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鉄剤使用時の副作用対策に かかりつけ薬剤師として選択肢を広げよう(前編)

かかりつけ薬剤師なら覚えておきたい、鉄剤による副作用への対処法

鉄剤の調剤を担当した薬剤師の多くが、窓口で直面する副作用の問題。服薬指導で対応に困った方もあるのではないでしょうか。今回は「鉄剤の副作用」「なぜその副作用が起こるのか」また、「副作用を訴える患者さんへ、かかりつけ薬剤師としての望ましい対応」などを前後編に分けてお伝えします。

副作用が起こりやすい鉄剤処方

子どもから高齢者まで、年齢性別を問わず貧血患者に処方されるのが鉄剤です。なかでもよく処方される「フェロミア錠50mg」は、消化器系の副作用を起こす可能性が5%以上と非常に高い副作用発現頻度を示します。なかでも、悪心・嘔吐は発現頻度の最も高い症状だといわれています。
 
そのほか、鉄剤特有の副作用で見落としがちなのが、歯の着色や黒色便です。添付文書の注意欄に記載されているので確認してみましょう。こうした副作用は消化器症状とはタイプが異なりますが、患者さんのQOL向上のため服薬指導時に伝えておきたい情報であるといえます。

なぜ副作用が起こるのか

貧血改善に必要とされるミネラル分「鉄」には、ヘム鉄(2価鉄)と非ヘム鉄(3価鉄)の2種類があります。鉄剤に使用される鉄分は非ヘム鉄(3価鉄)に分類されますが、この種類の違いが副作用発現に関与すると考えられます。ヘム鉄と非ヘム鉄では、どのような違いがあるのか特徴を紹介しましょう。
 

➢ ヘム鉄と非ヘム鉄とは

鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。肉や魚などの動物性の食品から摂取できる鉄分がヘム鉄、ほうれん草やひじきなどの植物性の食品から摂取できる鉄分は非ヘム鉄に分類されます。吸収率に関する研究によると、ヘム鉄は非ヘム鉄よりも5~6倍吸収率が高いと報告されています。

 

➢ 非ヘム鉄の吸収率が低いのは、3価鉄から2価鉄への変化が必要だから

ヘム鉄(2価鉄)はタンパク質に包まれ身体に吸収されやすい構造をしていますが、非ヘム鉄(3価鉄)が吸収されるには2価鉄への変化が必要です。このとき活性酸素が生じて腸管の粘膜を傷つけてしまうために、消化器系の副作用が生じると考えられています。

 

➢ 鉄剤は非ヘム鉄だから副作用が起こりやすい

鉄剤はすべて非ヘム鉄の成分で作られており、副作用が生じやすい傾向にあります。吸収されにくい非ヘム鉄は、便中にそのまま排泄されやすいのも特徴です。その過程で、酸化が起こったり、食物と反応したりすることで便が黒色になってしまいます。また、歯磨きを怠っていると、イオン化した鉄分と歯の表面にある成分が結合して歯を着色してしまいます。

副作用が出たら服薬中止だけで本当にいいの?

鉄剤を服用している患者さんが副作用を訴えてきたら服薬中止を思い浮かべることでしょう。そして、医師にその旨を連絡し確認する……このような手順になりがちです。しかし、こうした安易な選択は、医師が鉄剤を処方した真の意図をくみ取れていないとも考えられないでしょうか?
鉄剤を処方する医師は、貧血傾向にある患者さんに対し、貯蔵鉄と呼ばれる鉄の貯金をするための治療を選択しています。医師としては、可能であれば鉄剤の服用を継続したいと考えているはずです。薬剤師としては安易な中止ではなく、用法用量の変更の提案や剤型変更の提案ができれば最善ではないでしょうか?

かかりつけ薬剤師として選択肢を広げる意識を

鉄剤は副作用が出やすい薬のひとつです。なぜ副作用が起こるのか知らなければ、患者さんや医師のニーズに合った提案ができません。副作用の訴えを聞いたときに服薬中止を検討するのはひとつの方法ですが、かかりつけ薬剤師として選択肢を広げていくために、もう一歩踏み込んでもよいのではないでしょうか。かかりつけ薬剤師としてよりよい選択ができるよう、後編では具体的な代替案をご紹介します。

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