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HPVワクチン未接種でも症状‐女子10万人に20人と推計

薬+読 編集部からのコメント

子宮頸癌ワクチン(HPV)の接種後に報告されている疼痛や運動障害などの症状。これと同様の症状が、接種歴のない12~18歳の女子でも人口10万人に20人の割合で見られることが全国疫学調査で判明したということです。この結果を受け、日本産科婦人科学会は「一刻も早くHPVワクチンの接種勧奨を再開することを強く求める」との声明を発表しました。一方、HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団は「多様な症状を有する人の判定基準が不適切」とし、結論は不当と批判しています。

疫学調査結果

 

子宮頸癌ワクチン(HPV)の接種後に報告されている症状と同様の多様な症状がHPVワクチン接種歴のない12~18歳の女子でも人口10万人に20人の割合で見られることが、厚生労働科学研究班の代表者を務める祖父江友孝氏(大阪大学大学院医学系研究科教授)らの全国疫学調査で分かった。昨年12月26日の厚生科学審議会と薬事・食品衛生審議会の合同部会で報告され、HPVワクチンの接種歴がない青少年でも、疼痛や神経障害などの症状を示す人が一定数存在したと結論づけた。

 

調査は、全国の病院の1万8302診療科を対象に、昨年7月1日から12月31日に受診した12~18歳の青少年で疼痛や感覚障害、運動障害などの症状が3カ月以上持続しており、通学や就労に影響がある患者の有無を尋ねたもの。さらに、これらに該当する患者ありと回答した508診療科に対し、多様な症状の臨床疫学像を調査。HPVワクチン接種歴のない青少年で多様な症状があるかどうか検討した。

 

その結果、HPVワクチン接種後に発生したとされる疼痛や運動障害などの症状と同様の多様な症状を示す青少年は、12~18歳の女子全体では10万人に40人、12~18歳の男子でも10万人に20人と推計されることが分かった。

 

HPVワクチンの接種歴がなく、HPVワクチン接種後に報告されている疼痛や運動障害などと同様の多様な症状を示す12~18歳の女子は10万人に20人存在するとの推計が明らかになった。祖父江氏ら研究班は、女子で接種歴のあり、なしでの発生頻度は、母集団の年齢構成が異なることに加え、多くのバイアスがあるために比較できないと結論づけた。

 

合同部会では、委員から年齢分布を考慮した解析などを求める意見が相次ぎ、引き続き研究班で追加解析を実施することを決めた。さらに質の高いデータを集めることで、子宮頸癌ワクチンの安全性を判断したい考え。

日産婦「勧奨再開を」‐弁護団「結論は不当」

 

全国疫学調査の結果報告を受け、日本産科婦人科学会は同日、「これまで訴えてきた通り、わが国においてもHPVワクチンと関係なく、思春期の女性に疼痛や運動障害などワクチン接種後に報告されている多様な症状を呈する方が相当数いることが確認された」と指摘。こうした症状を示す女性の診療に今後も真摯に取り組んでいくとしつつ、「将来、先進国の中でわが国においてのみ、多くの女性が子宮頸癌で子宮を失ったり、命を落としたりするという不利益がこれ以上拡大しないよう、国が一刻も早くHPVワクチンの接種勧奨を再開することを強く求める」との声明を発表した。

 

一方、HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団もコメントを発表。「多様な症状の判定基準が極めて不適切であり、全国疫学調査からは、HPVワクチン接種歴のない人で副反応患者と同様の症状を有する人が存在するとの結論を導くことはできない」と結論は不当と批判した。

 

弁護団は、研究班の結論に対し、多様な症状を有する人の判定基準が不適切であり、HPVワクチン接種歴のない人でも多様な症状を示す人が一定数存在したとの結論を導くことはできないと反論。「仮に接種歴がなく副反応患者と同様の症状を示す人が存在するとしても、調査報告に示された推計値は明らかに過大」と指摘した。

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出典:薬事日報

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