国試過去問 国試過去問

薬剤師国家試験は薬剤師なら誰もが必ず通った道。毎年、試験の難易度や合格率が話題になりますが、国試は“現役薬剤師”として基本的な知識を再確認するチャンス。橋村先生の解説で、国家試験の過去問を「おさらい」しましょう!

第32回 薬剤師が心がけたい「車の運転」に関する服薬指導

医療用医薬品添付文書のなかには、「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること」(運転等禁止)、あるいは「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には特に注意させること」(運転等注意)と記載されている薬剤があります。
では、特定の疾患をもつ患者さんは、自動車を運転してはいけないのでしょうか。薬剤を服用せざるを得ない患者さんへの指導はどうあるべきなのか、考えていきましょう。

【過去問題】

第103回 薬剤師国家試験問題 問89から出題

問 89(法規・制度・倫理)

眠気が起こることがあるので、自動車運転等、危険作業を行う際に注意するよう指導する必要性が最も低い薬物はどれか。1つ選べ。

  • 1ブロチゾラム
  • 2プレガバリン
  • 3アモキサピン
  • 4d-クロルフェニラミンマレイン酸塩
  • 5安息香酸ナトリウムカフェイン

<解答>5

解説

  • 1:ブロチゾラムは、ベンゾジアゼピン系催眠薬
  • 2:プレガバリンは、中枢性鎮痛薬
  • 3:アモキサピンは、三環系抗うつ薬
  • 4:d−クロルフェニラミンマレイン酸塩は、抗ヒスタミン薬
  • 5:安息香酸ナトリウムカフェインは、中枢興奮・鎮痛薬

1~4はいずれも中枢抑制作用があります。眠気が発現する可能性があるので、服薬指導時に自動車運転等、危険作業を行う際の注意を促しましょう。5はカフェインによる眠気を除去する作用があるため、眠気を起こす可能性は低いと考えられます。

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– 実務での活かし方 –

免許は取得できても、薬には運転禁止の記載が

医薬品の服用により、自動車運転等の最中に意識障害等の副作用が発現し、事故が発生した場合、第三者へも危害を及ぼす可能性があります。

平成25年5月29日、厚生労働省は「医薬品服用中の自動車運転等の禁止等に関する患者への説明について」を通知し、患者さんに対し必要な注意喚起を呼びかけています。
また、平成26年5月20日には、交通事故により人を死傷させた場合の罰則を強化した「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が施行。同年6月12日施行の改正薬剤師法では「薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、(中略)必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない」とされています。

医薬品服用中の自動車運転等に関する指導の重要性は高まっています。その反面、自動車の運転を規定する道路交通法において、いわゆる「薬物」について規定されているのは、同法第66 条「何人も、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」のみ。
この法律に従って、添付文書に当該記載のある薬剤を服用している患者さんへ、一律に自動車運転を禁止する指導をしたとしましょう。これは、患者さんの交通社会への参加手段を奪っている、不適切な指導とも考えられるのです。

自動車免許取得の際に影響がある疾患(表1)
疾患 詳細 疾患コントロールが良好な場合の免許取得
総合失調症
てんかん
再発性の失神 神経起因性失神
不整脈を原因とする失神
起立性低血圧
無自覚性の低血糖症 薬剤性低血糖症
腫瘍性疾患、内分泌性疾患、肝疾患、インスリン自己免疫症候群など
躁うつ病
重度の眠気の症状を
呈する睡眠障害
脳卒中 脳梗塞
脳出血
くも膜下出血
一過性脳虚血発作など
認知症 アルツハイマー型 不可
血管性など
アルコール中毒

表1で確認できるように、認知症以外の疾患は、各々に厳密な条件がありながらも、基本的に免許取得可能となっています。
つまり、自動車運転者に対して自らの健康状態を良好に保つこと、そのために、運転操作に支障がない薬物を適切に用いることを自己責任とし、免許取得が認可されているのです。

