薬剤師の有効求人倍率はどのくらい?都道府県別の偏在状況を解説

厚生労働省が公開している「一般職業紹介状況」によると、薬剤師を含む職業分類の有効求人倍率は2~3倍で推移しており、売り手市場が続いています。しかし、将来的に薬剤師が過剰になるという予測もあり、需給状況が変化する中で、薬剤師は「求められる薬剤師像」に近づくためのスキルアップを続ける必要があるでしょう。
本記事では、有効求人倍率の概要や薬剤師の有効求人倍率の推移について解説するとともに、都道府県別の薬剤師の偏在状況、薬剤師の需給予測などをお伝えします。加えて、これからの薬剤師に求められることについても見ていきましょう。
目次
1.薬剤師の有効求人倍率
厚生労働省では、ハローワークの求人・求職・就職状況を取りまとめて、求人倍率などの指標を作成しています。一般職業紹介状況として公表されており、薬剤師は専門的・技術的職業従事者の「医師・歯科医師・獣医師・薬剤師」に分類されています。
ここでは、有効求人倍率について解説するとともに、薬剤師の有効求人倍率の推移を紹介します。
1-1.有効求人倍率とは
有効求人倍率とは、「有効求人数」を「有効求職者数」で割って算出した値のことです。それぞれの用語の意味と計算方法は、以下のとおりです。
| (月間)有効求人数 | 前月からの繰り越し求人数 + 当月の新規求人数 |
|---|---|
| (月間)有効求職者数 | 前月からの繰り越し求職者数 + 当月の新規求職者数 |
| 有効求人倍率 | 有効求人数 ÷ 有効求職者数 |
| 有効求人倍率の計算例 | 有効求人数:120件、有効求職者数:100人 → 有効求人倍率:120÷100=1.20倍 |
有効求人倍率は「仕事の数(求人数)」と「仕事を探している人の数(求職者数)」のバランスを示す指標です。1.0倍を上回ると「求人数の方が多い」、下回ると「求職者の方が多い」ことを意味します。
1-2.薬剤師の有効求人倍率の推移
前述のとおり、一般職業紹介状況として公開されている有効求人倍率のデータは、医師・歯科医師・獣医師・薬剤師を一括りとしています。薬剤師だけの有効求人倍率ではありませんが、ここでは目安として「医師・歯科医師・獣医師・薬剤師」の有効求人倍率を紹介します。
一般職業紹介状況の有効求人倍率は、パートを含んだ値と含まない値が公表されています。パートを「含む」「除く」場合の有効求人倍率は以下のとおりです。
| 区分 | 2021年3月 | 2022年3月 | 2023年3月 | 2024年3月 | 2025年3月 |
|---|---|---|---|---|---|
| パート含む | 2.04倍 | 2.03倍 | 2.17倍 | 2.41倍 | 2.30倍 |
| パート除く | 2.82倍 | 2.86倍 | 3.05倍 | 3.38倍 | 3.24倍 |
医師・歯科医師・獣医師・薬剤師の有効求人倍率は2~3倍で推移しており、求職者数よりも求人数が多い状況が続いています。また、「パート含む」よりも「パート除く」の方が、有効求人倍率が高くなっていることから、正社員として働ける人が求められている傾向にあることが考えられます。
2.薬剤師の都道府県別の偏在状況
都道府県別の薬剤師の過不足を数値化したデータとして、薬剤師偏在指標があります。ここでは、薬剤師偏在指標について解説するとともに、都道府県別の薬剤師の偏在状況を紹介します。
2-1.薬剤師偏在指標とは
薬剤師偏在指標とは、「調整薬剤師労働時間」を「病院・薬局の推計業務量」で割った値です。
目標偏在指標は1.0のため、薬剤師偏在指標が1.0より小さい場合は薬剤師不足の傾向にあり、大きい場合は薬剤師が充足していると判断できます。
2-2.都道府県別の薬剤師の偏在状況
厚生労働省が2023年に公開した資料によると、都道府県別の薬剤師偏在指標は、次の都道府県以外は1.0以下とされています。
| 都道府県 | 薬剤師偏在指標 |
|---|---|
| 東京都 | 1.28 |
| 神奈川県 | 1.12 |
| 兵庫県 | 1.10 |
| 福岡県 | 1.10 |
| 広島県 | 1.07 |
| 大阪府 | 1.06 |
| 宮城県 | 1.04 |
特に薬剤師偏在指標が低い都道府県は、以下のとおりです。
| 都道府県 | 薬剤師偏在指標 |
|---|---|
| 福井県 | 0.74 |
| 青森県 | 0.78 |
| 富山県 | 0.80 |
| 山形県 | 0.81 |
| 鹿児島県 三重県 宮崎県 |
0.82 |
| 大分県 | 0.83 |
| 秋田県 | 0.84 |
政府は、2036年を目標に薬剤師の偏在解消を目指して、薬剤師確保計画ガイドラインを作成しています。
2036年には多くの都道府県で薬剤師偏在指標が1.0を超え、1.0以下となるのは13県と推計されており、多くの都道府県で薬剤師不足が解消される見通しとなっています。
3.薬剤師の需給が変化すると推測される要因
厚生労働省の推計によると、2030年頃までは薬剤師の需給は同程度で推移するものの、それ以降は供給が需要を上回り、薬剤師が過剰になると予測されています。
