【薬剤師必見!】添付文書の電子化で何が変わる?今後の対応を確認
2021年8月に添付文書の電子化に関わる法律が施行されます。
これにより薬剤師にとってなじみのある紙の添付文書は原則として廃止され、電子的な方法での閲覧が基本となります。
薬剤師にとって添付文書は医薬品情報を得る大切な情報源で、安全対策のためにはいつでも最新の添付文書を確認する必要がありますが、添付文書の電子化により常に最新の情報を得ることができるようになります。
そこで、添付文書の電子化に伴う大きな変化に対応できるように今後の流れや考えられる展開についてご紹介いたします。
1. 添付文書の電子化とは?
2021年8月1日より改正薬機法により、これまで医薬品等の製品に同梱されていた紙の添付文書は原則として廃止され、電子的な方法で添付文書情報を閲覧することになります。
ただし、一般用医薬品等の消費者が直接購入する製品については、引き続き添付文書が同梱されます。
1-1. 現状での課題
2018年(平成30年)11月8日に行われた第8回 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会では、現行制度における添付文書情報の提供方法の課題として以下の内容が議論されました。
添付文書が最新でない場合
添付文書は頻繁に改訂されるため、在庫されている医薬品等に同梱されている添付文書が必ずしも最新版ではない場合があります。そのため適宜、添付文書が最新版であるかを確認する必要があり、作業効率低下の一因となっています。
紙資源の浪費
同一の医薬品等が医療機関や薬局に納品されるたびに、添付文書が一つの施設に多数存在し、紙資源の浪費につながっていると指摘されています。
1-2. 電子化の内容
添付文書の電子化とは、医薬品の製品の符号と添付文書を紐づけすることで、スマートフォンなどの電子端末でアプリケーションなどを使い、インターネット経由で最新の添付文書を閲覧できることを指します。改正薬機法のもとで施行される制度です。
それに伴い医薬品等に同梱されている紙の添付文書を原則として廃止します。しかし電子的な提供方法に加えて、製造販売業者により紙の添付文書が提供される場合があります。
- 初回納品時は製造販売業者により紙の添付文書を提供
- 添付文書が改訂された場合は、改定後に紙媒体などで速やかに情報提供
1-3. これからのスケジュール
改正薬機法が施行される2021年8月1日からは、製品の容器や被包に符号(バーコードやQRコード)が記載され、製品(医薬品等)と一緒に同梱されていた紙の添付文書が原則として廃止されることになります。
ただし、改正薬機法の施行後も2年間(2021年8月1日から2023年7月31日まで)は、経過措置期間として電子的な提供と紙媒体の添付文書の同梱を並行して行うことが認められ、2023年8月1日からは電子的な方法のみで添付文書の提供が行われます。
2. 添付文書の電子化によるメリット
添付文書の電子的提供をされることによって考えられるメリットについて解説していきます。
2-1. 業務の効率化ができる
医薬品等が入っている外箱に表示されているバーコード等を読み取ることで、最新の添付文書情報を入手できるので、効率よく業務に取り組むことが可能です。
2-2. コスト削減ができる
紙の添付文書が電子提供をされることによって、さまざまな場面におけるコスト削減の効果が期待できます。
紙資源の削減
紙による添付文書の提供が廃止されるため、紙資源の浪費が解消されます。
紙ゴミの削減、紙ごみ処理コストの削減
現行制度では医薬品にはほとんどの場合で添付文書が同梱されていますので、余った添付文書は紙ゴミとなります。また、それらの紙ごみを分別してごみとして処理するコストも削減できます。
人的コストの削減
添付文書の電子化により、業務の効率化が期待でき、人的コストの削減にもつながります。
2-3. 情報の劣化・添付文書の紛失がなくなる
紙の添付文書を保管、管理している医療機関や薬局では、その必要性がなくなります。保管、管理をしなくともスマートフォンなどの情報通信機器を使用出来る環境下では最新の添付文書情報をいつでも取得することができます。
3. 添付文書の電子化による注意点
紙の添付文書が廃止されることや添付文書情報の提供が電子化されることにより考えられる注意点をみていきましょう。
3-1. 対応方法の見直し
医薬品の流通経路は複雑で多くの人々が関与しています。
複雑な流通経路を経ても医薬品は市場出荷された状態を維持し、品質の劣化、改ざん、破損されないことが保持されなければなりません。
これまで、紙の添付文書には医薬品情報の提供としての役割の他、輸送時に医薬品が破損することから守る緩衝剤の役割もありました。
令和3年2月19日に出された「医薬品等の注意事項等情報の提供について」に関する質疑応答集(Q&A)についてでは経過措置期間が終了した後は、紙による添付文書の同梱は避けることとされており、現状に変わる対応の見直しが必要なため、今後の対応が注目されます。
3-2. 医薬品情報リテラシーの格差
ここでいう医薬品情報リテラシーは、情報機器を利用して、知りたい医薬品情報にたどり着き、それを正しく有効に利用できる知識や能力のことを指しています。
これからは薬剤師がその専門性を発揮するためには必要とする最新医薬品情報を効率よく収集するスキルが必要とされています。
しかし、このスキルには能力の差があります。今回の改訂では添付文書だけでなく関連文書も同様の方法で閲覧が可能となりますが、これらから得られる大量の情報を実務と関連づける医薬品情報リテラシーが必要とされます。
4. 添付文書の電子化後の閲覧方法
改正法が施行される2021年8月1日以降からは、医薬品等の外箱に電子化された添付文書や関連文書に閲覧するためのGS1-128バーコードやQRコードが印字されます。
これらのコードをインターネットに接続可能なスマートフォンやタブレットにダウンロードした専用アプリケーションを使って読み取り、コードが対応するURLへ直接アクセスすることで電子化された添付文書を閲覧することができます。
また、今回の改訂では添付文書の閲覧だけでなく関連文書も同様の方法で閲覧が可能となります。
6. まとめ
ここまで添付文書の電子化に伴う変化についてご紹介してきました。
今回の改正は医療現場で働いている薬剤師をはじめとする医療人にとって大きな変化であることは間違いありません。
添付文書の電子化により医薬品情報へのアクセスが良くなるので業務の効率化につながります。
反面、得られる大量の医薬品情報を薬剤師の業務に役立てるためには医薬品情報リテラシーが必要とされます。
今後、添付文書の電子化に伴い、薬剤師が自ら医薬品情報リテラシーを高めて、業務効率化をサポートできるようになる姿勢が求められていくことでしょう。
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