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薬剤師の新人教育研修(3) 薬剤師のスキルが問われる「服薬指導」はどう教えれば良い? 文:加藤鉄也(研修認定薬剤師、JPALSレベル6)

服薬指導と薬歴記載の新人薬剤師への教え方について説明します。

調剤の業務フローは、「受付」から始まり、「処方箋のチェック」、「医薬品の調剤と鑑査」、「服薬指導と薬歴記載」と続きます。前回は調剤と監査についてお話しましたが、今回は、薬剤師のスキルが問われる「服薬指導と薬歴記載」について、効率的に指導するためのポイントについてまとめます。

服薬指導と薬歴記載の研修で「やるべきこと」と「やったほうが良いこと」

服薬指導は患者さんと対話をしながら、治療への理解を深めてもらい、服用方法や薬効評価、副作用管理などを実践するという薬剤師の専門性が発揮できる業務です。
しかし、処方薬の種類や患者さんの体質が異なるため、状況によって指導内容が異なります。十人十色の選択肢があることから、新人に教えづらい面があるのも事実でしょう。複雑になりがちな面もあるため、完璧を目指してしまうと、おもわぬトラブルに発展してしまう可能性があります。新人指導においては、「やるべきこと」と「やったほうが良いこと」に分けて、整理しておきましょう。

 

「やるべきこと」として必ず伝えたいのが、患者さんの安全を確保し、調剤報酬を算定し、適切な保険調剤を行うために必要な仕事の部分。そして、「やったほうが良いこと」は、薬の専門家である薬剤師として、患者さんのためにどのような対応をすれば喜ばれるかという点で指導を行います。まずは「やるべきこと」を教える際の指導法について考えてみましょう。

薬歴に記載すべき事項

新人薬剤師がやりがちなミスとして考えられるのが、確認事項に漏れがでること。厚生労働省から公表される「最低限確認、実施しなければならない業務」として「薬歴に記載すべき事項」があります。

 

患者基本情報をはじめ、処方・調剤内容、薬学管理に必要な生活像・体質・疾患・併用薬情報、コンプライアンス、体調変化、服薬指導の要点、手帳の有無、今後の指導の留意点を必ず薬歴に記載する必要があるのです。記載漏れがあると患者さんの心身にかかわる重大な事態がおきかねないほか、薬剤服用歴管理指導料を算定できないことをしっかりと説明しておきましょう。

 

問診票やレセコン等の情報から記載する項目は漏れがでにくいものの、体調変化、服薬指導の要点、今後の指導の留意点については服薬指導を通して得られる情報になるため、前もってしっかり確認するように指導しましょう。

指導監査の指摘事項

各地区の厚生局が実施する「指導監査時の指摘事項」も重点的に確認する必要があります。たとえば、「医薬品安全対策情報(DSU)の医療安全情報」や「眠気等で機械の操作に支障がある薬剤」、「ビタミン剤やPPI製剤など治療効果を確認せず慢性的に使用されている薬剤」については、患者さんに副作用における注意点の指導や効果の確認を行う必要があります。これら保険調剤上で必要な内容についても必ず患者さんに確認し、薬歴に残すように指導するようにしましょう。

禁忌の確認

また、絶対に漏れてはいけない確認事項として「禁忌」のチェックがあります。風邪を引いた妊娠後期の患者さんに、禁忌薬であるNSAIDsが処方されたり、ネオーラル服用中の患者さんにロスバスタチンが処方されたりするような禁忌薬処方と接する機会は意外と多いものです。新人薬剤師には処方薬の禁忌項目は必ず確認して、患者状態、合併症、併用薬が該当しないかチェックするように伝えましょう。

 

ここまで「やるべきこと」に含まれる指導についてポイントを絞ってお伝えしてきました。これらの事項は患者さんの健康を守り、適切な保険調剤を行ううえで、薬剤師が必ず行わなければならない業務であり、漏れがあると健康被害、調剤報酬の減額や減点、厚生局の監査対象や調剤報酬の返還に発展する可能性があります。確実に実行できるよう、十分理解ができるまで説明しましょう。これから説明する「やったほうがよい業務」と区別して指導することで、理解がすすむはずです。

