聞きたい!薬局実務裏ワザ 聞きたい!薬局実務裏ワザ

第49回 成井繁 先生

「精神科領域の薬物療法が苦手」、「服薬指導に自信がない」という薬剤師は少なくないようです。そんな苦手意識を克服し、もう一歩踏み込んだ服薬指導を実践していくためにはどうすればいいのでしょうか。
今回は薬局薬剤師として初となる精神科薬物療法認定薬剤師の認定を受け、精神科の患者さんへの意欲的な服薬指導を実践している、成井繁先生にお話をうかがいました。全5回のシリーズです。
原稿/高垣育(薬剤師・ライター)

※商品名は種類が多いため、一部の先発品のみの記載となっています。

※商品名は種類が多いため、一部の先発品のみの記載となっています。

Q
精神科の患者さんへの服薬指導。ポイントとなるのはどのようなことですか?
精神科の患者さんへの服薬指導。ポイントとなるのはどのようなことですか?
指導したい内容は一度に伝えず、3回ほどに分けて伝えよう

 

服薬指導のための5つのポイント

 
精神疾患の患者さんに対する服薬指導のポイントは5つあります。
 

  1. 必ずしも初回で副作用について説明する必要はない
  2. 薬剤師は「患者さんの健康に対して不利益になる副作用の情報は、なんとしてでも伝えないと、万が一患者さんに何かが起こったときに責任問題になる」という恐れや不安を感じがちです。
    ですが、例えばオランザピン(商品名:ジプレキサ)が低用量(2.5~5㎎)で処方されている場合で考えてみましょう。MARTAに分類されるオランザピンは、前回示した通り私たちが心配するような錐体外路症状が起こる可能性は低いと考えられています。
    そこで、処方薬や処方量から鑑みて、今回は伝える必要がない副作用だと判断して、まずはしっかりと服薬してもらうことに集中します。
     

  3. 初回で疾患名を話題にしない
  4. 精神疾患の診断名は、初回で患者さんに伝えられているとは限りません。
    例えば抗うつ薬が処方されていたとしても「うつの症状で受診されたのですか?」といった尋ね方をすると、まだ診断名を医師から告げられていないこともあるので、「私、うつ病だったのか……」と患者さんを驚かせたり不安にさせたりすることになってしまいます。こうしたことから服薬拒否・治療拒否などにつながる場合もあるので、注意が必要です。
     

  5. まずは“セミオープンな質問”で症状について尋ねる
  6. 抗うつ薬が処方されていた場合でも、まずは「最近、元気があまり出ないような感じだったり、疲れやすかったりしますか?」など、疾患ではなく現在のつらい症状を尋ねます。
    「はい・いいえ」のどちらかで答えられる“クローズな質問”ではなく、患者さん自身が話したくなるような質問をします。すべてを患者さんが話さなければならない“オープンな質問”では患者さんの負担が大きいため、“セミオープンな質問”を心がけましょう。
     

  7. 医師につらい症状を伝えられない患者さんにはアドバイスを
  8. 薬剤師が副作用の出現について、「眠くて朝が起きられないことがありませんか」、「手足が震えることはありませんか」、など確認をしていると「そういえば……」と、つらい症状について口にする患者さんがいます。
    診察時に医師に伝えたかを確認をし、まだ伝えていないようだったら、次回どのように医師に伝えたらいいのかをアドバイスします。また患者さん自身から伝えることが難しいようだったら、薬剤師から医師に申し送りをするなどして、患者さんが服薬を継続するために、つらい症状を取り除くためのサポート(減薬の提案等)をしましょう。
     

  9. 治療のゴールと、その途中にある道しるべとなる目標を明示する
  10. 漫然と薬物治療を続けていくのは患者さんにとってつらいものです。モチベーションの維持も難しくなります。
    そこで薬物療法のゴールは「もとの生活に戻ること」であり、その途中にどのような副作用が起こり、身体がどのように変化していくのかを説明し、ゴールまでの道筋を示すようにします。
     
    例えば、抗うつ薬のミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)の場合。
    「この薬は服薬はじめの日中も眠気が強くなるけれど、1週間で慣れてくるので服薬を継続すること。効果が発現するのに1ヵ月かかり、その後は維持のために、少なくとも半年から1年服用を継続する必要があること」を示します。「服用を継続することで、しっかりと寝つけるようになる。次の段階として不安感や頭痛など身体症状がおさまり、おっくう感が消失し意欲が改善。医師の判断のもと、元の生活へと戻っていける」と伝えます。このように、服用後はどのような経過がみられるのかを簡単に説明しておくと、患者さんも安心できるでしょう。

