薬剤師のためのお役立ちコラム 更新日:2016.10.25公開日:2015.06.23 薬剤師のためのお役立ちコラム

薬剤師もオンラインビジネスへ! アメリカで処方薬の新サービス開始

アメリカに患者さんの便宜を追求した、オンライン薬局が誕生しました

アメリカのニューハンプシャー州に、新しい薬局「PillPack」がオープンしました。オンラインで全国から処方せんを受け付け、一包化された薬を患者さんの家に届けるというサービスが特徴です。

アメリカ人と処方薬の実態

アメリカでは、人口の約10%にあたる3,200万人が5種類以上の処方薬を服用しているといわれています。また、2005年に医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』で発表された研究結果によると、薬を飲んでいるアメリカ人の約半数が適切な用法・用量を守れていないとのこと。その原因としては、薬の手配が面倒であることや、飲むべき薬が多くて把握しづらいことなどが考えられます。
アメリカで処方せんが必要な薬をもらう場合、医師の診療を受けたうえで処方される薬について聞き、受け取った処方せんを家の近くの薬局へ持っていく、という流れが一般的です。ところが、田舎では薬局があまりに遠かったり、都会では薬の受け取りに並ぶ時間が取れなかったりという不便が多々あります。
とはいえ、患者さんが服薬指示を守るかどうかは命に関わる問題。そんななか、考え出されたのが「PillPack」です。飲むべき薬を日時ごとにひとまとめにして、薬局で入手する場合と同じ料金で各患者さんの家まで届けます。

薬剤師の息子が考えた新しいビジョンと取り組み

薬を飲む日時ごとに仕分けした状態で提供するというアイデアは、新しいものではありません。2006年にはワシントンD.C.のウォルター・リード陸軍医療センターで同じアイデアが試され、服薬率が61%から97%に上がったとか。また、薬の発送サービスを既に取り入れている薬局もあります。しかし、「PillPack」は、それら両方の複合サービスを送料込みで提供するという点がセールスポイントです。
「PillPack」の共同創設者であり、同社のCEOも務めるT.J.パーカーさんは、薬局を営む薬剤師の息子として生まれました。少年時代は父親の仕事を手伝い、寝たきりなどで家から離れられない人々に薬を届けて回ったといいます。その経験が、ビジネスを立ち上げる情熱につながったのかもしれません。
いまや「PillPack」は47州(50ある州のうち、オクラホマ州、ルイジアナ州、オレゴン州を除く)でライセンスを取得。66名が働く薬局となっています。また、スマートフォンの普及に着目し、現代人のライフスタイルに合わせた取り組みに力を注いでいるとか。利用登録や各種手続きがインターネットで行えるほか、現在は薬を飲む時間を知らせるアプリも開発中です。

服薬日時ごとにパックされた薬を届ける新サービス

「PillPack」では大型調剤機器を導入しているものの、珍しい薬の調剤は手で行われています。また、それぞれの薬はバーコード管理され、機械と人間の両方で確認を行っているとのこと。そんなハイテク薬局の基本的なサービスの流れは、以下のとおりです。

  • 患者さんが自分で処方せんの内容を入力することで、薬の申込みをオンラインで受け付け(患者さんが既にほかの薬局を利用している場合は薬局変更手続きを行う)。
  • 処方元の医師に「PillPack」のスタッフが直接連絡し、処方内容を確認。また、患者さん個人の医療保険を確認した後、服薬開始日を確定し調剤。
  • 一包化された薬を、そのほかの薬(目薬や吸入器など)や、それぞれの薬の写真と名前、用法・用量が印刷されたリストとともに患者さんの自宅へ発送。
  • 患者さんは小袋上にそれぞれ記載された日付、曜日、時間(どの薬が何錠入っているかも記載されている)を確認し、毎回その小袋内の薬をすべて服用する。

薬の発送は、原則として2週間ごと。薬剤師は、服薬期間の終了前に医師と連絡を取り、期間延長や変更などについて確認します。そして、必要に応じて追加の調剤と発送を行うため、患者さんが服用すべき薬を切らせることはありません。なお、各患者さんの質問には、薬剤師がEメールと電話で対応しているそうです。
 
患者さんに服薬指導の内容を守ってもらうことは、薬剤師にとって大きなテーマ。患者さんの便宜を追求したこのアイデアからは、学べることがありそうです。

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