国試過去問 国試過去問

薬剤師国家試験は薬剤師なら誰もが必ず通った道。毎年、試験の難易度や合格率が話題になりますが、国試は“現役薬剤師”として基本的な知識を再確認するチャンス。橋村先生の解説で、国家試験の過去問を「おさらい」しましょう!

第24回 うつ病の治療薬、クエチアピンの適応拡大。抗うつ薬処方は変化するか?

以前、五月病はうつ病のひとつとして考えられていましたが、現在では適応障害のカテゴリーとして治療されることが多くなりました。基本的に適応障害はストレス原因がはっきりしているため「ストレスの現況から離れると6カ月以上症状が持続することはない」とされていますが、6カ月を過ぎても症状が改善しないこともあり、このときにはじめて「うつ病」といった診断に至ることがあります。
さて今月は、2001年2月に発売されたクエチアピン製剤について取り上げます。発売時、海外では統合失調症と双極性障害に適応をもっていましたが、日本では統合失調症のみの適応で、2017年にようやく双極性障害への適応が取得されました。そんなクエチアピン製剤によるうつ病の治療方法を、第102回薬剤師国家試験を使って確認しましょう。

【過去問題】

第102回 問296-297出題

問296-297

45歳女性。10年前より双極性障害で加療中。処方1の維持療法で病状は安定していたが、ここ1カ月で症状が悪化したため、本日新たに処方2が追加された。

(処方1)
炭酸リチウム錠 200mg 1回1錠(1日2錠)
1日2回朝夕食後7日分

(処方2)
ラモトリギン錠 25mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回夕食後7日分

処方箋を受け取った薬局の薬剤師は、安全に薬物療法を実施できるよう、患者に対し注意すべき事項を伝えた。

問296(実務)

今回追加処方された薬剤の重大な副作用の初期症状の組合せとして、患者に伝えるべきことはどれか。1つ選べ。

  • 1皮膚の広い範囲が赤くなる、38℃以上の熱がでる、眼が充血する、唇や口の中がただれる、のどが痛む、体がだるい。
  • 2急に強い空腹感をおぼえる、冷や汗がでる、手足がふるえる、力の抜けた感じがする。
  • 3息切れがする、息苦しくなる、空咳がでる、発熱する。
  • 4筋肉が痛んだりこわばったりする、手足がしびれる、手足に力が入らない、尿の色が赤褐色になる。
  • 5眼の痛みを生じる、眼がかすむ、頭痛がする、吐き気がする。

問297(病態・薬物治療)

この患者の薬物治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  • 1ラモトリギンは、気分エピソードの中でも、特にうつ状態に対する効果が強い。
  • 2ラモトリギンが追加されたので、定期的なラモトリギンの血中濃度測定を行う必要がる。
  • 3炭酸リチウムの1日投与量が 400mg なので、定期的な血中濃度測定を行う必要はない。
  • 4炭酸リチウムの中毒が疑われる際の治療には、ループ利尿薬が適している。
  • 5ラモトリギンが使用できない場合は、オランザピンを推奨する。

<解答>
問296:1
問297:1、5

解説

問296

この問いで追加併用となったラモトリギンの重大な副作用は、中毒性表皮壊死融解症及び皮膚粘膜眼症候群です。発熱、眼充血、顔面の腫脹、口唇・口腔粘膜や陰部のびらん、皮膚や粘膜の水疱、紅斑、咽頭痛、そう痒、全身倦怠感等の異常を認めた場合には直ちに服用を中止し、適切な処置を行うこと、とされています。

  • 2:低血糖症状の内容であり、ラモトリギンでは重大な副作用として、低血糖発現の添付文書の記載はありません。
  • 3:間質性肺炎の内容であり、急性肺障害及び間質性肺炎発現の添付文書の記載はありません。
  • 4:横紋筋融解症の内容であり、横紋筋融解症発現の添付文書の記載はありません。
  • 5:緑内障の内容であり、眼圧上昇の添付文書の記載はありません。

問297

2.ラモトリギンは、血中濃度によりその効能効果と副作用発現の因果関係がはっきりしていないため、その測定意義はほぼありません。双極性障害に使用する薬剤で、薬剤血中濃度の測定が必要な薬剤は炭酸リチウム、バルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピンです。
3.炭酸リチウムの添付文書上の用量は以下の通りです。

  • 1日400~600mgより開始、1日2~3回分割経口投与
  • 以後3日~1週間ごとに1日1,200mgまで漸増
  • 維持量1日200~300mg、1~3回分割経口投与に漸減

設問は400mgで用量内ではありますが、定期的な血中濃度測定は必要となります。
4.リチウム中毒が発現した場合、特異的な解毒剤はないので、投与の中止が必要となります。さらに、感染症の予防、心・呼吸機能の維持とともに補液、利尿剤(マンニトール、アミノフィリン等)等により本剤の排泄促進、電解質平衡の回復を図り、経過不良や腎機能低下が著しい場合には、血液透析を行います。

