国試過去問 国試過去問

薬剤師国家試験は薬剤師なら誰もが必ず通った道。毎年、試験の難易度や合格率が話題になりますが、国試は“現役薬剤師”として基本的な知識を再確認するチャンス。橋村先生の解説で、国家試験の過去問を「おさらい」しましょう!

第25回 麻疹、定期接種、予防接種対象疾患……正しいワクチン接種の知識

ワクチンを利用した予防接種は、人の免疫の仕組みを利用し、病気(感染症)の予防に有効であると確認されたワクチンを接種することによって、対象となる疾患のみに対する抵抗力(免疫)を高める方法です。予防接種を受けることにより、感染症を予防し、感染した場合にも重症化しにくくするという効果を期待できます。近年では感染症の原因となるウイルスや細菌などの同定が進み、様々なワクチンが開発され使用されるようになってきました。それに伴い保険薬局では、各ワクチンの特長や欠点を正確に把握し、安全に利用してもらう情報提供も求められます。今回は第101回薬剤師国家試験の問220を利用してその知識を確認していきましょう。

【過去問題】

第101回 問220-221のうち問220から出題

問 220-221

薬剤師は疾病予防にも関わるべきであり、ワクチンに関する知識を深める必要がある。

問220(実務)

薬剤師として知っておくべきワクチンに関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

  • 1麻疹、風疹、水痘及びおたふくかぜのワクチン接種不適当者には妊婦が含まれる。
  • 2B型肝炎ワクチンは抗体価を検査しながら複数回接種することがある。
  • 3副腎皮質ホルモン剤や免疫抑制剤を服用している患者では、生ワクチンの接種ができない場合がある。
  • 4インフルエンザワクチンは、卵アレルギーの人に対しては注意して接種する。
  • 5結核に対する抗体がない場合は、ツベルクリンを接種する。

<解答>5

解説

問220

  • 1:
    妊婦の生ワクチンの接種はワクチンウイルスが胎児に移行する危険性があるため禁忌です。麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎の各ワクチンは生ワクチンを使用します。
  • 2:
    2016年10月1日から定期接種となったB型肝炎ワクチンは、通常、母子感染(垂直感染)、水平感染の予防を目的として、3回接種します。母子感染予防時にはHBワクチンを生後12時間以内に皮下接種し、その後は1カ月、6カ月後の接種が必要です。その後の抗体検査でHBs抗体価が一定の濃度(10mlIU/ml)以上確認されない場合には、追加接種を行います。
  • 3:
    副腎皮質ホルモン剤や免疫抑制剤を服用している患者さんは、免疫機能低下により、生ワクチンに含有されるウイルスが異常増殖し、感染が増強もしくは持続する可能性があります。そのために生ワクチン接種の際には、薬剤の服用中止後一定期間以上の間隔をあける必要があります。
  • 4:
    インフルエンザワクチンの精製方法は、有精鶏卵にウイルスを接種培養し、ウイルスを取り出し不活性化ワクチンとして生成されます。鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギー反応を示す人には、十分な説明を行い、同意を得た上で注意して接種する必要があります。
  • 5:
    ツベルクリンは、結核菌に対する細胞性免疫の有無を診断するために用いられる抗原であり、結核菌に対する抗体産生を目的として接種されるものではありません。以前は結核予防法によりツベルクリン反応陰性の幼児や小学生にBCG接種を施行していましたが、現在は予防接種法に基づき生後1歳に至るまでの定期接種時期にある幼児に対してのみ、ツベルクリン反応検査を行わず、直接BCG接種を行います。

– 実務での活かし方 –

最初に表1で、予防接種法で定められている疾患の選別と、その具体的な対象疾患を確認します。表2では各種ワクチンの分別や代表的な対象疾患を挙げています。

表1:予防接種対象疾患
分類 定義 対象疾患
予防対象 努力義務の有無 接種推奨の有無
A類疾病 集団 ジフテリア・百日せき・破傷風・急性灰白髄炎(ポリオ)・麻疹・風疹・日本脳炎・結核・Hib(ヒブ)感染症・小児の肺炎球菌感染症・ヒトパピローマウイルス感染症・水痘・B型肝炎
B類疾病 個人 インフルエンザ・高齢者の肺炎球菌感染症
表2:ワクチンの種類
種類 主な精製方法   対象疾患
不活性化ワクチン 細菌やウイルスをホルマリン等の薬品で不活性化し、精製 定期 B型肝炎・ヒブ・日本脳炎・四種混合・HPV

任意 インフルエンザ・A型肝炎・髄膜炎
生ワクチン 細菌ウイルスの病原性を弱くしたもの 定期 ポリオ・BCG・MR(麻疹・風疹)・水痘
任意 ロタウイルス・おたふく
トキソイド 病原体が増殖する過程で産出する毒素を無毒化して抗原として利用 任意 ジフテリア・破傷風ワクチン

