が一日のうちにいくつも重なることは珍しくなく、業務時間外に薬歴を書くケースも少なくありません。こんな日は、処方箋が少なくても最低限の薬剤師の人数でやりきるのは非常に困難といえます。

このような現場の状態でも、経営者が薬剤師ではない場合「処方箋の枚数と薬剤師の人数は法的に見合っている」と考えていることもありえます。そのため、職場の現状をデータなどで客観的に分かりやすく説明して、人材不足をアピールしてみるとよいでしょう。

それでも理解されない、改善されないのであれば次の解決策に取り組みましょう。

4-2.職場環境の見直しや改善を提案してみる

薬剤師人材不足の放置は、いずれ調剤ミスという取り返しのつかない非常事態を発生させる大きな要因となります。また、かかりつけ薬局であれば、そこが正常に機能できなくなってしまうかもしれません。

大事が起きる前に、薬剤師から職場環境の適正化や見直しを求めましょう。
人材不足の解消や業務の効率化、就業規則の見直しなど、薬剤師が気持ちよく働ける環境づくりを提案したり、職場全体で考えたりするのも一つの方法です。

4-3.転職を検討してみる

就業状態がいつまでも改善されないようであれば、転職も考えるべきでしょう。職場を変える決心がついて新しい職場探しをすることになったとき、気になるのが残業時間の長さや支払われる残業代の状況です。残業が少ないのはどんな職場なのか、どのような残業の制度をとっている企業なのかをマイナビ薬剤師で確認してみましょう。

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マイナビ薬剤師を利用した転職活動なら、残業代についてもキャリアアドバイザーを通じて「何分単位で支給されるのか」「何分単位で計算しているか」などの情報が聞きやすくなります。

また、マイナビ薬剤師に登録すると、転職支援の経験が豊富なキャリアアドバイザーにさまざまな相談ができるだけでなく、一人ひとりに合ったアドバイスをさせていただきます。

例えば、自分だけでは調べることが難しい転職先の労働条件や就業形態などを問い合わせることもできるため、自分に合った残業の少ない転職先を効率よく見つけることができます。

5.薬剤師必見!残業代の基本の計算方法

薬剤師は仕事が多く、残業をしている方も少なくありません。
私たちの労働時間の限度は40時間/週と労働基準法で定められていて、残業はこの法で定められた労働時間以上の業務時間を指します。

参照元:厚生労働省/労働基準法第36条(時間外・休日労働協定)について

雇用者は通常賃金に25%上乗せされた金額を、残業代として労働者に支払われなければいけません。

例えば、時給が2000円であれば[2000円×1.25=2500円]となるので、残業時間が1時間の場合は2500円、30分なら半分の1250円、2時間なら倍の5000円となります。

参照元:厚生労働省/割増賃金の基礎となる賃金とは?

6.残業が少ない職場を探す際のポイントや注意点

継続的に薬剤師として働ける環境を獲得するには、就職先の労務環境や職場の雰囲気などを、前もって把握しておくことが重要です。

ここでは、残業が少ない薬剤師の職場を探すときのポイントをご紹介します。

6-1.友人や知り合いから話を聞いてみる

仕事仲間や大学の同窓生など、さまざまな人脈を駆使して、転職を検討している職場の情報を得ることも一つの方法です。

自分の行きたい職場に勤めている友人、あるいは過去にその職場で働いたことがある薬剤師などを見つけて相談できれば、非常に貴重な情報を入手できます。

職場の空気感や人間関係、残業の頻度などは、実際に働いたことがある人でなければ分かりません。職場選択の際の判断材料となるでしょう。

ただし、自分の要望について相談できる薬剤師を見つけられるか、また、忙しい現役薬剤師に自分が満足いくまで相談できるかという懸念はあります。

6-2.給与が高いからとすぐに決めない

他と比べて明らかに給与が高い求人は、慢性的に人手が不足している職場の可能性があります。

「業務量が膨大で残業が多い」「離職率が高い」など、薬剤師が働きにくい職場の可能性もあるため、給与や待遇だけではなく、口コミなどで職場環境や労働環境などをよく確認しましょう。

また、求人情報に掲載されている給与は、みなし残業代などが含まれている場合もあります。求人票をよく読み、額面の数字だけを見て判断しないよう注意しましょう。

6-3.職場見学ができないか確認する

働きたい職場がすでにあれば、直接見学させてもらうとよいでしょう。職場見学は、自分に合った職場かどうかを知る、確かな方法です。

職場の雰囲気やスタッフが働く様子を見るだけでも、忙しくて残業が多そうな職場なのか、働きやすい環境なのか、イメージしやすくなるでしょう。自分の目で見て確認できると、ミスマッチが少なくなるはずです。