 

精神科の患者さんの服薬指導~3つのステップ~

 
それでは具体的な服薬指導の進め方を、統合失調症の患者さんが来局した場合を例にお話ししましょう。
 
◇1回目の来局

オランザピン(商品名:ジプレキサ)を5㎎、就寝前服用で処方された患者さんが来局しました。
オランザピンは非定型抗精神病薬で鎮静効果が強い薬です。したがって、医師の処方意図は患者さんを「落ち着かせてあげること」「眠らせてあげること」と推測されます。
そこで患者さんには「最近、眠れないことがありますか? イライラしたり、敏感な状態でしょうか?」と症状について尋ね、「次回、お薬を飲んで眠れるようになったかどうか教えてください」と、次回につなげる約束をします。
今回は処方内容から錐体外路症状が出る可能性は低いと判断したため、この段階で副作用については質問がない限り伝えるのは控えます。

 
◇2回目の来局

オランザピンを服用して眠れたかどうかを確かめると同時に、「眠気が残るようなことはありませんでしたか?」と、眠気の持越しや過度の鎮静がなかったかどうかを確認します。また、前回伝えなかった錐体外路症状の副作用についても、「手が少し震えるような感じはありませんでしたか?」といった穏やかな表現で確認します。患者さんが特に不安を感じていないようであれば、そのまま服用を継続してもらいましょう。

 
◇3回目の来局

さらに踏み込んで副作用の確認をしていきます。
「空腹感を感じることはありませんでしたか?」「のどが渇くことがありませんでしたか?」と、空腹感・食欲増進・高血糖の副作用出現の有無を確認します。
もし患者さんに思い当たることがあり、それを苦痛に感じていたり、健康を損なう危険があると判断される場合は、医師に相談することを提案したり、薬剤師から医師に連絡を入れるなどしましょう。

 
服薬指導を重ねることで、患者さんとの信頼関係にも変化が生じます。具体的な副作用や体調についてなど「初対面の相手には話しづらいな」と感じられやすい内容は、会話の中で患者さんの笑顔が出るような信頼関係が構築できてから少しずつ話していきましょう。
 

指導したい内容は一度に伝えず、3回ほどに分けて伝えよう

服薬指導のための5つのポイント

 
精神疾患の患者さんに対する服薬指導のポイントは5つあります。
 

  1. 必ずしも初回で副作用について説明する必要はない
  2. 薬剤師は「患者さんの健康に対して不利益になる副作用の情報は、なんとしてでも伝えないと、万が一患者さんに何かが起こったときに責任問題になる」という恐れや不安を感じがちです。
    ですが、例えばオランザピン(商品名:ジプレキサ)が低用量(2.5~5㎎)で処方されている場合で考えてみましょう。MARTAに分類されるオランザピンは、前回示した通り私たちが心配するような錐体外路症状が起こる可能性は低いと考えられています。
    そこで、処方薬や処方量から鑑みて、今回は伝える必要がない副作用だと判断して、まずはしっかりと服薬してもらうことに集中します。
     

  3. 初回で疾患名を話題にしない
  4. 精神疾患の診断名は、初回で患者さんに伝えられているとは限りません。
    例えば抗うつ薬が処方されていたとしても「うつの症状で受診されたのですか?」といった尋ね方をすると、まだ診断名を医師から告げられていないこともあるので、「私、うつ病だったのか……」と患者さんを驚かせたり不安にさせたりすることになってしまいます。こうしたことから服薬拒否・治療拒否などにつながる場合もあるので、注意が必要です。
     

  5. まずは“セミオープンな質問”で症状について尋ねる
  6. 抗うつ薬が処方されていた場合でも、まずは「最近、元気があまり出ないような感じだったり、疲れやすかったりしますか?」など、疾患ではなく現在のつらい症状を尋ねます。
    「はい・いいえ」のどちらかで答えられる“クローズな質問”ではなく、患者さん自身が話したくなるような質問をします。すべてを患者さんが話さなければならない“オープンな質問”では患者さんの負担が大きいため、“セミオープンな質問”を心がけましょう。
     

