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2017年 薬業界10大ニュース‐業界の将来を占う重要な年に

薬+読 編集部からのコメント

今年も残りわずかとなりました。
一年を通じて、来年予定される診療報酬の改定にゆれた年でしたが、ニセハーボニー、調剤チェーンの不正など、他にも様々なニュースが紙面をにぎわせました。
今年を振り返って、薬事関係重大ニュースをおさらいしてみませんか。

今年は、2025年の地域包括ケアシステム構築を目指した18年度診療報酬改定・薬価制度改革をめぐる議論の1年だったが、1月にC型肝炎治療薬の偽造品問題が起こり、波乱の幕開けとなった。その後も薬業界では、臨床研究のデータ改ざん、製薬企業によるカルテの無断閲覧、大手調剤チェーンの付け替え請求など不祥事が次々と明らかになった。診療報酬改定・薬価制度改革では苦しい財政状況を反映して、かなり厳しい内容になるなど、業界の将来を占う意味でも重要な年となった。恒例の薬業界10大ニュースを選んでみた。


「ハーボニー」で偽造品‐再発防止へ関係者が連携

 

偽造品が見つかった「ハーボニー配合錠」。左が正規品(ひし形でだいだい色の錠剤)、右が偽造品(だ円形の薄紫の錠剤等)
偽造品が見つかった「ハーボニー配合錠」。左が正規品(ひし形でだいだい色の錠剤)、右が偽造品(だ円形の薄紫の錠剤等)

1月に奈良県内の薬局チェーン「サン薬局」の店舗でC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が調剤され、患者の手に渡ってしまうという事件が起きた。「日本で偽造薬は流通しない」という思い込みがあったためか、この事件は関係者に衝撃を与えた。

 

偽造品は、現金問屋と言われる東京都のエール薬品が個人から仕入れたもので、次々に同業に転売され、サン薬局に流れたという流通経路が判明した。薬局を経営する「関西メディコ」、現金問屋にそれぞれ奈良県、東京都と大阪府から業務改善命令の行政処分が下され、サン薬局の平群店、平松店は奈良県から5日間の業務停止命令を受けた。

 

事態を重く見た厚生労働省は、偽造薬の監視を強化するよう通知で要請すると共に、日本薬剤師会など関係団体と懇談会を開き、再発防止に向けて連携していくことを確認。

 

3月29日には偽造品流通防止に向けた検討会を立ち上げ、卸業者や薬局による仕入れ先の確認・記録の義務化、薬剤師による医薬品管理のあり方などについて、省令改正も含めた議論をスタートさせた。

 

6月には、中間取りまとめを行い、取引・流通のルールを明確化し、省令改正などの必要な措置を行ったほか、今月20日には最終報告案を大筋でまとめた。

 

厚労省は今月12日、「ハーボニー」の偽造品を仕入れた薬局に勤務していた奈良県の薬剤師の処分を「業務停止3カ月」と発表したが、「軽い」との声も聞かれる。

 

薬価制度の抜本改革決まる‐新薬加算縮小に反発大きく

 

薬価制度の抜本改革に関する骨子が決定した。長期収載品の薬価を引き下げる新ルールが導入され、後発品シェアが80%以上の長期品は10年かけて後発品の薬価に揃えられ、新薬創出等加算は革新性の高い新薬に絞り込み、国内臨床試験の実施数などをポイント化して点数の高い順に上から25%程度の企業だけが薬価を維持できる厳しい見直しとなる。製薬業界の反発も大きく、若干の要件緩和は行われたものの、全体としてはまさに抜本的な改革となった。

 

昨年末に政府が決定した薬価制度の抜本改革の基本方針に基づき、長期品薬価と新薬創出等加算の抜本的な見直しを大きく打ち出したことが柱。長期品は、後発品の上市10年後から薬価を段階的に引き下げ、後発品薬価と揃える。

 

新薬創出等加算は、対象を革新性と有用性のある品目に限る仕組みに抜本的に見直す。新規作用機序品や画期性加算などの加算適用品が対象で、製薬企業による国内試験実施数、新薬収載実績などを指標に、新薬開発の取り組み状況に応じてポイント化。点数の高い順に上位25%の企業が薬価を維持でき、それ以外のほとんどの企業は改定前薬価の0.9がけとなる厳しい改革となる。

 

今回の改革は、長期品の売上が大きい企業には打撃となる。新薬創出等加算も実質的には縮小で、新薬メーカーにも厳しい状況を迫るものだけに、業界再編の呼び水になる可能性もある。

 

“対物から対人”さらに推進‐調剤報酬改定、抜本的見直し第2弾

 

調剤報酬は、2016年度診療報酬改定で「次期改定以降、累次にわたる改定で抜本的に見直す」との方針が示されており、18年度改定が累次にわたる改定の第2弾となる。

 

「対物業務から対人業務へ」という流れのもと、かかりつけ薬剤師・薬局を評価する一方で、いわゆる大型門前薬局の評価を適正化するという方向性も変わらない。

 

中央社会保険医療協議会では、薬局の処方箋受付回数・集中率に応じて、点数が低い調剤基本料しか算定できなくなる特例範囲を拡大するほか、「かかりつけ薬剤師指導料」を薬剤師1人当たり月100件以上算定している場合に、特例点数から「調剤基本料1」(41点)に復活できる規定を廃止する案が厚生労働省から示されている。

 

