薬剤師の転職を成功に導く「自己PR」の書き方とは‐アピールポイントや例文も紹介
採用に一歩でも近づくためには、書類によるアピールが欠かせません。中でも、歴書に書く自己PRの内容は、面接に進みやすくするための重要なきっかけになります。どんなに経歴が魅力的でも、自慢話だけの自己PRでは相手の心をつかむことは難しいでしょう。
「この人なら会ってみたい!」と思わせる自己PRの書き方について、お伝えします。
目次
1.自己PRの役割
自己PRの役割は、2つあります。まずは、応募者が企業の必要としている人材であると伝える役割です。そのため、自己PRでは、応募先の企業で生かせる経験やスキル、自分の強みや特性などを明示し、自分を売り込むための大切な材料にしましょう。
一方、企業の採用担当者にとって、自己PRは応募者を深く知るための手段として、非常に重要な役割を果たします。応募者の強みや仕事で大切にしていることが「募集している仕事に生かせるか」「求める人物像に合っているか」を確認し、入社後に活躍できる人材かどうかを見極める必要があります。
採用担当者は、資格や職務経歴だけでは分からない部分も含めて、総合的に人物を評価します。そのため、より魅力的な自己PRが求められます。
2.担当者が自己PRで重視していること
書類を作成する上で意識したいのが、採用担当者の視点です。多くの書類をチェックする担当者は、応募者の自己PR文から何を基準にして、二次審査に進めるのでしょうか。
2-1.職場への適性・定着性があるか
採用担当者は、できることなら職場に定着し、スキルを生かしながら長く働いてほしいと考えています。そのため、重視されるのが職場への適性や定着性です。
適性がない人材を採用してしまうと、将来的な離職のリスクが高まるだけでなく、本人はもとより、周りのスタッフや患者さんにとっても不利益を生み出してしまいます。
コミュニケーション能力や柔軟性、これまでの経験や実績など、面接時だけでなく自己PRの文章においても、そうした適性をチェックされます。定着性のある人材であるかを判断されていることを覚えておきましょう。
2-2.人間性や人柄・雰囲気が職場に合いそうか
単なる経歴の羅列とは違い、自己PRの文章からは、応募者の人間性や人柄、嗜好(しこう)や趣味などが読み取れます。
職場内の雰囲気に合う人物かどうか、チームとしてコミュニケーションが取りやすいかどうかなど、一緒に働きたいと思える人材が求められます。
2-3.職場で活躍・貢献してくれる人物か
応募者が職場で活躍し、会社に貢献してくれるかどうかということも、チェックされるポイントとなります。
例えば、調剤薬局であれば、かかりつけ薬剤師としての活動経験があれば、加算点がつく可能性が高まり、薬局そのものへの利益につながります。
MR職であれば、医療業界に人脈が広いことをアピールすると、かなりの強みとなるでしょう。
3.自己PRを書く前にやっておくべきこと
自己PRを書く前には、転職を成功に導くために、押さえておくべきポイントを明確にすることが必要です。以下に示すポイントについて、細かくチェックしておきましょう。
3-1.自己分析を行う
自己PRを書くためには、自分自身をよく知っておく必要があります。自分の目的や将来像を明確にし、長所だけでなく短所についてもしっかりと分析をしながら、アピールできるポイントを絞っていきましょう。
まずは、転職に至ったきっかけや、その応募先を選んだ理由について、明確な答えを出しておくことが大切です。きちんとした根拠に基づいた転職活動を進めていれば、PRすべき点も見えてきます。
また、自己分析の結果、転職先に必要とされるスキル面で、不足している能力があることに気づく場合もあるでしょう。そんなときは、今後どのように改善していくのかなど、補っていくための解決策を考えながら、PRの中に盛り込むことが大切です。
薬剤師の転職に役立つ自己分析の手法についてはこちらの記事をご参照ください。
3-2.情報収集や業界・企業研究を行う
次に、情報収集や業界・企業研究を行うことが大切です。
まずは、調剤薬局や病院、ドラッグストア、製薬会社など、転職先候補の業界の情報を広く収集して、把握します。具体的には、厚生労働省などの最新統計をチェックする、各業界にまつわる新聞や専門誌を読むなど、幅広い情報収集を心がけましょう。
続いて、転職を考えている業界や企業の状況を把握するために業界・企業研究を行います。
