薬にまつわるエトセトラ 薬にまつわるエトセトラ

学べば学ぶほど、奥が深い薬の世界。もと製薬企業研究員のサイエンスライター・佐藤健太郎氏が、そんな「薬」についてのあらゆる雑学を綴るコラムです。薬のトリビアなどを伝えられると、患者さんとの距離も近くなるかもしれませんね。

第46回 日本の製薬企業 売上トップ3はどんな会社か

前回の「世界のメガファーマトップ3」に続き、今回は日本の製薬企業トップ3を紹介してみましょう。

首位・武田薬品工業

日本首位は、言わずと知れた武田薬品工業です。国内ではずっとトップに君臨してきましたが、アイルランドのシャイアー社を買収し、さらなる規模拡大を図っている――とは、前々回にも取り上げた通りです。買収が完了すれば、現在世界19位の武田は、単純合算で9位へと躍進することになります。

1781年に、近江屋長兵衛が大阪の道修町に開業した、和漢薬の仲買商店が武田薬品のルーツです。「中興の祖」といわれるのが5代目武田長兵衛で、1943年に「武田薬品工業」へ社名を変更、研究部門を拡充して日本最大の製薬企業への礎を築きました。

このように、社長は代々「武田長兵衛」を襲名するなど、保守的な面も強い会社ではありました。しかし1993年に就任した武田國男社長は襲名を行なわず、抗潰瘍薬タケプロン、糖尿病治療薬アクトス、降圧剤ブロプレス、前立腺がん治療薬リュープリンの「四本柱」を育て上げ、武田の黄金時代を演出しました。

しかしこれらブロックバスター群が特許切れを迎え、これに代わる新薬を創出できなかった武田は、買収戦略へと舵を切ります。ただし、これまでミレニアム、ナイコメッドといった海外企業を買収してきたものの、成功とはいえないとの指摘が多いようです。

経営会議14名のメンバー中、フランス生まれのクリストフ・ウェバー社長をはじめ、日本人は3人だけという文字通りグローバルな首脳陣が武田を率います。かつての保守的、ドメスティックな企業から急速に生まれ変わった印象ですが、今後世界の巨大企業とどう渡り合ってゆくか注目されます。

2位・アステラス製薬

2位のアステラス製薬は、2005年に山之内製薬(当時国内3位)と藤沢薬品工業(当時国内5位)が合併してできた会社です。社名は「星」を意味するラテン語「stella」、ギリシャ語「aster」などからの造語で、「明日を照らす」という意味もかけています。ちなみに、会社のロゴも星の形ですが、よく見ると「藤沢」の「フ」と「山之内」の山型を組み合わせたデザインになっています。

山之内製薬は、1923年に山内健二によって創設された「山之内薬品商会」をルーツとします。神経痛・リウマチの治療薬カンポリジンによって製薬企業としての基礎を築き、1940年に社名を「山之内製薬」へと改称します。戦後には海外から積極的に技術を導入し、1970年に抗生物質ジョサマイシン、1985年に胃潰瘍などの治療薬ガスターなどの新薬を送り出しています。

一方の藤沢薬品は、1894年に初代藤澤友吉が、「藤澤商店」を大阪・道修町で創設したことに始まります。樟脳の販売などで名を挙げ、1943年に「藤沢薬品工業」へと改称しました。1971年には抗生物質セファメジンを発売、その大ヒットによって一挙に大手企業の一角にのし上がります。また1993年にはタクロリムス(移植手術時の拒絶反応抑制剤)を発売、現在も主力製品のひとつになっています。

2005年に両社が合併してスタートしたアステラス製薬は、純利益や株式の時価総額で一時武田を上回るなど、着実に成長を遂げています。ただし2019年以降に主力製品の特許切れを迎えることから、その対策が急務とされます。武田のような大型買収は行ってこなかった同社ですが、今後戦略に変化はあるでしょうか。

3位・第一三共

3位の第一三共は、やはり2005年に三共(当時国内2位)と、第一製薬(同6位)が合併してできた会社です。アステラス発足時に、三共またはエーザイも加わった三社合併という話も出ていましたが、三共は第一と組む道を選択しました。

三共は、1899年に塩原又策、西村庄太郎、福井源次郎3名の共同出資により、「三共商店」としてスタートしました。このころ、アメリカ在住の高峰譲吉が開発したタカジアスターゼを輸入販売する目的でした。1913年には三共株式会社となり、高峰が初代社長となります。

三共胃腸薬、風邪薬「ルル」などの一般用医薬品、ドリンク剤「リゲイン」などのヒットでも知られますが、医療用医薬品でもメバロチン(高脂血症治療薬)という歴史的製品を送り出しています。

第一製薬は、慶松勝左衛門によって1915年に設立された、「アーセミン商会」がその前身です。当初は梅毒治療薬サルバルサンの輸入販売を行っていましたが、1937年に国産第一号サルファ剤となったテラポールを発売するなど、抗菌薬に強みを発揮しました。

合併によって誕生した第一三共は、インドのランバクシー社の買収でつまずくなど、難しい局面を経験していますが、肺がん治療薬DS-8201(臨床試験中)など期待できる品目も出てきています。業界再編の台風の目との見方もあり、今後が注目される企業です。

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佐藤 健太郎(さとう けんたろう)

1970年生まれ。1995年に東京工業大学大学院(修士)を卒業後、国内製薬企業にて創薬研究に従事。2008年よりサイエンスライターに転身。2009年より12年まで、東京大学理学系研究科化学専攻にて、広報担当特任助教を務める。著書に「医薬品クライシス」「創薬科学入門」など。2010年科学ジャーナリスト賞、2011年化学コミュニケーション賞(個人)。

『世界史を変えた薬』(講談社現代新書)が発売中。

ブログ:有機化学美術館・分館

佐藤 健太郎(さとう けんたろう)

1970年生まれ。1995年に東京工業大学大学院(修士)を卒業後、国内製薬企業にて創薬研究に従事。2008年よりサイエンスライターに転身。2009年より12年まで、東京大学理学系研究科化学専攻にて、広報担当特任助教を務める。著書に「医薬品クライシス」「創薬科学入門」など。2010年科学ジャーナリスト賞、2011年化学コミュニケーション賞(個人)。

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