参考:薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会(とりまとめ(今後の検討課題))|厚生労働省
将来的に薬剤師が余ると予測されている理由として、日本の人口減少や薬剤師の業務内容の変化による影響が挙げられます。ここでは、将来的に薬剤師の供給が需要を上回ると推計される具体的な要因についてお伝えします。
3-1.投薬対象者数の減少
日本の人口減少や65歳以上の高齢者の割合を踏まえて推計すると、2020年から2045年までに、薬局における投薬対象者数は11.3億人から10.9億人に減少するとされています。投薬対象者の減少は、薬局薬剤師の需要低下につながります。
3-2.処方箋枚数の変動
投薬対象者数をもとに、薬局で応需する処方箋枚数を推計すると、2030年頃までは増加傾向となることが見込まれています。これは、院外処方箋の発行の増加や、高齢化の進展による影響が大きいことが要因です。2030年以降は、人口減少とともに処方箋枚数も緩やかに減少することが予測されています。
3-3.業務内容が変わることによる需給への影響
薬局薬剤師の業務は、対物業務から対人業務へとシフトしています。さらに、在宅医療への参画も推進されており、薬局薬剤師の業務内容は大きく変わろうとしている状況です。厚生労働省が公開している推計では、将来的な薬局薬剤師の業務量の変化を、以下のように仮定しています。
| 業務内容 | 業務量 |
|---|---|
| 外来業務 | 2045年まで0.9~1.1倍 |
| 在宅業務 | 2045年までに2倍 |
| 健康サポート機能に係る業務 | 1.5倍 |
| その他の業務 | 1.0倍 |
また、病院薬剤師の業務量の変化については、以下のように仮定しています。
| 業務内容 | 業務量 |
|---|---|
| 高度急性期病床の業務 | 2045年までに1.3倍 |
| 急性期病床の業務 | 2045年までに1.2~1.5倍 |
| 回復期病床の業務 | 1.1倍 |
| 慢性期病床の業務 | 1.1倍 |
薬局薬剤師・病院薬剤師ともに、あくまで単純な仮定条件とされているものの、今後薬剤師の業務の幅が広がり、業務量が増加すると、薬剤師の需要は高まる可能性があります。しかし、業務量は変わらず薬剤師の供給が増え続けると、薬剤師の人数は需要に比べて過剰になっていくでしょう。
4.これからの薬剤師に求められることとは?
これからの薬剤師に求められることについて、病院薬剤師と薬局薬剤師に分けて説明します。
4-1.病院薬剤師に求められること
病院薬剤師は、薬剤師の職能を十分に発揮できる以下のような業務を担うことが求められています。
- 効能や副作用の発現状況、服薬状況に合わせた処方提案や服薬指導、処方支援
- 病棟や手術室への薬剤の払い出し、残薬の回収、注射薬の調製
- プロトコールにもとづいた投与量・方法・期間・剤型などの処方変更
- 患者さんの入退院時における、薬局や介護施設などとの連携
今まで、医師や看護師などの医療従事者が行っていた業務の一部を薬剤師が担い、チーム医療の中核としての役割を強化することが求められています。
また、調剤機器やICTの活用による業務の効率化を行い、対人業務の幅を広げることも大切です。病院薬剤師が担う業務を広げていくことが、薬剤師の需要の増加につながります。
4-2.薬局薬剤師に求められること
薬局薬剤師は、服薬指導や服薬状況の確認、処方支援など患者対応を強化するとともに、健康相談やOTC販売、感染症流行への対応など健康サポート機能を充実させることが求められます。軽度な体調不良やセルフメディケーションの支援を薬局薬剤師が行うことで、医療機関と役割を分担することが期待されています。
また、電子処方箋やオンライン服薬指導の対応、医療・介護関係者との連携などについて、ICTを活用して効率化するとともに、医療の安全を担保しながら質の維持・向上ができるように業務改善をすることも大切です。ICTを活用して調剤業務を実施することは、薬剤師の業務負荷を軽減することに加え、ヒューマンエラーの防止につながります。そのためにも、薬局薬剤師はデジタル技術の知識やスキルを向上させる必要があるでしょう。
合わせて、薬局薬剤師は、感染症の流行や災害時などの有事に、地域の公衆衛生を守るための活動ができるよう、平時から地域医療に参画する必要があります。健康増進や予防医療に関する情報提供・啓発活動も薬局薬剤師に求められる役割です。
5.変化する環境の中で薬剤師に求められる役割
薬剤師を含む職業分類の有効求人倍率は、長らく高水準で推移しており、売り手市場が続いています。しかし、人口減少やICTの導入による業務の効率化などによって、将来的には薬剤師の供給が需要を上回る「買い手市場」へと移行する可能性も指摘されています。
そのような状況の中で薬剤師が今後も必要とされる存在であり続けるためには、「求められる薬剤師像」に近づくためのスキルアップと役割の再定義が不可欠です。
薬剤師は、ICTや在宅医療への対応力などを磨き、変化する需給環境に柔軟に対応しながら、地域医療の未来を担う専門職として、進化を続けることが求められています。
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