業界研究では、それぞれの業界の将来性・成長度、安定性などを検討し、企業研究では各企業の具体的な仕事内容や残業、評価制度などを、自分の働き方やキャリアプランと関連づけてチェックします。
各企業のホームページはもちろん、転職サイトやニュースサイトなどの情報もチェックし、複数企業をさまざまな共通の軸で比較することで、希望する企業の特徴や強み・弱みを理解しましょう。
なお、転職エージェントを利用すれば、担当のキャリアアドバイザーが無料で一般公開情報にはない業界や企業のニーズや本音を教えてくれます。あなたの業界・企業研究のアドバイザーとして、転職エージェントを活用するのもおすすめです。
3-3.今までの経験やスキルを洗い出しておく
まずは、今まで経験した仕事を洗い出しましょう。他の人と差別化できるような仕事内容があれば特記しておきます。
次に、管理薬剤師や店長、エリアマネージャーなどの役職経験を書き出し、どのようなリーダーシップを発揮したのか、どのような成果を残したのかも振り返りましょう。
また、これまでの業務の中で、特に評価された経験を洗い出しておくことで、自分が興味のあることや、人より優れている部分がどこにあるのかを明確にできます。
さらに、自分が今まで勉強したこと、スキル向上のために特別に努力したことも思い返してみましょう。特に専門性を高めるために努力してきたことがあれば、振り返っておきます。
以上のポイントを洗い出し、求人先に合わせて、どこを強調して説明すると、自分の良さが客観的に伝わりやすいかを考えておきましょう。
3-4.業種別に重視しているポイントを把握しておく
応募時に提出する自己PRですが、その内容をどの程度重視しているかは、求人先によって異なります。
ここでは、業種別に重視しているポイントを紹介しますので、自己PRを作成する際に参考にしてみてください。
3-4-1.調剤薬局
調剤薬局では患者さんと接する機会が多いため、自己PRではコミュニケーション能力があることを伝えるとよいでしょう。
難しい医療用語を、患者さんが理解できる言葉で分かりやすく伝えられるかどうかが、チェックされやすいポイントです。調剤薬局は地域に根ざした存在ですから、地域医療に貢献する意欲を伝えるのもアピールの1つになります。
3-4-2.ドラッグストア
ドラッグストアでは、OTC医薬品や日用品・サプリメントなど、さまざまな商品を扱っているため、薬剤師には幅広い知識が求められるのが特徴です。接客やセールスの技術も必要になるので、それらの能力を裏付ける経験があれば、ぜひ自己PRに記載しましょう。
クレームや問い合わせへの対応業務もあるので、コミュニケーション能力もアピールポイントになります。
3-4-3.病院
病院での勤務には、医療に関する専門知識が求められます。過去の経験から得た専門知識があれば大きなアピールポイントになるでしょう。さまざまな患者さんと接するので、接遇態度が良い点も重要です。
また、看護師や医師などとチームを組んで働くことになるので、チームのメンバーとして働いた経験がある場合は自己PRに生かせるでしょう。
3-4-4.製薬会社
製薬会社などの企業に応募する場合は、一般的なビジネススキルをアピールするのも大切になります。企業ごとに求める人物像が異なるため、自分の強みの中からその企業に合うものを選ぶようにしましょう。
また、企業ごとに、注目されるPRポイントは異なるため、求められる人物像を思い描きながら、自己PRを書く前に材料となるアピールポイントをまとめてみてください。
4.薬剤師の自己PR作成の流れ
次に、薬剤師の転職活動において、どのように自己PRを作成していけばいいのか、そのポイントを見ていきましょう。
4-1.自身の強みや長所をアピールする
まず、自己分析や転職希望先の情報をもとに、自分の強みや長所など、伝えたいアピールポイントを記載します。最初にアピールすべきポイントを述べることによって、採用担当者にも理解してもらいやすくなります。
例えば、調剤薬局を志望している方なら、コミュニケーション能力に優れていること、病院を志望している方であれば、医療全般に対する高い専門性と知識習得への意欲、チーム医療の経験などをアピールするとよいでしょう。
4-2.具体的なエピソードを盛り込む
自己PRを採用担当者に納得してもらうためには、アピールポイントの根拠が必要です。これまでの職場での成功体験はもちろん、失敗体験によって学んだことや成長したことなど、具体的なエピソードを盛り込むこともポイントになります。