ただし、その職場が開局している時間帯は、自分が働いている時間帯でもあります。見学のための欠勤・早退などは現実的に難しいことも。見学してみたい職場が3~4カ所もあれば、なおさら現実的ではないはずです。今の職場で働きながら職場見学を検討するなら、スケジュールの調整が必要といえるでしょう。

6-4.業務の量や繁忙期を確認する

転職先を決める前に、通常の業務量を確認しておきましょう。「通常の業務量はどのくらいなのか」「残業は平均でどのくらいあるのか」など、疑問や気になる点は入社前に質問して解消しておくことが大切です。

また、繁忙期についても忘れずに確認をしておきましょう。風邪やインフルエンザなどの季節性の感染症が流行し、体調を崩した患者さんが通院や来店する機会が増えるため、薬剤師の繁忙期は一般的には冬といわれています。近隣クリニックの診療科などによっても忙しい時期が変わってくるため、きちんと確認しておくとよいでしょう。

6-5.勤務体系について把握しておく

勤務体系が変われば、働き方も大きく変わってきます。希望の勤務体系がある場合には、よく確認しておきましょう。薬剤師の勤務体系としては、主に以下の4つがあります。

6-5-1.固定制

「平日9〜18時・土日祝日は休み」といった、勤務する曜日と時間が決まっている働き方。調剤薬局や企業に多い勤務体系です。1日8時間以内、1週間に40時間以内と定められている法定労働時間を超えて働いた場合は、時間外労働になります。

参照元:厚生労働省/現行の労働時間制度の概要

6-5-2.シフト制

「早番の日は9〜17時、遅番の日は12〜20時」といった、日によって働く時間帯が変わる働き方です。出勤日や休日も曜日が変則的になることもあり、ドラッグストアや病院に多い勤務体系でしょう。シフト制も法定労働時間を超過すると時間外労働になります。

参照元:厚生労働省/現行の労働時間制度の概要

6-5-3.変形労働時間制

繁忙期や閑散期など、時期に応じて労働時間を変える働き方で、時期によって業務量の差が大きい店舗や病院などで採用されている勤務体系です。月単位や年単位で労働時間を平均し、1週間あたりの労働時間が超過しないように勤務時間を調整します。

参照元:厚生労働省/労働時間・休日に関する主な制度

6-5-4.フレックスタイム制

各日の始業・終業時間を、労働者自身が自分で決めて働く制度で、一定期間の総労働時間やコアタイムを定め、その枠内で働きます。研究職などで採用されやすい勤務体系です。一定期間内の法定労働時間の総枠を超えて働いた場合、時間外労働となります。

参照元:厚生労働省/現行の労働時間制度の概要

6-6.転職エージェントを利用する

転職サイト「マイナビ薬剤師」に登録すると、転職活動支援の経験が豊富なキャリアアドバイザーのサポートを受けながら、残業が少ない職場を効率よく探すことができます。

働きたい転職先への主な交渉はキャリアアドバイザーが代行。そのため、仕事を休むことなく転職活動を続けることが可能です。忙しい薬剤師に代わって、薬剤師の転職サポートに特化したキャリアアドバイザーが薬剤師の要望を転職先に的確に伝え、年収・残業などの労働条件や就業形態などを調査します。

その後、転職先の情報と登録者のさまざまな条件や希望の優先順位を整理し、あなたの希望をかなえられる転職先をご提案。現職と並行しながらのスムーズな職場探しに、ぜひマイナビ薬剤師をご活用ください。

7.まとめ

残業は「できるだけ少ない方がいい」「するなら残業代をしっかり出してほしい」ものです。薬剤師として継続して働いていくためには、現在の職場で残業を減らす対策をしてみたり、残業がより少ない職場への転職を検討してみたりする必要があるでしょう。

納得のいく職場で自分らしく働きたい薬剤師の方は、ぜひマイナビ薬剤師に相談してみませんか?残業の少ない職場も、理想のキャリアプランもきっと見つかるはずです。

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この記事の著者

医療健康ライター・コピーライター

荒川 智世

広告代理店、制作プロダクション勤務を経て、2022年よりフリーランスのライター・コピーライターとして活動。登録販売者の資格を持ち、記事執筆や広告コピーの制作などに10年携わる。主に医療・健康分野を得意とする。

この記事の監修者

薬剤師専任キャリアアドバイザー

中村 貴大

薬剤師の転職サポート歴7年。
調剤薬局、病院、ドラッグストアなどの法人担当だけでなく、多くの求職者様の転職活動を成功に導いた経験と知識を活かし、転職活動を開始される皆さまを全力でサポートさせていただきます。

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