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西洋医学とは異なる理論で処方される漢方薬。患者さんから漢方薬について聞かれて、困った経験のある薬剤師さんもいるのでは? このコラムでは、薬剤師・国際中医師である中垣亜希子先生に中医学を基本から解説していただきます。基礎を学んで、漢方に強くなりましょう!

第2回 「日本漢方」と「中医学」の違いとは

そもそも漢方とは……

日本では一般的に、生薬を用いた医療をまとめて「漢方」と呼びますが、実はそこには「日本漢方(漢方医学)」と「中医学」の異なる二つの学問が含まれています。日本には、日本漢方、中医学、折衷派、それぞれの専門家がいます。日本漢方と中医学は診断法や治療方針が異なるため、話が噛み合わないことも……

そもそも「漢方」という言葉は、江戸時代に日本に伝来したオランダ医学「蘭方」に対し、それまで日本にあった伝統医学を「漢の国から伝来した医学」という考えから「漢方」と名付けたことがきっかけです。
一方、「中医学」は「中国伝統医学」の略称で、西洋医学とは異なった理論――陰陽五行説などの自然哲学に基づいた中国の伝統医学です。

日本漢方のルーツは中医学ですが、中国から日本に伝来してから『傷寒論(しょうかんろん)※1』など一部の中医学書を基本に、腹診を重視して日本独自の発展を遂げました。そのため現在では、中医学とは異なる学問としてとらえられており、中国には「漢方」と呼ばれるものは存在しません。

中医学は「鍼灸(しんきゅう)※2」「湯液(とうえき)※3」「推拿(すいな)※4」「気功」「中医営養学(薬膳)」と大まかに5つに分類され、すべて陰陽学説・五行学説などの中医基礎理論に基づいた医学体系となっています。

日本漢方のルーツは中医学ですが、中国から日本に伝来してから『傷寒論(しょうかんろん)※1』など一部の中医学書を基本に、腹診を重視して日本独自の発展を遂げました。そのため現在では、中医学とは異なる学問としてとらえられており、中国には「漢方」と呼ばれるものは存在しません。

中医学は「鍼灸(しんきゅう)※2」「湯液(とうえき)※3」「推拿(すいな)※4」「気功」「中医営養学(薬膳)」と大まかに5つに分類され、すべて陰陽学説・五行学説などの中医基礎理論に基づいた医学体系となっています。

日本漢方と中医学の違い

日本漢方では、『傷寒論』などを基本とした「方証相対(ほうしょうそうたい)」という経験的・実践的手法を用います。たとえば「“寒気・首すじや肩のこり・頭痛・汗が出ない”という“葛根湯証”には“葛根湯”」と、カルタの上の句と下の句のように、症状と方剤を対応させます。病気の原因・メカニズムについては、一切追及しません。
そのため、日本漢方では『傷寒論』に書いてある証候と方剤をすべて覚えます。豊富な経験と感性が求められ、熟達すれば非常によく効きます。ただ、熟達するのが非常に難しく、熟練の度合いや診立てる人によって、処方がまったく異なるということがよくあります。

中医学では、「弁証論治(べんしょうろんち)」という理論的方法を用います。「弁証論治」とは、一人ひとりの「証(体質・病の本質)」を「四診(望・聞・問・切の四つの診察法)」を用いて見極め、どのような「証」なのかを判断し(弁証)、その「証」をもとに治療法を論じ治療すること(論治)です。
カルタの上の句と下の句を結びつける理論の部分―『証』―をしっかり追求するのが中医学の手法であり、この「弁証論治」こそが、中医学の神髄です。中医学は体系立った理論的な学問であるため、治療の方向性はどの人が診立ててもほぼ同じになります。

次回は「日本漢方と中医学で異なる「虚実」の考え方」をお伝えします。お楽しみに。

※1
傷寒論:中医学の中で重要な地位を占めている四大経典著作の一つで、1800年前(中国後漢末期から三国時代)に張仲景に書かれた古典医学書。内容は伝染性の病気に対する治療法が中心となっている。
※2
鍼灸:身体に鍼(はり)や灸(きゅう)を用いて刺激を与え、治療する医術。中医基礎理論・診断学に基づいて弁証し、経穴(ツボ)を決め、治療する。
※3
湯液:煎じ薬のこと。生薬が複数配合された漢方処方を30~40分弱火で煎じて(煮て)つくる。
※4
推拿:中国伝統医学における鍼灸・湯液・薬膳に並ぶ治療法のひとつ。マッサージとは異なる、中医基礎理論に基づく手技療法。漢方の本場の中国では、湯液・推拿・鍼灸などの伝統医学が最新の病院施設の中で、西洋医学と併用して行われる。
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傷寒論:中医学の中で重要な地位を占めている四大経典著作の一つで、1800年前(中国後漢末期から三国時代)に張仲景に書かれた古典医学書。内容は伝染性の病気に対する治療法が中心となっている。
※2
鍼灸:身体に鍼(はり)や灸(きゅう)を用いて刺激を与え、治療する医術。中医基礎理論・診断学に基づいて弁証し、経穴(ツボ)を決め、治療する。
※3
湯液:煎じ薬のこと。生薬が複数配合された漢方処方を30~40分弱火で煎じて(煮て)つくる。
※4
推拿:中国伝統医学における鍼灸・湯液・薬膳に並ぶ治療法のひとつ。マッサージとは異なる、中医基礎理論に基づく手技療法。漢方の本場の中国では、湯液・推拿・鍼灸などの伝統医学が最新の病院施設の中で、西洋医学と併用して行われる。

中垣 亜希子(なかがき あきこ)

すがも薬膳薬局代表。国際中医師、国際中医薬膳師、管理薬剤師。
薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。
東京薬科大学薬学部卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学、イスクラ中医薬研修塾、国立北京中医薬大学日本校にて中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS 猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。

すがも薬膳薬局:http://www.yakuzen-sugamo.com/

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