例えば、調剤薬局を志望している方の場合であれば、「前職では調剤薬局の管理薬剤師の業務とともに、シフト管理や業務の分担管理、適正な在庫管理も担い、円滑な店舗運営に貢献しました」などのエピソードを入れるとよいでしょう。
4-3.企業でどのように生かせるか、貢献できるのかを伝える
自己PRでは、アピールポイントを伝えるだけでは不十分なため、今後の業務への生かし方や貢献の度合いも、あわせて伝えることが大切です。
「前職では〇年間調剤・投薬業務に従事していたので、入局後すぐに調剤薬局業務を行うことができます」「MRとして医師へ粘り強くPRを行った結果、自社医薬品の新規採用を獲得し、担当先の実績を〇倍に伸ばすことができました」というように、自分を採用することによって、職場にどのような良い影響を与えるのか、どのように活躍できるかなど、採用担当者に入社した後のイメージを持ってもらえるよう意識しましょう。
また、職場への貢献をアピールするため、具体的な成果の数値を交えると、説得力が増します。
5.【業種別】自己PRのポイントや例文
履歴書に書く自己PRの文章は、どの応募先でも使い回せるわけではありません。転職先の候補となる業種に合わせて、注目されるアピールポイントと例文をご紹介します。
5-1.調剤薬局へは「コミュニケーション能力」をアピールする
調剤薬局への勤務において、特に求められるのは、コミュニケーション能力です。患者さんと接する機会が多い調剤薬局では、患者さんとの信頼関係を築きながら、スムーズに対話できるスキルが重視されます。
過去にあった患者さんとのコミュニケーション例や、エピソードを交えたアピール文章を考えてみましょう。また、在宅医療に力を入れている調剤薬局であれば、そうした分野への興味関心があることも、注目されるPRポイントになります。
例文)
「私は、患者さんとの日ごろのコミュニケーションから、困り事を察したり、いつもとの変化に気づいたりすることが得意です。
ちょっとした会話や表情の変化などからきっかけを見いだし、薬剤の説明や生活指導に活用しています。前職においては、◯名の患者さんから、かかりつけ薬剤師にご指名いただくことができました。
貴社においても、この強みを生かして円滑なコミュニケーションを図り、患者さんからの信頼を得て、かかりつけ薬剤師としてサポートしていきたいと考えています」
5-2.ドラッグストアへは「幅広い業務への意欲」をアピールする
ドラッグストアは、調剤業務に限らずOTC医薬品の取り扱いなどもあり、幅広い業務があります。一般的な調剤薬局ではなく、ドラッグストアを選んだ理由として、そうした業務への意欲をアピールするのもよいでしょう。
また、患者さんだけでなく、一般のお客さまを対象にすることから、コミュニケーション能力や接客力も触れておきたいところです。接客業の経験があれば、良いアピールポイントとなります。
例文)
「私は、ドラッグストアで4年間勤務する中で、OTC医薬品などについて相談を受け、ご提案を行ってきました。
お客さまのために商品を選ぶという業務はドラッグストアならではの仕事であり、非常に大きなやりがいがあると感じています。OTC医薬品やサプリメントを通じた健康サポートにさらに力を入れたいと考え、サプリメントアドバイザーの資格も取得しました。
薬剤師としての知識や経験を生かし、調剤業務のみに限らず、OTC医薬品の販売も通して、お客さまの健康サポートを行いたいと思っています」
5-3.病院へは「医療全般に関する専門知識」をアピールする
病院薬剤師として働くためには、薬剤だけでなく、医療全般に関わる専門知識が求められます。
過去の経験から病院勤務に必要な知識があれば、大きなアピールポイントとなります。
これまでに病院勤務の経験がないのであれば、現在学んでいる内容や、今後のスキルアップに対する取り組みなどをまとめるとよいでしょう。
また、チーム医療に対応できるコミュニケーション能力も求められるため、チームプレーの経験について、自己PRで触れておくこともおすすめです。
例文)
「私は、前職でのチーム医療を通じて培った、コミュニケーション能力や他部署との調整力が強みです。
感染制御認定薬剤師の資格を取得しており、前職では感染制御チーム(ICT)の立ち上げからメンバーとして関わりました。
