聞きたい!薬局実務裏ワザ 聞きたい!薬局実務裏ワザ

第14回 中垣亜希子 先生

ちょっとした体調不良など、病気としての症状を起こす前の段階「未病」での手当てを可能にしてくれる中医学。今回は、薬膳薬局巣鴨店の中垣亜希子先生に中医学の考えを取り入れたセルフメディケーションの方法についてうかがいました。全6回シリーズです。

Q
病院に行くほどではない不調の改善や、東洋の薬によるセルフメディケーションを希望される患者さんへの応対に自信がなく、「中医学に基づいたアドバイスができれば……」と感じることがあります。そもそも、『生薬を使う医療=漢方療法』と考えてもよいのでしょうか?

まずは日本漢方と中医学(中国伝統医学)の違いの把握から

日本漢方(漢方医学)と中医学(中国伝統医学)は別のもの

 

日本では一般的に生薬を使う医療がひとまとめに『漢方』と呼ばれていますが、そこには漢方医学と中医学の両方が含まれています。漢方医学と中医学は異なる学問であるため、専門家がそれぞれいらっしゃいます(折衷派もいます)。

 

そもそも『漢方』という呼び名は、江戸時代に、オランダから伝来した西洋医学『蘭方』に対して、それまであった日本の伝統医学を『漢方』と呼び、区別するようになったのが始まりです。他方で中医学とは、「中国伝統医学」の略称で、西洋医学とは異なる理論—陰陽五行説などの自然哲学に基づいた、中国の伝統医学を指します。

 

日本漢方のルーツは中医学ですが、日本に伝来してから傷寒論(しょうかんろん:約1800年前に書かれた中国の医学書)など一部の中医学書を基本に、腹診を重視して日本独自の発展をとげたため、現在では中医学とは異なる学問としてとらえられています。ですから中国には、『漢方』と呼ばれるものはありません。

 

日本漢方では、傷寒論などを基本とした『方証相対(ほうしょうそうたい)』という経験的・実践的手法を用います。例えば、『“寒気・首すじや肩のこり・頭痛・汗が出ない”という“葛根湯証”』には『葛根湯』、というように、カルタの上の句と下の句のように、症候と方剤を理屈抜きで対応させます。カルタの上の句と下の句の間の「何故?」にあたる病気の原因・病気のメカニズムについては追及しません。そのため、日本漢方では傷寒論に書いてある症候と方剤をすべて覚えます。豊富な経験と感性が求められ、熟達すればとてもよく効きます。熟練の度合いや診たてる人によって、処方がまったく異なるということがよくあります。

 

中医学では、患者さん一人ひとりの『証』を見極めて治療します。ここでいう『証』は『体質・病の本質』を指します。日本漢方で言うカルタの上の句と下の句の間の、理屈をしっかり追求します。中医学では、『弁証論治(べんしょうろんち)』という理論的方法を用いて、病気の原因・病気のメカニズムを明らかにすることに、非常に重きを置いています。『弁証』とは『四診(望・聞・問・切の四つの診察法)』により得られた症状を分析し『証』を決定すること、『論治』とはその『証』に基づいて治療法を論じ、治療するという意味です。この弁証論治こそが中医学の神髄です。中医学は理論体系のしっかりしている学問であるため、どの人が診たてても治療の方向性は、ほぼ同じになります。

 

中医学では、症状を分析し、『証(体質・病の本質)』を導き出すために、八綱弁証(はっこうべんしょう)や気血津液弁証(きけつしんえきべんしょう)、臓腑弁証(ぞうふべんしょう)など様々な弁証法を用います。
表面化しているそれぞれの症状の『証』が同じであれば、ひとつの処方で同時に様々な症状が治ることがあります。これを『異病同治』といいます。また、同じ症状・病名であったとしても、体質・病の本質である証が異なれば、人によって処方がまったく違うということもよくあります。これを『同病異治』といいます。

 

中医学と漢方では、『虚実(きょじつ)』の考え方も異なります。漢方では、虚実は体の充実度で決まり一定ですが、中医学では正気(体力・免疫力)と邪気(病邪)の相互関係で決まるのでその時々で変化します。
一般的にいう『漢方』には『日本漢方』と『中医学』が両方混ざっていることが多いですが、『虚実』の考え方の違いや『弁証論治』の有無から、最近では両者を分けて語られるようになってきました。患者さんにも違いを知った上で来局なさる方がいます。

 

処方箋やOTCで漢方薬が使われる機会が増えてきましたが、実際には西洋医学的な考え方で用いられることが多く、体質に合わない処方でかえって悪化しているケース(誤治)もよくみられるのが現状です。まずは、医療者が、次に家族の健康を守る“お母さん”が、まず中医学を知り、自分自身や家族の体質を理解すれば、さまざまな病気を予防できるようになります。西洋医学と東洋医学が両方そろえば、まさに鬼に金棒です。
次回は、『中医学』の考え方をさらに具体的にご説明します。

