薬剤師のスキルアップ 公開日:2015.02.23更新日:2023.04.13 薬剤師のスキルアップ

患者さんの目線に合わせられる薬剤師像を求めて~信頼関係を築くコツ~

患者さんと信頼関係を築くことで調剤業務がしやすくなります

調剤薬局の薬剤師の主な仕事は「調剤」です。専門知識を駆使し、医師の処方箋に沿って調剤しますが、処方箋に記載された薬が患者さんの体質に適合しているか、副作用を最も軽減するにはどうしたらいいかなども考慮しますね。患者さんに最も適した薬剤を調剤するには、患者さんのあらゆる情報を知る必要があります。

患者さんから話を聞き出すために一番必要なものは、「患者さんとの信頼関係」。信頼関係があればあるほど、患者さんの情報は得やすくなります。仕事を円滑にするためにも「患者さんとの信頼関係を築くコツ」を考えてみましょう。

話をしてくれない患者さんへの対応

患者さんの情報を得るには、まずは患者さんからの情報提供が第一です。特に話をしてくれない患者さんの場合はどうしたらいいか、薬剤師が最も悩むところです。

具体的な質問の投げかけで会話を続ける

患者さんに話を続けてもらうには、薬剤師からの質問の仕方が重要です。「今までのお薬で副作用が出たことはないですか」「はい」、「他の病院にも通っておられますか?」「いいえ」と、薬剤師の質問には何とか返してくれるけれど、それ以上は話そうとしない患者さん。このような場合は、1つの言葉で返答が終わらないように質問をしてみます。

「今までのお薬で、体がかゆくなったとか、胃がムカムカした経験はありますか?」これらの症状を副作用という一つの言葉で質問してしまうと、「ないです」と患者さんは答えるでしょう。それぞれの薬の主な副作用を具体的に取り上げて質問すれば、「体はかゆくならないけれど、胃がむかつくことはあったかも」など、長く話してくれる可能性は高まります。さらに、「それから、少し足先がしびれてくることがあります」など、質問以外の症状を打ち明けてくれることもあります。処方箋を見ると、そのような症状を改善する薬剤は入っていません。これは医師には打ち明けなかった症状かもしれないので、薬歴に書き加えたり、医師に報告できる情報になります。

足先がしびれてくると言い出した患者さんに対して「そうなんですか」と言えば、そこで話は終ってしまいます。「いつ頃からですか?」「どんな風にしびれるのですか?」「正座したときと同じような感じですか?」など、続けて質問を投げかけてみましょう。そして「それはお辛いですね。今までよく我慢されましたね」と、会話が途切れないように工夫しながら、話を続けていきます。患者さんが発した言葉について、「(患者さんは)なぜ、こういうことをおっしゃるのか」と常に考え、先をつなげられるように話をすれば、会話が途切れる心配もなくなります。

トラブルは患者さんとの信頼関係を築くきっかけに

日々、あらゆるトラブルに気を遣いながら仕事に取り組んでいても、やはり何かしらトラブルは起きてしまうものです。細心の注意を払ったにもかかわらず、起きてしまったトラブルはどのようにとらえればいいのでしょうか。

この場合、トラブル処理の仕方によっては患者さんの不満を一気に転換して、信頼していただける関係につなげることができます。
よくあるケースで改善方法を挙げてみます。

釣り銭が足りないと患者さんに指摘されたとき

まずは、患者さんに不信感を与えたことをお詫びしなければいけません。この段階では、釣り銭が合っていたのか、間違っていたのかは横に置きます。その後、薬局側の計算ミスならば改めて謝りますが、問題なのは患者さんの方に計算ミスがあった場合です。患者さんが自分の計算ミスにすぐに気づいた場合は、患者さんが罪悪感を持たれないように対応していかなくてはなりません。「申し訳ありません」ともし患者さんが謝られたら、「いえ、こちらこそ、○○様を混乱させてしまったこと、大変申し訳ありません」と薬剤師も謝ります。この言葉で計算間違いをして恥ずかしいという患者さんの思いが少しは軽減されることでしょう。計算間違いをした患者さんを追い詰めることは避けましょう。

さらに難しい対応なのは、自分の計算ミスを認めない患者さんの場合です。レジの中の保存用の計算レシート、患者さんに渡したレシート、お金のやり取りをした前後の会話、証拠となるものはすべてを開示してお互いに確認します。そうして患者さんが納得されたときは「お手間をとらせて申し訳ありませんでした」と謝りましょう。患者さんがお帰りになるときは薬剤師らしく「○○のお薬は夕食前ですよ、お忘れにならないようにお願いしますね」と、お金のトラブルはなかったかのように声をかけます。こうしたことも、信頼関係を結ぶきっかけにできるのです。

独居の高齢者の患者さんの場合

子供とは離れ、一人で暮らしている高齢の女性患者さんがいらっしゃいます。とてもしっかりしている方で、家事なども一人でこなしながら暮らしていました。服用薬は高血圧と睡眠薬の2剤のみです。今まで薬を飲み間違うことはなかったのですが、「あるときから寝る前に飲む薬がどちらか、わからなくなってしまった」と、会話のなかで知ることになりました。

自宅に戻られてからも薬局に30分ごとに電話をかけてきて「どっちが寝る前に飲む薬?」と聞かれます。薬剤師も不安になり、「息子さんにお話ししてお薬を管理してもらいましょうか?」と問いかけました。ご本人は「息子には言わないでください。バカにされるから。自分でできます」と言います。高齢者に対してこういった対応はプライドを刺激することもあり、デリケートなものです。しかしそのままにして、薬を飲み間違えれば大変なことになります。そこで患者さんの息子さんに連絡し、ご家族と連携をして対応することにしました。このように、独居の高齢者の場合は、ご家族などの第二の連絡先を必ず確保するようにしておくとよいでしょう。患者さんには「息子に連絡したのね……」と少し責められてしまいましたが、ご家族にはとても感謝され、その後ご家族皆さんの調剤をするような信頼関係を築くことができました。

多くの患者さん一人ひとりとの信頼関係を築いていくことは大変なことです。しかし、患者さんとの信頼関係ができ上がっていれば、患者さんの情報収集もしやすいですし、調剤ミス防止、副作用軽減につながるといっても過言ではありません。また起きてしまったトラブルやクレームも、誠意をもって応対することでプラスの材料にしていくこともできるのです。

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