聞きたい!薬局実務裏ワザ 聞きたい!薬局実務裏ワザ

第78回 道下 太英子先生

薬局にも個の医療を提供する時代がやってきた!?
遺伝子検査を通し、患者さん一人ひとりに適した最良の薬物療法、運動療法、食事療法を提供できる薬局を目指す「ハーティ薬局」。
今回は、ハーティ薬局を経営する女性薬剤師、道下太英子社長に薬局と遺伝子検査のコラボレーションによる患者さんへの新しい服薬指導の在り方についてうかがいました。
原稿/高垣育(薬剤師・ライター)

Q
来局のたびに症状が悪くなる患者さんを見ると指導している内容が合っているのか迷うことがあります。
遺伝子検査をすることで、その人に本当に合った治療法が見つかることも
遺伝子検査をすることで、その人に本当に合った治療法が見つかることも
来局のたびに状態が悪くなる糖尿病患者さん、なんとかできないだろうか

 

弊社は1958 年に創業した道下薬局が前身です。現在は「調剤薬局事業」と「遺伝子検査事業」を二本の柱としていますが、もともとはドラッグストアを経営していました。調剤業務を行うようになったのは2000年頃です。

 

調剤薬局事業を開始して感じたのは、同じ薬を服用しても患者さんによって効果や副作用の出方が思った以上に異なることでした。特に今でも忘れられないのが、来局するたびに処方薬が増え、どんどん症状が悪化していく糖尿病の患者さんのことです。

 

初めて来局したときから、薬だけに頼らないようにするための運動療法や食事療法についてお話しましたし、管理栄養士を招いての食事療法講座にも誘ったのですが、患者さんの心には響かなかったのです。

 

はっきりした根拠を示せずあれもこれも注意してくださいというのでは、指導される患者さん側にとってみたら実行するのが難しい。指導が漠然とし過ぎていて“じゃあ、実践してみようかな”という行動変容に導くことができなかったのです。

 

夫と同じ睡眠薬で妻が卒倒。その理由は個人の体質の差

 

もう1つ、今でも印象に残っているのが旅行を楽しみにしていたご夫婦のことです。お2人は海外旅行に行くのを楽しみにしていて、渡航先や機内でよく眠れるようにと旦那さんには睡眠薬が処方されていました。

 

お2人は、機内でお薬を服用したそうです。旦那さんは問題なく服用できたのですが、奥さんはそれを飲んで飛行機の中でひっくり返ってしまったと帰国してから聞きました。せっかく楽しみにしていた旅行で、患者さんのQOLを高める手助けをするはずの薬が、それをかえって妨げたのです。

 

調剤薬局業務を始めて、同じ薬で全く違う作用が起こる患者さんにしばしば出会うようになり、患者さんが安全、安心に、そしてその人に本当に効果的な医療を提供することが必要だと強く感じるようになりました。

 

それには大前提として、その患者さんの体質のことを知らないといけません。ここでいう体質とは、例えばその方の薬物代謝遺伝子がどのようになっているかということ。減量なら、内臓脂肪型なのか皮下脂肪型なのか、食行動調整系の遺伝子がどのようになっているか知るということです。

 

正直、患者さんが普段、トイレットペーパーやシャンプーなども購入する場所で、いきなり遺伝子検査キットを販売するということには迷いがありました。しかし、遺伝子検査の結果を活かした個別の指導が出来たら患者さんの真の健康に役に立つと思い、遺伝子検査事業を立ち上げることにしたのです。私にとっては、清水の舞台から飛び降りる心境でした。

道下太英子先生プロフィール
イービーエス株式会社代表取締役社長。薬剤師。
「調剤薬局事業」と「遺伝子分析事業」が効果的に結びつくことで、一人ひとりの患者さんが安心して、自分自身の体質に基づいた薬を服用することができるテーラーメイド医療の確立を目指す。また、自分の体質を正確に把握することで、健康で快適な生活を一日でも長く続けるためのサービスの提供に尽力している。

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