服薬指導において、聞くことの重要性を伝えよう

続いて、服薬指導における研修のポイントに進めていきましょう。

 

服薬指導において、患者さんに喜んでもらうためには、患者さんの状況を確認し、ニーズを知ることが大切です。そのためにまず聞くことが欠かせません。一方的に薬剤師が説明をしても、患者さんにとって必要と感じない情報は伝わらないもの。実際の服薬指導を例に考えてみましょう。

 

例えば、高血圧の治療中で、病院での検査から150/90mmHgまで上がっていることがわかった患者さんがいたとします。コンプライアンスも良好で、家庭内血圧も同程度、医師も同じ降圧薬を継続して処方しています。

 

もし、何も聞かずに服薬指導をすると、副作用の確認と塩分控えめの食事療法と運動指導などをして終了してしまうところです。そこで、「血圧が一般的な基準値の140/90mmHgより高いですが、先生は同じ薬を続けるように言っていましたか?」と質問してみるとします。

 

このとき、患者さんから「歯科治療中に歯肉肥厚が見つかったけど、降圧薬が原因だったので、薬を追加することができないんです」と回答が返ってくることがあります。

 

質問をしたことで問題点がはっきりしたため、患者さんの服用歴を確認し、歯肉肥厚が起きにくい降圧薬を探し、医師に提案することができるでしょう。安全で効果的な高血圧の治療にもつながり、患者さんのニーズをしっかり拾えたという良い例です。問題は患者さんのなかにあり、聞いてみないと分からないことが多々あります。

 

指導するときは、自分の中で印象に残っている患者さんとのやり取りを思い出して、具体例を出しながら新人薬剤師に話してみましょう。患者さんとのコミュニケーションのなかで、聞くことの重要性が伝われば、実践につながります。

 

また、トレーニングとしてケーススタディも有効です。指導薬剤師が患者さん役となって、「問題」(先程の例では降圧薬が原因で歯肉肥厚がおこり、薬が追加できない)を設定し、服薬指導で聞き出すトレーニングを行うという手もあります。

服薬指導で何を対話するかフレームで教えてみよう

服薬指導においては、対話の方法をフレーム化して教えるのもひとつの手です。新人薬剤師は緊張や経験不足から、服薬指導で話したい内容が何か忘れてしまいがちです。そんなときに役立つのがフレームです。聞く内容をマニュアル化することで、聞きたいことや説明したい事項を思い出すきっかけになります。電子薬歴の主流として使われるSOAP形式もフレームのひとつで、薬歴記載の情報整理に役立ちますが、服薬指導においては、使いづらいのが難点です。実際に取り組みやすいフレームの例を見てみましょう。

「有効性-副作用-健康相談」

フレームのひとつとして使えるのが「有効性-副作用-健康相談」です。
有効性では薬の効果について聞いたり、話したりします。血圧の薬の効果なら「血圧の値はいくつでしたか?」、糖尿病の薬なら「血糖値はいくつでしたか?」、胃薬なら「胃の調子はいかがでしたか?」などを確認します。また、帰宅後の薬効を確認する方法として、家庭内血圧を測定することや胃腸障害などの主訴に薬の効果があったか確認するように伝えることもできるでしょう。

 

副作用のフレームでは、痛み止めで胃腸障害がないか、糖尿病薬で低血糖がないかなどを確認することになります。そのほか、帰宅後の副作用の発生について、糖尿病薬を服用中に、くらくらする、空腹といった低血糖の初期症状があればブドウ糖10~15gを摂取して、15分経っても治らないときはもう1錠追加してくださいなどと副作用管理のアドバイスもできます。

 

さらに、健康相談として、健康上の悩みや異常がないかを確認する流れとなります。頭痛やめまいなどで悩んでいる場合、脳神経外科への受診勧奨につながることもあります。また、血液検査結果で尿酸値が高いが、医師から生活習慣などの改善で様子を見ようと言われたものの、実際の方法がわからないと悩んでいる場合、プリン体が少ない食品を勧めたり、排泄のために尿を中性に近づける食品を紹介したりできます。