この中で、近年散発して発生している麻疹について表3で確認しましょう。

表3:麻疹ウイルス
宿主 ヒトのみ
感染経路 空気感染・飛沫感染・接触感染
潜伏期間 10~12日間
症状変化 カタル期:2~4日間
発疹期:3~5日間
回復期
増殖部位 ・リンパ組織を中心に増殖
・一時的に免疫抑制状態を生じる
合併症 麻疹肺炎・麻疹脳炎
不活化 熱・紫外線・酸・エーテル
ワクチンによる免疫獲得率 1回接種93~95%
2回接種97~99%

麻疹は麻疹ウイルス(パラミクソウイルス科・モリビリウイルス属)に属するRNAゲノムを持つウイルスです。麻疹ウイルスの血清型は単一なため、毎年マイナーチェンジするインフルエンザとは異なり、1960~70年代に開発されたワクチン株は現在の流行株に対しても有効な抗体を誘導できます。

ここで、日本における麻疹の定期接種について振り返ってみましょう。
まず2005年、日本が属するWHO西太平洋地域(WPR)の地域委員会では、2012年までにWPRから麻疹を排除することを決議しました。それを受けて日本では、2006年に麻疹含有ワクチン(いわゆる麻疹風疹混合〔MR〕ワクチン)を用いた第1期(1歳児を対象)、第2期(小学校就学前の1年間の幼児を対象)の2回接種が定期予防接種として導入されました。2006年4月2日以降に生まれた人は、定期接種として2回のMRワクチンを接種していますが、それ以前に生まれた人は、1回のワクチン接種のみの場合が多く、免疫の強化がされていません。さらに時間の経過により免疫が弱くなったと考えられ、現在の感染拡大の中心的な年代となっています。
発症している患者さんの年齢群を確認すると、以前麻疹は主に5歳以下の小児が発症する感染症と思われていましたが、2008年に10~20代を中心に流行しました。この時の19歳以下の患者は66.7%、うち10代は43.1%, 10歳未満が23.6%でした。その後、上記のように中高生に対する2回接種のワクチン接種等の効果により19歳以下の患者の割合は減少し、2017年では19.2%となりました。
一方で、20歳以上が2015年以降70%を超え、2017年は80.7%に達している(表4)ことから、現代では麻疹は5歳以下の小児の代表的な疾患ではなく20歳以上の成人が感染する代表的な感染症といえます。また2016年度のMRワクチンの接種率は、第1期97.2%、第2期93.1%。第1期は7年連続で95%を上回り、第2期は9年連続して90%を超えたものの、目標である95%には到達していません。

表4:麻疹患者の年齢分布(2008~2017年)

出典:NIID 国立感染症研究所

麻疹は現在でも海外の多くの国で流行しています。約5,000万人近い人が日本に出入国している現状では、海外からの麻疹ウイルスの持ち込みを完全に防ぐのは困難。麻疹ウイルスが持ち込まれたとしても、流行を拡大させないことが重要となってきています。そのためには1.2回の定期接種の接種率が95%以上となるように確実に実施し抗体保有率を高め、2. 患者の早期発見で, 適切な感染拡大防止措置をとれるような環境強化、3. 麻疹ウイルスに感染するリスクの高い医療関係者、保育関係者、学校関係者、海外旅行者、空港等不特定多数の人と接する機会の多い職場で働く人、ワクチン接種機会が1回であった世代等へのワクチン接種の奨励等が求められます。

事例

予防接種は、感染症を予防し、またそのまん延を防ぐことにより、国民の健康を守る重要な対策の一つであり、1. 個人の感染予防・重症化の防止、2. 多くの人が接種を受けることにより、感染症のまん延を防止する(集団免疫)という社会的な意義も持っています。予防接種自体は病院や診療所、保健所などで行われ、保険薬局では直接的な関与はありません。しかし、乳幼児や高齢者をはじめとして国民の健康を感染症から守るという公衆衛生上、予防接種法という公的な仕組みとそのワクチンの種類や特徴、投与間隔などのスケジュールについて、十分な知識を持っていることでより信頼される薬剤師になれるでしょう。

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト、麻薬教育認定薬剤師資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会 理事。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。ICLSアシスタントインストラクター。

ファーマブレーングループ オフィス・マントル:http://mantle-1995.com

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト、麻薬教育認定薬剤師資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会 理事。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。ICLSアシスタントインストラクター

ファーマブレーングループ オフィス・マントル:http://mantle-1995.com

<PR>満足度NO.1 薬剤師の転職サイト