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西洋医学とは異なる理論で処方される漢方薬。患者さんから漢方薬について聞かれて、困った経験のある薬剤師さんもいるのでは? このコラムでは、薬剤師・国際中医師である中垣亜希子先生に中医学を基本から解説していただきます。基礎を学んで、漢方に強くなりましょう!

第7回 現代医学(西洋医学)と中医学の違いとは

根本治療を目指す中医学の「治病求本(ちびょうきゅうほん)」

中医学にはすべての病気に対する治療の大原則があり、これを「治則(ちそく)」といいます。

治則には、

  • 根本治療を必ず目指す「 治病求本(ちびょうきゅうほん)」
  • 足りないものを補い、余ったものを捨てる「補虚瀉実(ほきょしゃじつ)」
  • 正気を助けて邪気を追い出す「扶正祛邪(ふせいきょじゃ)」
  • 陰陽のバランスを整える「調整陰陽(ちょうせいいんよう)」
  • 五臓六腑の機能を整える「調整臓腑機能(ちょうせいぞうふきのう)」
  • 気と血の状態を整える「調整気血機能(ちょうせいきけつきのう)」
  • 時により・土地により・人により治療法を考える「因時、因地、因人制宜(三因制宜(さんいんせいぎ))」
  • 根本治療を必ず目指す「 治病求本(ちびょうきゅうほん)」
  • 足りないものを補い、余ったものを捨てる「補虚瀉実(ほきょしゃじつ)」
  • 正気を助けて邪気を追い出す「扶正祛邪(ふせいきょじゃ)」
  • 陰陽のバランスを整える「調整陰陽(ちょうせいいんよう)」
  • 五臓六腑の機能を整える「調整臓腑機能(ちょうせいぞうふきのう)」
  • 気と血の状態を整える「調整気血機能(ちょうせいきけつきのう)」
  • 時により・土地により・人により治療法を考える「因時、因地、因人制宜(三因制宜(さんいんせいぎ))」

……などがあります。

特に病の根源(根本原因)をしっかり見極め、病気の根本治療を目指す「治病求本」は、西洋医学にはない中医学らしい考え方です。

中医学には、「急なればその標(ひょう)を治し、緩(かん)なればその本(ほん)を治す」という原則があります。「急なればその標を治し」とは、急性の症状がある場合、あるいは、症状が本人にとって非常につらい場合には、とりあえず表面に表れている症状を取り除くということで、これを「標治(ひょうち)」といいます。標治をした後に必ず「本治(ほんち・根本治療という意味)」をして、病がぶり返さないように根本を治療します。

例えば、生理痛や腰痛などの痛みがある場合、「痛み止め」だけで対処することはしません。痛み止めで痛みを緩和しつつ(その標を治し)、痛みの根本原因は何なのか、痛みの根源(証)をつきとめ、根本から治す(その本を治す)ことが治療の目標となります。根本治療が進めば、痛み止めの服用も徐々に減らしていけます。

臨床では、「標本同治(ひょうほんどうち)」といって、表面上の症状への対処と根本原因の治療を同時に行うことが多いです。慢性疾患の治療では、初めから原則的に本治を施します。

以前お話しした「同病異治(どうびょういち)」や「異病同治(いびょうどうち)」は、この「治病求本」の精神から生まれた言葉です。

西洋医学は「病気」を治し、中医学は「人」を治す

西洋医学的に原因不明、治療法がない、西洋薬が体に合わない、あるいは、病名が多すぎて複雑な状況、などの場合であっても、中医学はとても有効です。なぜなら中医学は病名による治療ではなく、体質に対して薬を出すことができるからです。

日本人に多い胃腸虚弱(※1)アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎(アトピーなど)、アレルギー性疾患(喘息など)などの、体質改善をしない限り抜本的な改善策がないアレルギー疾患も中医学の得意分野です。

たとえば臨床において

  • 鼻炎もち(あるいは蓄膿もち)の人はアレルギー性じんましんを起こしやすい
  • アレルギー性鼻炎と喘息を併発
  • 小児喘息の既病歴のある人がアトピー性皮膚炎になる
  • アトピー性皮膚炎の親から喘息の子が生まれる
  • 鼻炎・喘息・アトピーのすべてを発病
  • 鼻炎もち(あるいは蓄膿もち)の人はアレルギー性じんましんを起こしやすい
  • アレルギー性鼻炎と喘息を併発
  • 小児喘息の既病歴のある人がアトピー性皮膚炎になる
  • アトピー性皮膚炎の親から喘息の子が生まれる
  • 鼻炎・喘息・アトピーのすべてを発病

という例をよく見かけませんか?