「過去-現在-未来」

「過去-現在-未来」というフレームでは、「過去:患者さんは何に困って受診したのか? 症状や主訴、過去にかかった病気」、「現在:今はどういう状態か? 医師の診断、処方意図、検査結果、今かかっている別の病気や併用薬」、「未来:服用後の副作用が発現する可能性。制吐剤服用後吐いてしまったらどうするか?」と、3つに分けて確認するというものです。

 

フレームを決めておくと頭の中で情報を整理しながら患者さんとの対話をスムーズに進められるのが大きなメリットです。やり方を伝えることで自分以外の人も使うことができるので、薬剤師それぞれのスキルに左右されがちな服薬指導を教えるのに有効な方法だと言えるでしょう。自分なりのフレームを作ることで、考え方の整理になり、指導もしやすくなるため、自己成長という意味でもお勧めの方法です。

薬歴に記載する内容の概要を理解してもらおう

薬歴は、厚生労働省から求められている記載事項や服薬指導の内容を記録し、今後の薬物治療をどう行っていくかを、薬剤師間で共有するために記載するものです。ここでは多くの薬局で使用されている電子薬歴のうち、SOAP形式の薬歴の記載の指導法について説明します。

 

SOAP形式は情報に漏れがないように、また整理して伝わるように用いられているフレームです。新人薬剤師は、SOAPにそれぞれ何を記載すれば良いか整理できておらず、記載事項に漏れがでてしまうことがあります。指導薬剤師としてはSOAPのそれぞれの項目に何を記載したら良いのか、きちんと整理して伝えましょう。

 

ただし、出身大学や実習を行った薬局、指導薬剤師によってSOAPに記載する内容が異なることがあります。新人薬剤師が違ったSOAP整理の方法を学んできた可能性を理解したうえで、気持ちに配慮しながら、現在の薬局で主流となっている記載方法を新人薬剤師に指導してあげることが大切です。

 

SOAPに記載する事項の一例として、Subjective(主観的事項)では主訴や副作用情報、薬を飲み始めてからの効果、患者さんの過去の治療歴や医師の判断や指示を記載します。Objective(客観的事項)への記載事項は臨床検査値、副作用回避方法など薬剤師が特別指導した点、小児の体重換算量などが挙げられます。

 

Assessment(評価)では、S、Oで得られた臨床検査値や患者さんの状態から薬剤師が考え、対応した内容を記載します。例えば、「腎機能低下で利尿剤の副作用の可能性があるが、薬を変更するほどではないと判断した」や「血中K濃度が上昇していたため、K製剤を疑義照会のうえ減量した」など、その時点での判断と行動内容や今後につながるような内容を書くと良いでしょう。

 

Plan(計画)ではAを踏まえたうえで、今後どうするかを記載します。上の例では「腎機能検査値をモニタリングし、尿量減少、むくみ、倦怠感などの腎低下症状をチェックする」、「血中K濃度をモニタリングする」など次回チェックする副作用症状や薬効評価、薬の変更提案などを記載し、将来の薬物治療計画を書くように伝えましょう。

 

SOAP形式を採用している目的は、漏れなく整理することであり、新人薬剤師のやり方で目的を達成しているのであれば無理に変える必要はないかもしれません。目的を意識して、それぞれにあったやり方を見つけてあげるのも良い指導法と言えるでしょう。

服薬指導と薬歴の理解で薬剤師としての能力が開花するかも

服薬指導と薬歴の入力は、薬剤師によってやり方が違うため、指導しづらい業務です。混同しがちなポイントを整理しながら指導することで、効率よく理解してもらいましょう。一方で、こうした業務は個性が発揮でき、薬剤師のやりがいを感じられる仕事でもあります。新人薬剤師がモチベーションを持って仕事を続けられるよう、新人の個性に合ったやり方を促し、成長を支えてあげましょう。

 

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