薬剤師が転職を決めてから、円満に退職するまでのスケジュールと流れ


薬剤師の転職活動は、今の仕事を続けながら行う人が大多数かと思います。しかし、日々の業務をこなしながら、退職準備と転職活動を並行して進めるのは、決して簡単ではありません。うまく乗り切るためには、それぞれでやるべき事柄を把握しておく必要があります。

そこで、ここでは薬剤師が退職を意識したときから転職が完了するまでの流れについて、各段階でやるべきことをピックアップしながら、「退職準備」と「転職活動」に分けてご紹介します。

すぐに使える「退職願の例文」も付いていますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.退職を意識したらまずやるべきこと

退職を意識したらまずやるべきなのは、「なぜ退職したいのか」を明確にして「退職することで何を変えたいのか」を考えることです。退職の理由が職場の人間関係なら、異動で解決できる場合もありますし、待遇への不満が理由なら会社と交渉する道もあります。

本当に退職することがベストな選択なのか、よく考えて結論を出しましょう。

2.退職までのタイムテーブルと必要な手続き

よく考えた結果、退職するのがベストだと判断したら、実際に退職の手続きを進めていきます。退職までのタイムテーブルは、およそ次のようになります。

2-1.退職時期を決める

退職の意思を固めた後、最初にするべきはいつ退職するのかを決めることです。できれば繁忙期を避けるということ以外は特にマナー上の決まりはありませんが、基本的にはボーナスのあとがおすすめです。

2-2.退職の意思を伝える

退職の時期を決めたら、それぞれの会社規定に従って、職場に退職の意思を伝えます。

期間は1~6ヵ月前とさまざまです。法律上は、退職することを伝えて2週間が経過すれば問題なく退職できますが、実際2週間前の申し出となると、代わりの人材確保や引継ぎが間に合わず、円満退社にならないことがほとんどです。

そこで、会社で規定があるならその規定に沿って、なければ退職希望日の2ヵ月くらい前に伝えるようにしましょう。
伝え方はまず直属の上司に口頭で伝えるのがマナーです。直属の上司を飛び越えてさらに上へ伝えてしまったり、うっかり同僚に話してしまって噂が広まったりすると余計なトラブルを招きますので、必ず最初に直属の上司に直接伝えましょう。

退職理由は、結婚や妊娠、転勤、○○の資格を取りたいからなど、職場の上司が嫌な気持ちにならない理由なら素直に伝えるのがおすすめです。

ただし、誰かを非難するなど職場への不満を滔々と並べたてるのはNG!自分の評判を落としかねない言動は避け、前向きな表現に言い換えて伝える<ようにしましょう。

また、「休暇が取得しづらい」、「定時に退勤できない」など、会社の努力不足を理由にするのも避けましょう。会社からは「業務環境を改善できるよう検討するから退職を考え直してほしい」と交渉に持ち込まれ、退職のタイミングを逃してしまうことがあるからです。

円満退社につながる退職理由について詳しく知りたいというかたは、こちらの記事も参考にしてみてください。

2-3.退職届・退職願を出す

上司との話し合いで退職日が決まったら、現在の勤務先の習慣によりますが、通常退職日の1ヵ月前に退職届、または退職願を提出します。

この「退職届」と「退職願」、似ているようですが、それぞれが持つ意味合いには大きな違いがあります。

まず、「退職届」は、会社に退職の可否を問うことなく、労働者側が自ら、会社との間の労働契約を解除することを申し入れるための書類です。労働者からの退職届による労働契約の解約の申し入れが行われると、民法第627条の定めに従い、提出日から2週間後に雇用契約が終了します。ただし、この退職届は一度提出すると撤回することはできません。

それに対し、「退職願」は、労働者が会社に対し、「退職したい」という意思を伝えるための書類です。こちらはあくまでも、労働者の意思を会社に伝えるためのものであり、法的な効力はないため、会社はこれを却下することも可能です。退職願を提出後は、会社の同意を得た上で退職手続きを進めることになります。

2-4.引継ぎを行う

退職の意思を伝えたときに会社が代わりの人を募集していれば、決まってから。同僚などが指名された場合はその人に業務の引継ぎを行うことになります。

およそ1ヵ月前後の場合が多いですが、後任が決まるまでのあいだに書類の整理をしたり、引き継ぐべき内容をリストアップしたりしておくとスムーズです。

2-5.退職の挨拶をする

退職の10日前頃になったら、通常お世話になった人や取引先へ挨拶に行きます。会えない人には、メールやはがきでも構いません。重要な取引先には、後任がいれば引継ぎを兼ねて一緒に挨拶に行くのがおすすめです。

2-6.退職する

退職当日は、会社から支給または貸与されている物の返却と、会社に預けている物の受け取りを忘れずに行います。返却する物は、例えば社員証やIDカード、健康保険被保険者証、白衣、作業着などが挙げられます。

受け取る物は、例えば薬剤師免許証や離職票、雇用保険被保険者証、年金手帳などです。

3.退職時、強く引き止められたら?

