薬剤師の接遇マナー・テクニック 更新日:2023.03.23公開日:2014.11.26 薬剤師の接遇マナー・テクニック
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー

前回の話を忘れて同じ質問をしてしまう
前回の話を忘れて同じ質問をしてしまう

前回話したことを忘れ、同じ患者さんに同じことを聞いてしまいます。薬に関することなら薬歴を確認できるのですが……。この前もスーツでいらっしゃった方に「これからお仕事ですか、大変ですね」と言ったところ、「前回も前々回も聞かれましたけど、転職活動中です」と返され、とても恥ずかしい思いをしました。よい対応策はないでしょうか。

Answer
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薬歴は薬のことだけを記入するものではない

この質問者さんは積極的に患者さんとコミュニケーションを図ろうとしているのですね。大変素晴らしいことだと思います。着地点としては確かに恥ずかしかったでしょうし、患者さんにも少し不愉快な思いをさせてしまったかもしれません。しかし、だからといって「もう余計なことは言わないでおこう」と委縮することだけはないようにしてください。まだ1年目。この失敗を糧に成長してくださいね。
具体的な対応策としては、薬歴の活用をおすすめします。薬歴については薬局およびそれぞれの薬剤師によって捉え方が異なるようです。最低限、薬のことだけを記録している人も多いようですが、私は患者さんとのコミュニケーションツールとしてもっと活用してほしいと思います。薬のことだけのやり取りで患者さんの信頼を得ようとするのは、私個人的にはおこがましいことだと感じています。信頼関係を深めるには「薬剤師と患者」という枠を超え、「ひと対ひと」としてのやり取りが必要不可欠だと思うのです。

些細な情報も信頼関係を深めるきっかけになる

たとえば、「今週末からヨーロッパ旅行に行くんです」という話が出たなら、「長時間飛行機に乗ると気圧の変化が激しいので注意してくださいね」や、「旅行中も薬は飲み忘れないようにしてください」といったアドバイスができます。そして、それを薬歴に記しておけば、次回いらしたときに「旅行、どうでしたか?」と会話をはじめることができます。自分の話した内容を相手が覚えていると、「ちゃんと聞いてくれているんだ」と感じて嬉しいものです。また、いつも同じ薬剤師が対応できるとは限らないので、別の人が担当しても情報を共有できるという意味でも薬歴への記録は大切です。
今回の質問者さんのケースなら、「転職活動中」と一言薬歴に書いておけば、活動が長引く場合のことまで考慮して、あえて転職や仕事の話に触れず、患者さんからのその後の報告を待つなどの気遣いができるはずです。また、そこから発展させて「食事時間がバラバラになって薬を飲み忘れることはありませんか?」「睡眠不足になっていませんか?」といった話を持ちかけることもできるでしょう。薬剤師の中には「患者さんと何を話していいのかわからない」とコミュニケーションに苦手意識を持つ人もいますが、そういう人ほど薬歴を積極的に活用しましょう。
ちなみに、薬歴は色を付けてはいけないという決まりはありません。カラーペンや付箋を活用したり、飲み合わせの注意や未払いなどの優先事項は表紙の一番目につくところに出すなど、患者さんの目に留まっても大丈夫な範囲で工夫してわかりやすい薬歴をつくってみてください。

情報満載の薬歴は最高のコミュニケーションツール。患者さんとの信頼関係を深め、情報を薬局内で共有するためにも細かく記入を。
情報満載の薬歴は最高のコミュニケーションツール。患者さんとの信頼関係を深め、情報を薬局内で共有するためにも細かく記入を。

村尾 孝子
村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
株式会社スマイル・ガーデン : http://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: http://smilegrdn.exblog.jp/
薬剤師さんからの質問大募集!村尾孝子先生が、あなたの質問にお答えします
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