薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2015.03.10更新日:2015.07.29 薬剤師のためのお役立ちコラム

日本とどう違う? アメリカの薬剤師の役割とは

アメリカの薬剤師から働き方の可能性を探ってみましょう

日本もアメリカと同様に2006年から薬剤師の薬学教育が6年制になりました。アメリカの薬剤師は、スキルが高いだけではなく、子どもたちのなりたい職業においても常に上位に入っているようです。日本の薬学教育が6年制になったからといって、そのまま日本の薬剤師にも変化があるわけではないでしょう。また、日本とアメリカの医療のバックグラウンドが違うことを考えれば、単純に日本の未来の薬剤師像をそのままアメリカの薬剤師に当てはめるわけにはいきません。それでも、アメリカの薬学教育、薬剤師の仕事ぶりには日本の薬剤師が学ぶべき要素があります。

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アメリカの薬学教育

まず、4年制大学で2年間、プレファーマシーとして生化学、生理学、有機化学、解剖学、スピーチとコミュニケーション学等を履修します。決められた単位を修得したあと、薬学部受験用試験(PACT)を受け、ファーマシースクールの受験資格を獲得します。ファーマシースクールはたいへん競争率が高く、他の受験生よりも優位に立とうと、薬学関係の科目や生物などの学士号を取得したのちに、ファーマシースクールを受験する学生が多く見られます。その競争率の高さから、公立(州立)大学などでは外国人は受験禁止というところもあるようです。

ファーマシースクールの教育は即戦力重視型

続いての4年間の履修科目は分子生化学、薬物動態学、応用臨床薬学、経済管理学、そして最も重要なのが病院薬局での実地研修です。今までの日本の4年制の薬学教育は実験室で試験管を振ったり、マウスを解剖したりと内側での実習がほとんどでした。アメリカの薬学生は大学時代から外に出て、病院や薬局の第一線で働く薬剤師から直に学ぶという戦力重視型の教育です。この実地研修を通して薬剤師のプロフェッショナリズムを学び、患者さんを中心とした医師、看護師と共にチーム医療の一員であることを意識した薬剤師を目指していきます。アメリカの薬学教育は専門性の高い薬学教育と、卒業して薬剤師資格試験に合格したあと、すぐにでも仕事ができる即戦力のある薬剤師の養成に力を入れています。履修科目の半数は臨床薬学であることからも、それをうかがい知ることができます。

アメリカの臨床薬剤師の地位が高い理由

日本の薬学教育6年制はアメリカの薬学教育がお手本といわれています。アメリカの臨床薬剤師は国民からの信頼があつく、ハイレベルな知識・技術と「依存型処方権」を持っています。つまり、医師から委任を受ければ、処方を書くことができるのです。この点は、日本の薬剤師には一切、認められていません。依存型処方権のメリットは、薬剤師が薬の専門知識をもって薬剤の選択、投与量の決定、モニタリングなども行うことができ、医療事故を防止することができることです。薬剤師がジェネリック医薬品を選択できる制度もアメリカが先駆けです。
 
このようにアメリカの薬剤師は高度な専門性を持ち、他の医療スタッフ、患者さんたちからとても信頼されています。しかし、単純に日本の薬剤師とアメリカの薬剤師を比べることはできません。

日本とアメリカの医療制度の違い

アメリカの薬剤師の地位や信頼度が高い理由の背景にはアメリカの医療制度があります。日本は国民のすべてが医療保険に加入することが原則ですが、アメリカは違います。アメリカは2010年に国民皆保険制度が採用されるまでは、各自の選択で民間の保険に加入していました。そのため、保険に加入していない人は極力、病院を受診せずに済むよう、薬局やドラッグストアで購入した薬で病気を治そうとします。また、医療保険に加入していても、保険の種類によっては医療費の高い診察を受けることができず、薬剤師を医師代わりとして頼る人もいます。薬剤師も頼られるからこそ、専門性、コミュニケーション力をさらに上げる努力をするのです。
 
日本の薬剤師のなかには、アメリカのプロフェッショナルな薬学教育を求めて、アメリカに渡った人がたくさんいます。そこで専門性やコミュニケーションスキルを学び取って日本に帰国し、臨床薬剤師の指導的立場で活躍している人もいます。遠くない将来、彼らが日本の薬剤師の役割に影響を与える日がくるでしょう。

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