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武田が約7兆円でシャイアーを買収‐世界的製薬企業に仲間入り

薬+読 編集部からのコメント

武田薬品が売上ランキング世界第9位まで浮上します。日本最大級の買収劇として注目され、買収予想額も変動していましたが、約460億ポンド(約6兆8000億円)でアイルランドのシャイアー社を買収します。
武田が155億ドル、シャイアーが151億円と2017年ほぼ同規模の売上だった会社を買収することのリスクも指摘されていますが、これにより、武田はシャイアーの得意とする希少疾患薬を手に入れ、重点領域のうち中枢神経系・消化器疾患の二つの領域を強化すると共に、海外売上比率は80%を超える見込みです。

 

武田薬品がアイルランドのシャイアーを約460億ポンド(約6兆8000億円)で買収する。シャイアーとの合算売上高では約300億ドル超と、世界の製薬企業売上ランキングで第9位に浮上し、日本トップの製薬企業から世界大手製薬企業の仲間入りを果たした。希少疾患薬を獲得し、重点領域のうち中枢神経系・消化器疾患の二つの領域を強化すると共に、海外売上比率は80%を超える見込みだ。米ミレニアム、スイスのナイコメッド買収後は、選択と集中路線による構造改革を進めてきたが、一気に勝負に出た。来年上半期には、買収手続きが完了する予定で、東京本社を維持し、シャイアーという社名を消し、武田がマネジメントしていく方針。

 

世界第9位の企業へ‐希少疾患薬を手中に

 

シャイアーは、世界的な希少疾患薬大手。2015年11月には最大59億ドルで米ダイアックス、16年1月には米バクスアルタを320億ドルで買収するなど、事業規模を拡大していたが、仏セルヴィエに癌事業を24億ドルで売却していた。

 

クリストフ・ウェバー社長CEOは、5月に行われた買収会見で、「戦略転換ではなく、戦略の加速だ」と述べ、成長のために必要な投資だったと強調する。日本企業として過去最大となる約7兆円という買収額を捻出するために、約308億5000万ドルの融資を合わせて、有利子負債は約6兆円に上るが、「一時的には財務は悪化するが、中期的には純利子負債と財務分析指標のEBITDAが2倍以下まで改善する」と、リスクのコントロールは可能との見方を示した。

 

17年売上で見ると、武田が155億ドル、シャイアーが151億円とほぼ同規模で約2倍に膨らむ見通し。EBITDAでは武田が27億ドルであるのに対し、シャイアーは65億ドルと売上全体の約4割と製薬企業の中でも収益性が高く、2社合わせると92億ドルに拡大した。研究開発費も44億ドルに達する。

 

製品ポートフォリオでは、シャイアーの17年度売上の過半は希少疾患領域が占めており、希少疾患・血漿分画製剤ではリーディングカンパニーだ。統合後は、オンコロジー・消化器系疾患・中枢神経系疾患・希少疾患・血漿分画製剤の五つの分野で売上収益全体の75%となる。

 

開発パイプラインでは、武田が第I・II相、シャイアーは第III相が中心で、前期から後期まで相互補完的な開発パイプラインを構築した。武田は第III相・承認申請段階に3品目と手薄なのが課題だったが、シャイアーと合わせると10製品と手厚くなった。

 

事業エリアとして地理的な拡大も期待できる。特に世界最大の米国市場を強化する。70カ国以上で事業展開を進めてきた武田だが、日本と米国の売上比率が34%と同じ水準だった。米国売上が全体の6割を占めるシャイアーの貢献で、統合会社の地域別売上で米国が48%、日本が19%と海外売上比率は81%まで高まる見通しだ。

5回目の提案で合意‐構造改革から一気に攻めへ

 

シャイアーの買収合意までには、紆余曲折があった。武田は、3月29日にシャイアーに対する買収検討を認める声明を発表。「初期の調査段階での検討」としており、買収提案は行っていなかった。4月12日にはシャイアーへ買収提案を行ったが、申し出を拒否され、計5回の買収提案により、ようやく合意にこぎつけた。

 

武田がこれまでに買収してきた企業で見ると、08年に88億ドルを投じた米ミレニアムが最初の大型買収となる。癌のパイプラインを強化し、バイオ医薬品の研究開発に参入するのが狙いだった。その後、11年には137億ドルでスイスのナイコメッドを買収し、欧州や新興国でのエリア強化を図った。

 

12~13年は、痛風治療剤「コルクリス」の獲得目的で米URLファーマ、ブラジルでのプレセンス強化を目的としたマルチラブ、ワクチン強化を対象とした米リゴサイト、探索研究強化を目的とした米エンボイ、ワクチン強化で米インビラージェンと、開発品獲得や新興国市場強化を目的に小規模の買収を行った。

 

14~16年は、武田にとって構造改革を進める再出発の時期となった。クリストフ・ウェバー氏が、外国人社長として招聘されたのも14年であり、選択と集中路線にシフトした。15年末に英アストラゼネカに呼吸器事業、さらに昨年末には富士フイルムに診断薬子会社「和光純薬工業」の売却を発表し、▽中枢神経系疾患▽消化器系疾患▽癌――の3領域に絞り込みを図った。さらに、自前主義から脱却して自社の研究拠点を集約し、他社とのパートナーシップを活用するオープンイノベーション戦略に転換してきた。

 

そして17年には再び攻めに転じて、抗癌剤のパイプラインを強化するため、米アリアド・ファーマシューティカルズを52億ドルで獲得。25年に癌でトップ10入り、血液癌でトップ5入りを目指す戦略を打ち出し、今後の動向が注目される中、製薬業界でも指折りの収益力を持つシャイアーを買収した。

 

武田の18年3月期決算は売上が前期比2%増で、潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」は約40%増の2014億円と2000億円を突破し、抗癌剤「ニンラーロ」も大幅に拡大している。しかし今年度は、主力の抗癌剤「ベルケイド」の特許切れに直面し、減収を計画している。シャイアー買収により、製品ポートフォリオや必要なパイプラインを強化する。

 

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出典:薬事日報

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