  7. 医師につらい症状を伝えられない患者さんにはアドバイスを
  8. 薬剤師が副作用の出現について、「眠くて朝が起きられないことがありませんか」、「手足が震えることはありませんか」、など確認をしていると「そういえば……」と、つらい症状について口にする患者さんがいます。
    診察時に医師に伝えたかを確認をし、まだ伝えていないようだったら、次回どのように医師に伝えたらいいのかをアドバイスします。また患者さん自身から伝えることが難しいようだったら、薬剤師から医師に申し送りをするなどして、患者さんが服薬を継続するために、つらい症状を取り除くためのサポート(減薬の提案等)をしましょう。
     

  9. 治療のゴールと、その途中にある道しるべとなる目標を明示する
  10. 漫然と薬物治療を続けていくのは患者さんにとってつらいものです。モチベーションの維持も難しくなります。
    そこで薬物療法のゴールは「もとの生活に戻ること」であり、その途中にどのような副作用が起こり、身体がどのように変化していくのかを説明し、ゴールまでの道筋を示すようにします。
     
    例えば、抗うつ薬のミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)の場合。
    「この薬は服薬はじめの日中も眠気が強くなるけれど、1週間で慣れてくるので服薬を継続すること。効果が発現するのに1ヵ月かかり、その後は維持のために、少なくとも半年から1年服用を継続する必要があること」を示します。「服用を継続することで、しっかりと寝つけるようになる。次の段階として不安感や頭痛など身体症状がおさまり、おっくう感が消失し意欲が改善。医師の判断のもと、元の生活へと戻っていける」と伝えます。このように、服用後はどのような経過がみられるのかを簡単に説明しておくと、患者さんも安心できるでしょう。

 

精神科の患者さんの服薬指導~3つのステップ~

 
それでは具体的な服薬指導の進め方を、統合失調症の患者さんが来局した場合を例にお話ししましょう。
 
◇1回目の来局

オランザピン(商品名:ジプレキサ)を5㎎、就寝前服用で処方された患者さんが来局しました。
オランザピンは非定型抗精神病薬で鎮静効果が強い薬です。したがって、医師の処方意図は患者さんを「落ち着かせてあげること」「眠らせてあげること」と推測されます。
そこで患者さんには「最近、眠れないことがありますか? イライラしたり、敏感な状態でしょうか?」と症状について尋ね、「次回、お薬を飲んで眠れるようになったかどうか教えてください」と、次回につなげる約束をします。
今回は処方内容から錐体外路症状が出る可能性は低いと判断したため、この段階で副作用については質問がない限り伝えるのは控えます。

 
◇2回目の来局

オランザピンを服用して眠れたかどうかを確かめると同時に、「眠気が残るようなことはありませんでしたか?」と、眠気の持越しや過度の鎮静がなかったかどうかを確認します。また、前回伝えなかった錐体外路症状の副作用についても、「手が少し震えるような感じはありませんでしたか?」といった穏やかな表現で確認します。患者さんが特に不安を感じていないようであれば、そのまま服用を継続してもらいましょう。

 
◇3回目の来局

さらに踏み込んで副作用の確認をしていきます。
「空腹感を感じることはありませんでしたか?」「のどが渇くことがありませんでしたか?」と、空腹感・食欲増進・高血糖の副作用出現の有無を確認します。
もし患者さんに思い当たることがあり、それを苦痛に感じていたり、健康を損なう危険があると判断される場合は、医師に相談することを提案したり、薬剤師から医師に連絡を入れるなどしましょう。

 
服薬指導を重ねることで、患者さんとの信頼関係にも変化が生じます。具体的な副作用や体調についてなど「初対面の相手には話しづらいな」と感じられやすい内容は、会話の中で患者さんの笑顔が出るような信頼関係が構築できてから少しずつ話していきましょう。
 

成井繁先生プロフィール
成井 繁先生プロフィール
アイ調剤薬局薬局長。精神科薬物療法認定薬剤師。認定実務実習指導薬剤師。日本アンチドーピング機構公認スポーツファーマシスト。
1989年明治薬科大学卒業。2015年10月に日本病院薬剤師会が認定する「精神科薬物療法認定薬剤師」の認定を薬局薬剤師として初めて受け、特に精神科領域の患者さんへの薬物治療に尽力し、地域医療に貢献している。

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