– 実務での活かし方 –

まず、うつ病という疾患にはいくつかのタイプがあります。表1で確認しましょう。

表1

うつ病は、表1のように大きく2つに分類され、うつ状態だけが続く「うつ病性障害」と、躁状態とうつ状態をくり返す「双極性障害」があります。
うつ病性障害は、症状の程度や、症状が持続する期間によって「大うつ病性障害」と「気分変調性障害」に分類されます。大うつ病性障害は、一般にうつ病と呼ばれていて、気分障害の中で最も多くみられるもの。気分変調性障害は、抑うつ症状は軽いものの、これが長く続くタイプです。
また双極性障害は躁うつ病とも呼ばれ、うつ病と同じ気分障害の中のひとつに分類されます。うつ状態だけでなく気分が異常に高揚する躁状態もあり、2つが交互に現れる疾患です。躁状態とうつ状態の現れるサイクルは個人差が大きく、うつ病だと思われていたのに何年もたってから躁状態が現れたというケースもあります。
この双極性障害はそれぞれ治療方法が異なります。また、抑うつ状態がありながらも、うつ病に典型的な症状の一部がみられないものを非定型うつ病と分類し、近年若い世代を中心に目立つようになりました。

事例

前述のように、双極性障害時の躁状態と抑うつ状態では治療方法が異なるため、患者の状態観察が重要になってきます。表2で確認しましょう。

表2
躁病エピソードの治療 抑うつエピソードの治療 抑うつエピソード維持療法
第一選択 第二選択 推奨され
ない治療
第一選択 第二選択 推奨され
ない治療
第一選択 第二選択 推奨され
ない治療
単独 併用 単独 併用 単独 単独 単独 単独 併用
非定型
抗精神病薬
リチウム
オランザピン リチウム
アリピプラゾール リチウム リチウム
クエチアピン リチウム リチウム/
バルプロ酸
リスペリド リチウム
アセナピン
パリペリドン
バルプロ酸 非定型
抗精神病薬
リチウム
カルバマゼピン
ラモトリギン リチウム
トピラマート
ベラパミル
三環系
抗うつ薬
抗うつ薬
単独治療

1)躁状態
以前は気分安定薬(リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン)と併用する抗精神薬は定型抗精神薬が選択されていました。錐体外路症状や過鎮静が問題となっていましたが、最近では気分安定薬様作用が期待される非定型抗精神薬との併用もしくは非定型抗精神薬単独での治療が勧められています。

2)抑うつ状態
双極性障害における抑うつは、過少診断傾向や難治例、自殺リスクの増加、躁転のリスク増加などが問題となります。双極性障害治療の目標を、うつ状態の寛解及び長期的な再発予防と位置付けし、それを考慮に入れたうつ状態からの治療薬選択が必要となります。
抗うつ薬(特に三環系抗うつ薬)は躁転リスクが高くなるため、単独使用はもちろん気分安定薬との併用に関しても推奨されません。

近年、上記のように様々な状態に対して多くの薬剤選択が可能になってきました。このような中、既に海外では気分安定作用が認可されています。それが、双極性障害における躁症状にもうつ症状にも効果が認められ第一選択薬として位置付けされているクエチアピンで、2017年に日本でも「双極性障害におけるうつ症状の改善」への保険適応が認可されました。

表3にてクエチアピンの各受容体への影響を確認します。

表3
受容体への作用 効果 副作用
ドパミンD2受容体遮断作用 陽性症状改善 錐体外路症状・高プロラクチン血症
セロトニン1A受容体作用 陰性症状改善・認知機・・P
セロトニン2A受容体遮断作用 陰性症状改善・錐体外路症状改善 睡眠が深くなる
セロトニン2C受容体遮断作用 体重増加
アドレナリンα1受容体遮断作用 ふらつき・立ちくらみ・射精障害
アドレナリンα2受容体遮断作用 陰性症状改善・認知機・・P
ヒスタミン1受容体遮断作用 食欲増進・体重増加・眠気
ムスカリン受容体遮断作用 口渇・便秘・排尿困難

各受容体への作用の中でも、特にセロトニン1A受容体作用やアドレナリンα2自己受容体遮断作用などによって、中脳皮質系(前頭前野)でのドパミンの働きが活発化します。これにより脳の働きが活発になり、陰性症状や認知機能の改善効果がみられはじめ、抗うつ効果につながります。

どの薬剤にも共通することは、自己判断にて勝手に服用を中止すると、症状が逆戻りすることなど、結果として治療が長引くことになるということです。通常の生活に戻ってからも半年~1年くらい飲み続ける必要があります。
そのため保険薬局での対応は、病態が安定してからのアドヒアランスが非常に重要となります。病態が安定してしまうと、元来痛み、痒みなどの不快な自覚症状に乏しいことから、健常者と同様な生活が送れるため、受診しなくなるケースが多くなるもの。躁状態とうつ状態の現れるサイクルは個人差が大きく場合によっては年単位での症状発現も点在します。日頃の患者との何気ない会話から変化を読み取れるようにつとめましょう。

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト、麻薬教育認定薬剤師資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会 理事。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。ICLSアシスタントインストラクター。

ファーマブレーングループ オフィス・マントル:http://mantle-1995.com

橋村 孝博(はしむら たかひろ)

クリニカル・トキシコロジスト、スポーツファーマシスト、麻薬教育認定薬剤師資格を有する薬剤師。
明治薬科大学卒業後、大学病院、中堅総合病院、保険薬局に勤務。
愛知県薬剤師会 理事。緩和医療薬学会評議員。金城学院大学薬学部研究員。ICLSアシスタントインストラクター

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