退職の意思を申し出ると、上司や先輩から強く引き留められることがあるかもしれません。多くの薬局や病院の調剤部は、常に人手不足で悩んでいます。「辞められたら困る!」と、手を尽くして退職希望者を引き留めようとすることも。

しかし次の職場が決まっている場合は、「今後こういうことをやりたいので、転職します」「自分には夢があるので、どうしても転職したいです」と、真摯に自分の前向きな意志を伝えましょう。

「後任が決まるまでいてほしい」などと言われることもありますが、承諾してしまうとなし崩しになってそのままとどまってしまうことも多く、最もやってはいけないパターンです。「申し訳ございませんが、転職先の入社日が決まっているので○日までとさせていただきます」と伝えるのがおすすめです。

万が一、退職が認めてもらえなかったり、職場からの強い引き止めにあってしまった場合は、「退職願」ではなく、先ほど解説した「退職届」の提出を検討するのも選択肢の一つです。
法律によって、労働者には「退職の自由」が認められているため、退職届を提出すれば、提出から2週間後に雇用契約を解消することができます。ただし、この方法では、労働者側からの一方的な通告になってしまうため、円満退職とはいかない場合があるので注意しましょう。

4.退職願はどう書く?

退職願の書き方
自らの都合により職場を辞めたいときは、「退職したい」という意思を伝えるための「退職願」を提出するのが一般的です。退職願の正しい書き方や、押さえておきたいポイント、見落としがちな注意点についてみていきましょう。

4-1.退職願の書き方

会社によっては、所定の様式が決まっているところもありますが、特にそのような決まりはないという人のために、退職願の一般的なフォーマットや例文をご紹介します。

退職届の書き方 まずは封筒書き方ですが、表側中央には「退職願」と記載します。
裏面は、所属している部署名、または支店名を記載し、左側に自分の名前を書きます。

次に、便箋の書き方を説明します。

退職届の書き方

  1. 1行目の中央に表題として「退職願」と書きます。
  2. 表題から1行あけ、次の行の一番下に「私事」、または「私儀」と記載します。
  3. 次の行に、退職理由と退職希望日について記載します。なお、ここに書く退職理由は「一身上の都合により」などの形式的なもので良く、具体的な理由を述べなくても構いません。退職希望日に関しては、あらかじめ上司に相談して了承を得た日付(和暦)を記載します。
    (例:このたび、一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもちまして退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。)
  4. 次に、届け出年月日を和暦で記載し、所属部署(店舗名)と自分の名前を書いて、その下に捺印します。※自分の名前は、最高責任者の宛名よりも低い位置になるように記載しましょう。
  5. 最後に、宛名として会社名、会社の最高責任者の役職、名前を記載します。最高責任者の敬称には「殿」を用いるとよいでしょう。

4-2. 退職願を書く際のポイントや注意点

退職願の提出にあたっては、上記で示した記載内容以外にも、さまざまなルールやマナーが求められます。退職願を書く際にぜひ押さえておきたいポイントや、職場側に失礼ととられないための注意点について解説します。

まず、退職願を書くにあたっての心持や基本的なルールを見ていきましょう。
最近では、電子化に伴って多くの書類がPCで作成されるようになりました。会社によっては、退職願の既定のフォーマットが用意されていることもあるでしょう。しかし、会社から指示がある場合を除いては、直筆で書くのが基本です。退職願は自分の意思を会社に伝える重要な書類だからです。

退職願を書く際は、下記を準備しましょう。

  1. 白い便箋(B5もしくはA4サイズの縦書き用便箋、罫線は入っていても可。模様や図柄入りは不可)
  2. 白い封筒(便箋がB5の場合は長形4号、A4の場合は長形3号縦長、無地で郵便番号などの記載欄が無いもの)
  3. 黒色のボールペンもしくは万年筆
  4. 印鑑と朱肉(シャチハタ印は不可)