看護師や医師と協力して、感染制御のマニュアルを整備するなど新しい試みを行い、血流感染症の発症を減らしたり、広域抗菌薬の使用量を減らしたりするなどの成果を得ることができました。
慢性期病院では急性期病院と異なる点も多いとは思いますが、貴院においてもICTの立ち上げに関わった経験を生かしたいと考えています」
5-4.企業への転職は「ビジネススキル」もアピールポイントに
企業では、高度なスキルや専門知識を身に付けていることも、大きなアピールポイントとなりますが、同時に伝えておきたいのが「ビジネススキル」についてです。
他業種から企業へ転職する場合、ビジネスパーソンとしてのスキルは欠かせないものの一つといえます。新卒者であれば、研修で学ぶこともできますが、中途採用の場合には、ある程度のビジネススキルがあることもアピールしておきましょう。
例文)
「私の強みは、幼いころから続けてきたサッカーで培われた粘り強さとコミュニケーション能力です。
MRとして勤務する中で、医療スタッフの方々が疑問に感じた点について深く調べ、情報提供することを繰り返し行ってきました。それにより、医薬品に関するパートナーとして信頼を得ることができました。
薬剤師の資格を持つMRとして、担当分野のガイドラインや治療法を理解し、実際の臨床に即した情報提供をするように心がけています。デメリットとなり得る点もしっかり情報提供したことで、医師からも一定の評価を得て、実績を◯倍に伸ばすことにつながりました。
貴社は、循環器疾患の治療薬開発に力を入れていると伺いました。循環器領域は現在、新薬も多く、競合の多い分野であると感じています。持ち前の粘り強さで、貴社に貢献できると考えています」
6.自己PRを書く際のポイントや注意点
自己PRを書く際には、特に以下の3つに注意が必要です。自分をアピールして採用を勝ち取るためには、マイナスになるようなポイントを極力避ける必要があります。できるだけ、自分の魅力をアピールできるような自己PRを作成するよう、心がけてください。
6-1.志望動機と矛盾がないようにする
自己PRは、志望動機と矛盾がないようにすることが大切です。志望動機では、「病院の薬剤師としての知識や経験を生かし、新しい知識も身に付けながら、スピーディーな対応を図っていきたいと考えております」と述べているのに、自己PRでは「コツコツと作業するのが得意」と書いてある場合、志望動機と自己PRが矛盾していて、一貫性がないという評価につながりかねません。
自己PRで伝えた強みによって、志望動機にある目標やビジョンが達成できるという筋を通すようにしましょう。
6-2.企業ニーズに合わせてアピールする
志望する企業がどのような人物を求めているかというニーズをつかみ、それに合わせた自己PRを作成することも重要なポイントです。
例えば、地域密着型で親しみやすい経営スタイルのドラッグストアであれば、「これまで培ってきた人間関係をスムーズにするコミュニケーションスキルを生かして、企業理念である「まごころあふれるドラッグストア」に貢献できればと考えています」 というようにアピールしましょう。
6-3.ネガティブなワードは使わない
自己PRでは、ネガティブな言葉を使わないことも重要なポイントです。
例えば、「さまざまな人と接するのが苦手」な場合、そのまま自己PRに書いてしまうとマイナスな印象を与えてしまいますが、「患者さんの話をじっくり聞いて説明することで信頼していただき、かかりつけ薬剤師の指名を〇名いただけた」など、前向き言葉に置き換えると、印象はよくなります。
7.まとめ
自己PRは求職者から採用担当者に、自分の強みや長所をアピールするためのものです。転職活動で自分の強みを伝える際は、相手に関心を持ってもらえるようなポイントを意識してみましょう。
自分を知ってほしいという気持ちも大切ですが、ネガティブな内容になるのはNGです。前職に対する不満や、現状への不安感ばかりが目立ってしまうと、イメージダウンにつながりかねません。
自己PRを作成する前にやっておくべきこと、自己PRを書く際のポイントや注意点をしっかりとチェックし、アピール度の高い自己PRを作成してみましょう。
初めて転職活動を行う方や、書類作成に不慣れな方であれば、プロの手を借りるのも一つの手になります。
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