国試過去問 国試過去問

薬剤師国家試験は薬剤師なら誰もが必ず通った道。毎年、試験の難易度や合格率が話題になりますが、国試は“現役薬剤師”として基本的な知識を再確認するチャンス。橋村先生の解説で、国家試験の過去問を「おさらい」しましょう!

第27回 小児喘息治療ガイドライン変更。
ツロブテロールの貼付剤(ホクナリンテープ)・経口薬の長期処方に注意

2017年11月、5年ぶりに小児喘息治療ガイドラインが変更となりました。小児の喘息治療において使用方法も簡易であることから幅広く利用されているツロブテロール貼付剤が、このガイドラインから長期に使用するべきではないと表記されています。その背景には何があるのでしょうか。薬剤師国家試験第101回の問341を利用して、このガイドラインについて確認しましょう。

【過去問題】

第101回 問341から出題

問 341(実務)

8歳男児。ぜん息でかかりつけ医に以下の処方を出してもらっている。

(処方1)
スプラタストトシル酸塩シロップ用 5%1回1.5g(1日3g)
1日2回朝夕食後30日分
(処方2)
ツロブテロールテープ1mg1回1枚
1日1回就寝前胸部に貼付30日分(全30枚)
(処方3)
フルチカゾンプロピオン酸エステルドライパウダーインヘラー50μg60吸入1本
1回1吸入1日2回 朝夕吸入

しかし、発作が頻発し症状が重篤化したため救急車で病院に搬送された。かかりつけ医が処方した薬のアドヒアランスを確認したところ、しっかり服用できていた。発作時の薬物療法として、適切でないのはどれか。1つ選べ。

  • 1アミノフィリンの点滴
  • 2ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウムの点滴
  • 3クロモグリク酸ナトリウムの吸入
  • 4プロカテロール塩酸塩水和物の吸入
  • 5サルブタモール硫酸塩の吸入

<解答>
3

解説

喘息の治療には長期管理薬(コントローラー)と発作時の治療薬(リリーバー)があります。この問題で問われているのは、発作時の治療薬(リリーバー)についてです。

  • 1.アミノフィリンはテオフィリン2分子とエチレンジアミンの塩で、体内においてはテオフィリンとして存在します。テオフィリンの拡散容量は平均的に0.5L/kg(0.3~0.7L/kg)で、目標血中濃度は8~15μg/mlです。
  • 2.ステロイド製剤の吸入は長期管理薬(コントローラー)であり、点滴はリリーバーとして使用します。
  • 3.クロモグリク酸ナトリウムはリリーバーとしては使用しません。
  • 4.5両製剤共にリリーバーとして使用します。

– 実務での活かし方 –

日本小児アレルギー学会による「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(GL)」が5年ぶりに改訂されました。様々な変更点があったこの2017年版(JPGL2017)の中、特に臨床現場で影響しそうな変更点がβ2刺激薬の位置付けです。
簡単に整理してみます。β2刺激薬は気管支拡張作用をもち、作用時間によって長時間作用性と短時間作用性に分類されています。その中の長時間作用性の薬剤の剤型には「吸入薬」「貼付薬」「内服薬」があります。今回のガイドラインの改訂によりβ2刺激薬の「貼付薬」と「内服薬」は、小児喘息の長期管理薬としては原則、推奨されなくなりました。特に貼付薬(ツロブテロール貼付剤[商品名ホクナリンテープ他])は生後6か月から使用できることもあり、小児科を中心に広く使用されているだけに、現場では大きな影響が出る可能性があります。
これまでのガイドラインである2012年度版(JPGL2012)では、この貼付薬と経口薬について、吸入薬と同様に吸入ステロイドで良好なコントロールが得られない場合に追加併用する「長期管理薬」のひとつとしての位置付されていました。それがJPGL2017からは貼付薬と経口薬は新しく設定された「短期追加治療」に用いられる薬として位置付けられています。以下で確認しましょう。

治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4
長期
管理薬
基本
治療
発作回数に応じた
薬物治療
・低用量ICS
・LTRA
※DSCGの削除
・中用量ICS
・低用量SFC
※低用量SFCの追加
・高用量ICS
・中用量SFC
・LTRA
・テオフィリン徐放性製剤
※LABAの削除
追加
治療
LTRA 上記治療薬の併用
※テオフィリン徐放性製剤の削除
下記のいずれかを併用
・LTRA
・テオフィリン徐放性製剤
※LABA、SFCの削除
・ICSの増量
・高用量SFC
・抗IgE抗体
・全身ステロイド薬
短期
追加治療
・2週間以内の貼付薬・内服薬のβ2刺激薬の使用
・コントロール状態の改善に伴い中止、改善なければ治療ステップのステップアップを考慮
発作治療 SABA屯用使用:改善されない場合は急性発作治療

注)
LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬
DSCG:クロモグリク酸ナトリウム製剤
ICS:吸入型ステロイド
SFC:サロメテロール・フルチカゾン配合薬
LABA:長時間作用型β2刺激薬

この「短期追加治療」とは、JPGL2017で「長期管理中に、感冒や季節性の変動などで一過性のコントロール悪化が認められた場合に、2週間以内で追加する治療」と定義されています。つまり治療ステップ1~4を通して良好なコントロール管理下中に一時的なコントロール不良時に2週間利用し、この間に良好なコントロールを得なければ使用を中止して追加治療や次のステップへの変更などを考慮するという利用方法となりました。

このようにβ2刺激薬の位置付けが変更になった背景には、ツロブテロール貼付剤が海外ではあまり利用されていない、同作用をもつ長時間作用性吸入β2刺激薬(LABA)のように、有効性を示すエビデンスがないということ、長期使用の安全性に関する検討も十分なされていないということが挙げられます。

事例

今回紹介した第101回薬剤師国家試験の問341は、JPGL2017発表前だったので8歳の小児に1日1回貼付のツロブテロール貼付剤が30枚処方されるといったケースを取り上げることができました。しかし、今後はこのようなケースは推奨されなくなります。ただこのガイドラインが発表された直後の現時点では、保険適応上使用上限を定められている訳ではありません。注意しながら、処方医に対して慎重な疑義照会をしていく必要性が生まれてきます。

今まで長期に処方されていた患者側からすると、突然の処方制限は混乱の元となります。処方医とその処方意義に関して事前に討議し、適切な使用を円滑に行えるようにしましょう。また薬局内でも非侵襲的に行えるパルスオキシメーターを利用してSpO2を測定し、現在の状態を数字化(96%以上:正常もしくは小発作、92~95%:中発作、91%未満:大発作)することで患者さんと状態に関して共有できるようにしましょう。

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト、麻薬教育認定薬剤師資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会 理事。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。ICLSアシスタントインストラクター。

ファーマブレーングループ オフィス・マントル:http://mantle-1995.com

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト、麻薬教育認定薬剤師資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会 理事。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。ICLSアシスタントインストラクター

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