まずは日本漢方と中医学(中国伝統医学)の違いの把握から

日本漢方(漢方医学)と中医学(中国伝統医学)は別のもの

 

日本では一般的に生薬を使う医療がひとまとめに『漢方』と呼ばれていますが、そこには漢方医学と中医学の両方が含まれています。漢方医学と中医学は異なる学問であるため、専門家がそれぞれいらっしゃいます(折衷派もいます)。

 

そもそも『漢方』という呼び名は、江戸時代に、オランダから伝来した西洋医学『蘭方』に対して、それまであった日本の伝統医学を『漢方』と呼び、区別するようになったのが始まりです。他方で中医学とは、「中国伝統医学」の略称で、西洋医学とは異なる理論—陰陽五行説などの自然哲学に基づいた、中国の伝統医学を指します。

 

日本漢方のルーツは中医学ですが、日本に伝来してから傷寒論(しょうかんろん:約1800年前に書かれた中国の医学書)など一部の中医学書を基本に、腹診を重視して日本独自の発展をとげたため、現在では中医学とは異なる学問としてとらえられています。ですから中国には、『漢方』と呼ばれるものはありません。

 

日本漢方では、傷寒論などを基本とした『方証相対(ほうしょうそうたい)』という経験的・実践的手法を用います。例えば、『“寒気・首すじや肩のこり・頭痛・汗が出ない”という“葛根湯証”』には『葛根湯』、というように、カルタの上の句と下の句のように、症候と方剤を理屈抜きで対応させます。カルタの上の句と下の句の間の「何故?」にあたる病気の原因・病気のメカニズムについては追及しません。そのため、日本漢方では傷寒論に書いてある症候と方剤をすべて覚えます。豊富な経験と感性が求められ、熟達すればとてもよく効きます。熟練の度合いや診たてる人によって、処方がまったく異なるということがよくあります。

 

中医学では、患者さん一人ひとりの『証』を見極めて治療します。ここでいう『証』は『体質・病の本質』を指します。日本漢方で言うカルタの上の句と下の句の間の、理屈をしっかり追求します。中医学では、『弁証論治(べんしょうろんち)』という理論的方法を用いて、病気の原因・病気のメカニズムを明らかにすることに、非常に重きを置いています。『弁証』とは『四診(望・聞・問・切の四つの診察法)』により得られた症状を分析し『証』を決定すること、『論治』とはその『証』に基づいて治療法を論じ、治療するという意味です。この弁証論治こそが中医学の神髄です。中医学は理論体系のしっかりしている学問であるため、どの人が診たてても治療の方向性は、ほぼ同じになります。

 

中医学では、症状を分析し、『証(体質・病の本質)』を導き出すために、八綱弁証(はっこうべんしょう)や気血津液弁証(きけつしんえきべんしょう)、臓腑弁証(ぞうふべんしょう)など様々な弁証法を用います。
表面化しているそれぞれの症状の『証』が同じであれば、ひとつの処方で同時に様々な症状が治ることがあります。これを『異病同治』といいます。また、同じ症状・病名であったとしても、体質・病の本質である証が異なれば、人によって処方がまったく違うということもよくあります。これを『同病異治』といいます。

 

中医学と漢方では、『虚実(きょじつ)』の考え方も異なります。漢方では、虚実は体の充実度で決まり一定ですが、中医学では正気(体力・免疫力)と邪気(病邪)の相互関係で決まるのでその時々で変化します。
一般的にいう『漢方』には『日本漢方』と『中医学』が両方混ざっていることが多いですが、『虚実』の考え方の違いや『弁証論治』の有無から、最近では両者を分けて語られるようになってきました。患者さんにも違いを知った上で来局なさる方がいます。

 

処方箋やOTCで漢方薬が使われる機会が増えてきましたが、実際には西洋医学的な考え方で用いられることが多く、体質に合わない処方でかえって悪化しているケース(誤治)もよくみられるのが現状です。まずは、医療者が、次に家族の健康を守る“お母さん”が、まず中医学を知り、自分自身や家族の体質を理解すれば、さまざまな病気を予防できるようになります。西洋医学と東洋医学が両方そろえば、まさに鬼に金棒です。
次回は、『中医学』の考え方をさらに具体的にご説明します。

中垣亜希子先生プロフィール
中垣亜希子先生プロフィール
すがも薬膳薬局勤務の国際中医師、薬膳料理研究家、薬剤師。
東京薬科大学薬学部卒業。長春中医薬大学、北京中医薬大学、イスクラ産業研修塾にて中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS 猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。
すがも薬膳薬局: http://www.yakuzen-sugamo.com/

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