薬剤師の接遇マナー・テクニック 公開日:2017.07.04更新日:2023.03.23 薬剤師の接遇マナー・テクニック
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー

深刻な病気を告知された患者さんへの寄り添い方
深刻な病気を告知された患者さんへの寄り添い方

大学病院に勤務しているのですが、一般に完治が難しいとされる病気を告知されたばかりの患者さんへの接し方に悩んでいます。予想もしていなかった病名の告知を受けた患者さんやご家族は特に動揺が激しく、今後使用するお薬の説明をしても、あまり耳に入らないようです。このような場面では薬剤師として、どうあるべきでしょうか。
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「説明する」と「理解してもらう」はまったく別もの

こうした場面は、病院勤務の薬剤師ならではかと思います。まず、薬の説明で大切なのは「患者さんがしっかり理解できるように説明すること」。つまり、患者さんが理解できていなければ説明したことにはならないのです。患者さんが動揺していて「今は無理そうだな」と判断したら、時間を空けてから説明に行くなど、様子をみてもいいと思います。
 
私自身も病院勤務の経験があるので、やるべき仕事が山積みで効率よく仕事をこなしていきたい気持ちもわかります。また、そのあとの治療や投薬の時間が迫っていて、「今、説明してしまわなければ」という状況もあるでしょう。しかし、そこで形だけの説明をして次に進んでしまっては、薬剤師としての責務、医療人としての使命を果たしたとは言えない気がします。
特に告知でショックを受けている患者さんには、「黙って待つ」という思いやりのあらわし方もあります。「自分は薬剤師だから、薬に関する仕事をしなくてはいけない」という考えはいったん脇に置き、「人」として患者さんの気持ちを推し量り、静かに寄り添うという姿勢をもってほしいと思います。

困ったら周りの手を借りる。一人で困らなくてもいいのがチーム医療

もし、時間を空けて何度足を運んでも説明できる状態にならず、投薬や診察の時間が迫っている場合は、担当の看護師さんに相談してみるのも一つの手です。看護師さんが患者さんとしっかりコミュニケーションを図れているなら、看護師さんと一緒に説明した方が患者さんも落ち着いて話が聞けるかもしれません。忙しい看護師さんにそんなお願いをするのは気後れするかもしれませんが、患者さんのためを考えてのことであれば遠慮することはありません。もちろん、何度も様子を見に行ってタイミングをうかがう、患者さんに声をかけてみるといった努力は必要ですが、精一杯やった上でのことなら、一人で思い悩むより思いきって協力をお願いしてみましょう。看護師と薬剤師は、患者さんのために全力を尽くす仲間であり、それがチーム医療のあるべき姿なのです。
 
もちろん、快く協力してくれる看護師さんばかりではないでしょう。文句の一つや二つ、言われるかもしれません。しかし、すべては患者さんのためだと思って踏ん張ってください。少なくとも、相談者さんは「患者さんは話を聞ける状態にない」ということに気づけたのです。あとは「人」として患者さんに寄り添う大切さを認識し、患者さんの治療のために全力を尽くせるよう周りを巻き込む勇気だけ。
医療人として、どう生きていくかを考えるいい機会でもあります。ぜひがんばってください!
「患者さんが理解できる状態になるまで待つ」。「静かに寄り添う」ことも、ときには必要です
「患者さんが理解できる状態になるまで待つ」。「静かに寄り添う」ことも、ときには必要です
村尾 孝子
村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
株式会社スマイル・ガーデン : http://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: http://smilegrdn.exblog.jp/
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