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事例

薬の副作用による運転への影響を正しく伝える

薬剤師の現場で悩ましいのは、運転に支障がない薬物を自己責任で使えば免許は取得できるのに、薬剤によっては運転禁止の記載があるということ。
例えば、ほとんどの抗てんかん薬には運転等禁止の記載があり、自動車を運転できないことになっています。ただ、患者さんであろうと健常者であろうと、すべての人に事故を起こす可能性があるもの。逆に、体調をコントロールすれば運転はできるのです。それでも特定の薬剤を服用している患者さんの場合、疾患発作のコントロールが良好だとしても、運転を禁止されているのが現状です。

自動車運転などの際に注意が必要な薬剤(表2)
自動車運転等に注意を要する主な理由となる副作用 薬効分類
眠気 アレルギー用薬、片頭痛治療薬
注意力・集中力・反射運動能力等の低下 抗てんかん薬
催眠鎮静薬、抗不安薬、精神神経用薬
めまい ふらつき 血圧降下薬
羞明(まぶしい)、目のかすみ、視覚障害(目がチカチカするなど)

抗生物質
けいれん、鎮静、運動失調、錯乱 抗ウイルス薬
眠気、めまい 制吐薬、麻薬、鎮咳去たん薬
しびれ 抗不整脈薬
意識障害 アルツハイマー治療薬
眼の調節障害(見えにくい、目のかすみ)

排尿障害治療薬
意識消失 解熱鎮痛薬
前兆のない突発的睡眠 眼の調節障害(見えにくい、目のかすみ)傾眠、注意力・集中力・反射運動能力等の低下 抗パーキンソン薬
散瞳、調節麻痺 散瞳(まぶしい、見えにくい)
調節麻痺(ピントが合わない)

散瞳薬

十分に考慮すべきなのは、
「患者さんが必要としている薬剤は、運転に支障をきたさないように疾患をコントロールするための薬剤」なのか、それとも「運転などと無関係の治療のための薬剤の副作用で、運転に支障が発現する可能性がある」のか。
前者に関しては医師からの診断によって左右されてしまいますが、
後者に関しては薬剤師が服薬指導の際に、患者さんの事情に合った副作用が少ない薬剤を、医師へ処方提案することが可能です。

インベアード・パフォーマンスを考慮した処方提案を

例えばアレルギー疾患治療薬の「抗ヒスタミン薬」。これが脳に移行すると、脳内でのヒスタミンの働き(日中眠くならない、学習能力や記憶力を高める、活動量を増やすなど)をブロックして、知らず知らずのうちに「パフォーマンスの低下」が起こる場合があります。これを「インペアード・パフォーマンス」といいます。

インペアード・パフォーマンスと眠気の違い(表3)
  インベアード・パフォーマンス 眠気
脳内H1受容体占拠率との関係 比例する 比例しない
自覚 ない(気付きにくい、能力の低下) ある

表3の通り、インペアード・パフォーマンスは自覚しやすい「眠気」とは違い、本人が気付かないうちに生じることがあります。そのため運転中の知らず知らずのうちに、歩行者などに気付くタイミングやブレーキを踏むタイミングが遅れるなどして、交通事故を起こしやすくなる可能性があります。この系統の薬剤については、脳内のヒスタミン受容体における薬剤の占拠率が公開されていて、患者さんに合った薬剤を提案することが可能です。

薬剤と自動車運転の関わりについて、決定的な判断を下すことは難しいもの。しかし、避けて通ることもできません。大げさかもしれませんが、患者さんやそのご家族、医師、薬剤師が真剣にその薬剤の必要性を考慮し、身近な連携項目として捉え、取り組む必要があるのです。

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト、麻薬教育認定薬剤師資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会 理事。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。ICLSアシスタントインストラクター。

ファーマブレーングループ オフィス・マントル:http://mantle-1995.com

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト、麻薬教育認定薬剤師資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会 理事。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。ICLSアシスタントインストラクター

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