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後発品使用促進、情報誌を全薬局に配布‐全国初、対象を医療機関に拡大も

薬+読 編集部からのコメント

協会けんぽ(全国健康保険協会)静岡支部が、レセプトのデータを使った新事業を進めています。
県内1700薬局のデータを集計し、後発品使用促進への取り組み状況を掲載した情報誌「ジェネリック通信(GE通信)」を発行、全薬局に送付しました。同時に各薬局の課題も分析し、情報提供を行います。
他の薬局と比べた時の自分の薬局の状況が分かり、課題が把握しやすくなる見込みです。
処方箋集中率と後発医薬品の割合、一般名処方率と後発医薬品の割合、技術料と薬剤料による収益構造比較、県内・二次医療圏の後発医薬品体制加算算定状況、かかりつけ薬剤師指導料算定状況などが記載されており、受け取った薬局の8割が「また情報誌を受け取りたい」とアンケートに回答しています。

協会けんぽ静岡支部がパイロット事業

協会けんぽ静岡支部の職員、左から2人目が長野支部長
協会けんぽ静岡支部の職員、左から2人目が長野支部長

 

主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)静岡支部では、所有する膨大なレセプトデータを用いて、県内1700薬局の後発品使用促進への取り組み状況を客観的に示した情報誌を全薬局に送付すると共に、各薬局が後発品促進にどのような課題を抱えているかなどを分析し、全薬局に情報提供を行う取り組みを進めている。自薬局の立ち位置を明確にし、課題を浮き彫りにすることで、より後発品を調剤しやすい環境を整えることを目的としたもの。昨年度のパイロット事業で、静岡支部にだけ本部から予算措置が行われた。これまで、後発品の使用促進に向けた保険者の取り組みとしては、被保険者への差額通知の配布くらいしかなかったが、支払側から診療側への能動的なアプローチは全国でも例がなく、注目を集めそうだ。


同支部では、医療者側への働きかけができないか検討していたところ、医療機関から変更不可の処方箋が出されない限り、後発品を調剤する役割を担っている薬局に目をつけ、県内全ての薬局に「ジェネリック通信」を配布することを思いついた。

 

GE通信では、レセプトデータから、各薬局の▽処方箋集中率と後発医薬品の割合▽一般名処方率と後発医薬品の割合▽技術料と薬剤料による収益構造比較▽県内、二次医療圏の後発医薬品体制加算算定状況▽かかりつけ薬剤師指導料算定状況――などを明らかにした上で、県内平均と比べてどの位置にいるかを示している。

 

例えば、技術料と薬剤料による収益構造比較で、収益の大部分を薬価に依存している薬局が明らかになった場合、「昨今は、先発品の薬価に頼った薬剤料主体の収益モデルから、後発品の調剤を進め、下がった薬価収益を各種加算を算定するなど、技術料でカバーするバランス型の収益モデルへ構造が移行しつつある」などとアドバイスしている。

 

長野豊支部長は、「薬局経営者にとっては、後発品を推進した結果、収益が上がるかどうかが課題となる」ため、後発品の調剤を働きかけるに当たって、「経営戦略面でプラスになる方法を示す必要があると考えた」と話す。

 

GE通信では、協会けんぽの加入者で使用された実績のある後発品のリストも作成し、配布している。県内の医療機関で処方量の多い先発品50品目の後発品(調剤実績上位3品目)を掲載。五十音順で検索できるようになっており、後発品を積極的に調剤する上で課題となる「在庫問題」の解消に一役買っている。

 

既に昨年11月と今年3月に、県内1700薬局に送付したが、薬局へのアンケート調査では、また情報誌を受け取りたいと回答した薬局が8割を超えるなど、「好意的に受け止めている」という。薬局側にとっても「自分たちがどの位置にいるかが分かるメリットは大きい」ようだ。

 

県内の薬局や医療機関が後発品の促進にどのような課題を抱えているかについての分析も行っている。薬局別にレセプト数量規模と後発品の割合を分析した結果では、後発品の調剤割合が低い上に、数量規模が大きいため、全体を引き下げる要因になっている薬局が一目で把握できる。

 

医科レセプトと調剤レセプトを紐づけできるため、薬局がどこの医療機関からどのような処方箋を受けているか、また、変更不可の処方箋の発行状況などが分かるため、薬局側と医療機関側のどちらに原因があるのかも分かってしまう。

 

こうした薬局や医療機関に対しては、情報提供すると共に、直接訪問するなどして「働きかけ」を行っている。

 

GE通信の配布前と後を比較すると、後発品の使用割合が増え、「一定の効果が見られた」という。パイロット事業の効果額については、事業にかかった経費を単月レベルで上回っている状況だという。同支部では今後、パイロット事業の対象を医療機関にも広げるべく、準備をしているという。

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出典:薬事日報

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