前述した3つの代表的なアレルギー性疾患は、西洋医学では受診する科が異なりますが、中医学的ではすべて「肺(はい)」におけるトラブルであり、3つの疾患にはつながりがあると意識して治療します。

中医学で「肺」は、鼻・鼻や喉の粘膜・気管支・肺・皮膚など、身体で空気の出入りする場所、空気の触れる部分すべてを指します。

非常に相談の多い不妊症・月経不順などの婦人科系にも、中医学はその効果を発揮します。西洋医学のように合成ホルモン剤を外から足すのではなく、「自分の力で、必要なときに、必要なだけ、必要な種類のホルモンを分泌できる」という身体づくりを目標に治療します。

西洋医学と中医学の相違点を下記の表にまとめてみました。
この表を見ると、「西洋医学は『病気』を治し、中医学は『人』を治す」という言葉が的を射ているということがよくわかるでしょう。

※1
胃腸虚弱とアレルギー疾患:中医学では、胃腸虚弱とアレルギー疾患は深い関わりがあります。胃腸の自覚症状の有無に関わらず、アレルギー疾患の根本原因は消化器系(特に腸)の弱さです。
※1
胃腸虚弱とアレルギー疾患:中医学では、胃腸虚弱とアレルギー疾患は深い関わりがあります。胃腸の自覚症状の有無に関わらず、アレルギー疾患の根本原因は消化器系(特に腸)の弱さです。

<表:西洋医学と中医学の相違点>

  西洋医学 中医学
医学の在り方 解剖学・生理学をもとに動物実験し、実験データ・数値をもとにした医学。動物や人の体質・個性は考慮しない 人の体質や個性を重視し、個々の生きた人体に対する処方の経験を蓄積した経験医学
性質 科学的・細菌医学 哲学的・体質予防
診断 他覚症状重視 自覚症状重視
診断法 血液検査・画像(CT・レントゲン・MRIなど)や診断基準に当てはまるかどうかにより病気と診断する 自覚症状があれば、病名がつかなくても未病のうちに治療する。四診(望診・聞診・望診・切診)により全身の情報を収集・分析し、『証(病の本質・体質)』を診断する
治療対象 器管・組織・細胞など局所的 病の根本原因を追究し、身体全体の状態を整える。総合的。全体的
治療法 対症的治療 対証的治療
  • 手術により病巣を切除
  • 科学的に合成した薬物を投与
  • 病名・症状が同じであれば、同一の治療法
  • 西洋栄養学に基づいた食生活指導
  • 鍼灸・アロマなど経絡(ツボ)に働きかける治療
  • 草木や鉱物より作られる自然の薬物を投与
  • 人によって体質が異なるため、症状が同じに見えても治療法が異なる
  • 体質別の食養生
薬物 化学薬品 天然生薬
薬物の組成 単一成分 多成分。多種類の成分をもつ植物を、約4~20数種組み合わせるため、構成成分は非常に複雑
薬物の目的 例)頭痛・生理痛
解熱鎮痛剤を頓服することで、症状を『かくす』。一時的に痛みはなくなるが、治ったわけではないため、なかなか薬をやめられない
痛みの原因を追究し、体質改善のための漢方薬や鍼灸治療をする。痛みの起きない、健康な心身を目指す。体質改善されれば、痛みは起きなくなり、症状は『治る』。薬の服用を中止してもよい
副作用 単一成分のため副作用が起きやすく、
非常に強い副作用が起きることがある
複雑な成分のため(似た構造式でも置換基がさまざま等)副作用が起きにくい。

中垣 亜希子(なかがき あきこ)

すがも薬膳薬局代表。国際中医師、国際中医薬膳師、管理薬剤師。
薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。
東京薬科大学薬学部卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学、イスクラ中医薬研修塾、国立北京中医薬大学日本校にて中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS 猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。

すがも薬膳薬局:http://www.yakuzen-sugamo.com/

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