先ほど紹介した例文を元に、退職願を手書きで書いていくのですが、もし書き間違えてしまった場合は、もういちど最初から書き直すのがマナーです。
本文を書き終えたら、白い封筒の表に「退職願」、裏に自分の所属部署(店舗名)と名前を書いて完了です。

最近はなかなか手書きで書類を書く機会も少なくなりましたが、退職という大切な節目には、真摯な気持ちで書き、会社に提出することで、気持ちよく退社することができます。

5.転職までの流れ

薬剤師の場合、退職を決めると同時に転職活動を始める人もいるかと思います。転職までの流れはおよそ次のようになります。

5-1.キャリアの棚卸し

転職活動を成功させるために求められるのは、自分の思う働き方ができる企業を探し、「私は御社が求めている人材です!」ということをアピールする力です。キャリアの棚卸しは、自分のアピールポイントを知るためにも大事な作業なのです。
これまでの仕事内容や経験した職場、任された仕事やポジション、部下の人数、取得した資格、自分が得意とする業務、どんな意識で患者さんと接してきたかなどをたどることが、自分の特性や強みの発見につながります。

5-2.キャリアプランを作る

キャリアの棚卸しと並行して進めたいのが、「これからどうなりたいか」を考えること、すなわちキャリアプランづくりです。

1年後、3年後、5年後、10年後、20年後にどんな風に働いていたいのかを、仕事の内容だけでなく、勤務地や就業時間も含めて書き出してみましょう。生活と仕事の両面から自分が大切にしていることを見極めるのが、理想の転職先選びの助けになります。

5-3.業界研究・企業研究

キャリアプランづくりで明確化した自分の理想を元に、その理想が叶えられそうな転職先を探す段階です。薬剤師の職場は病院、調剤薬局、ドラッグストア、製薬会社など幅広く、それぞれ特徴は異なります。自分に合った転職先を探すためには、業界研究・企業研究が必須です。

5-4.応募・面接・採用・入社

自分に合いそうな企業を見つけたら、応募して面接へと進んでいきます。たとえ在職中に採用が決まっても入社時期を数ヵ月は待ってくれるところが大半なので、ここはと思う企業や病院があれば積極的に応募しましょう。

6.転職先が決まらないうちの退職、どう時間を使う?

退職時に転職先が決まっていない場合は、もちろん退職後に転職活動を行うことになります。ただ、特に転職を急ぐ必要がなかったり、体調を崩して退職の場合など、これを機に少し長めの休暇を取ってリフレッシュするのもひとつの方法です。

何もしていないブランクの期間は短い方が転職には有利なので、この機会に資格取得などに挑戦するのもいいでしょう。

在職時から転職活動を続けていた場合、転職先が決まらないまま退職日を迎えてしまうと焦ってしまいがちです。

しかし、退職後は時間がたっぷりありますので、いい求人にスピーディーに対応できたり、いつからでも働けることが採用担当者に対してアピールになったりなど、在職中の人に比べて有利な点もあります。ただし、生活は不規則になりやすいので、メリハリをつけて転職活動を続けていきましょう。

7.退職も転職も準備が重要

円満に退職できるか、自分のキャリアプランに見合った企業に転職できるかは、いずれも準備にかかっているといっても過言ではありません。ここで紹介した退職から転職に至るまでのプロセスも参考にしつつ、しっかりと準備を整えて臨みましょう。

「忙しくて時間がとれない」という方は、マイナビ薬剤師のキャリアアドバイザーにおまかせ下さい。薬剤師専任のキャリアアドバイザーが目的のキャリアプランに合わせて転職のサポートをいたします。

この記事の著者

医学博士、医学研究者

榎本 蒼子

最終学歴は京都府立医科大学大学院医学研究科博士課程卒業。2011~2015年 京都府立医科大学にて助教を勤め、医学研究および医学教育に従事。

毎日更新!新着薬剤師求人・転職情報

薬剤師の円満退社・内定準備に関するその他の記事

薬剤師の円満退社・内定準備に関する記事一覧

※在庫状況により、キャンペーンは予告なく変更・終了する場合がございます。ご了承ください。
※本ウェブサイトからご登録いただき、ご来社またはお電話にてキャリアアドバイザーと面談をさせていただいた方に限ります。

「マイナビ薬剤師」は厚生労働大臣認可の転職支援サービス。完全無料にてご利用いただけます。
厚生労働大臣許可番号 紹介13 - ユ - 080554