厚労省は、調剤料の評価見直しや、お薬手帳を十分に活用できていない場合の「薬剤服用歴管理指導料」の評価引き下げ、同指導料の要件に次回の服薬指導の計画を加えるなどの見直しを行うことも提案。医師の指示に基づく分割調剤や残薬調整を円滑に進めるため、医師の指示事項が明確になるよう、処方箋記載内容を見直す方向性も示されている。

 

ただ、依然として、院内処方と院外処方の価格差が問題視されるなど、医薬分業そのものに厳しい目が向けられている上に、年末の予算編成で調剤が実質マイナスとなったことで、18年度調剤報酬改定は既存項目の点数付け替えが多くなることが予想される。

 

敷地内薬局が事実上解禁‐反対も複数が開設・誘致計画

 

昨年4月の療養担当規則の一部改正通知を受け、事実上解禁となった敷地内薬局。通知適用の昨年10月から今年に入り国公立病院などを中心に、敷地内に薬局を誘致する動きが本格化してきた。既に各都道府県の医療機関で敷地内薬局の開設や誘致が計画を含めて進められているようだ。

 

そうした敷地内薬局を問題視する声が相次ぐ中で、日本薬剤師会の山本信夫会長、日本病院薬剤師会の木平健治会長は会見などで共に「敷地内薬局反対」との見解を示している。

 

その一方で、全国的に表面化してきた「敷地内薬局」の誘致に関して、各都道府県剤師会の地域ブロック単位で、地方厚生局や各病院協会などに対し文書による反対の意思表明も行われた。その中では「街中の開業医や中小病院にも波及し、当たり前のようになることが一番恐ろしい。そういう危惧を持って反対活動を展開したい」との声も聞かれた。

 

既に誘致済みの敷地内薬局事業者の多くは調剤チェーンのようだが、地域薬剤師会による会営薬局も事業者として名乗りを上げている。敷地内薬局の保険指定は地方厚生局が個別に判断するため、保険医療機関との一体的な経営が行われていないことを確認するための個別指導の中身にも注目が集まりそうだ。

 

不正請求、調剤チェーンで相次ぐ‐自主点検の信頼性に疑問符

 

今春以降、調剤薬局チェーンで処方箋の付け替えによる不正請求が、相次いで発覚した。

 

一連の不正行為の中で最初に発覚したのはクオール。今年4月、同社の「クオール薬局秋田飯島店」(秋田市)で、調剤報酬の調剤基本料を高く算定するため、他薬局の処方箋を受け付けたとする付け替え請求を行っていたことが一部報道で発覚した。

 

続いて8月には、アイセイ薬局が一部の薬局で処方箋の不適切な取り扱いがあったことを発表。同社社員およびその親族の処方箋の取り扱いについて、実際に調剤を行った同社薬局が保険請求すべきところ、当該処方箋を同社の別の薬局に送付し、当該処方箋を受け取った薬局で調剤を行ったものとして保険請求した事実が、同社内の自主点検の結果、確認された。

 

さらに、10月にはクラフトが同社の「さくら薬局相馬店」(福島県相馬市)で、調剤報酬の付け替え請求が行われていたことを明らかにした。

 

3例目のクラフトのケースは、同社も会員である日本保険薬局協会が会員に対して自主点検を実施し、クオール、アイセイ薬局を除いて不正の事例報告はなかったと公表した後に発覚したことから、自主点検の信頼性に疑問符が付く結果となった。

 

臨床研究法が成立‐「特定臨床研究」を規制

 

臨床研究法は参議院本会議で全会一致で可決、成立した
臨床研究法は参議院本会議で全会一致で可決、成立した

臨床研究の実施手続きや製薬企業から受けた資金提供について契約締結や公表を義務づける臨床研究法が4月7日、参議院本会議で全会一致で可決、成立した。製薬企業から資金提供を受けて実施される臨床研究を「特定臨床研究」と位置づけ、これらにモニタリングや監査を義務づけるほか、実施基準に違反した場合は厚生労働大臣による中止命令、3年以下の懲役か30万円以下の罰金の罰則規定を設けた。

 

臨床研究法は、臨床試験の実施手続きと製薬企業などが講じる措置を柱に構成。そのうち、未承認薬等の臨床研究、製薬企業から資金提供を受けて実施される医薬品の臨床研究を「特定臨床研究」と位置づけ、これら特定研究を実施する研究者に対し、実施計画を国の認定臨床研究審査委員会の意見を聞いた上で厚労大臣に提出することを義務づけた。研究者にモニタリングや監査などの実施基準を遵守すること、製薬企業には自社が資金提供している医薬品の臨床研究について毎年度の状況を公表すると共に、契約を締結して実施することを義務づけた。

 

法成立を受け、厚労省は国会の附帯決議で盛り込まれた被験者の権利尊重の規定等について、省令で定める臨床研究実施基準や認定臨床研究審査委員会の議論を開始。年内に一連の議論を終え、一般への意見募集を経て来年1~2月頃に省令が公布される予定。

 

長期収載品の譲渡が加速‐新薬への集中を急ぐ

 

新薬メーカーが長期収載品を売却する動きが加速した1年でもあった。ジェネリック医薬品(GE薬)が医療現場で急速に浸透し、長期収載品の売上減に直面する中、製薬企業が将来に向けて事業の選択と集中を進めている。

 

武田薬品は昨年、本体事業から長期収載品を切り離し、イスラエルのテバ・ファーマスーティカルインダストリーズと長期収載品とGE薬の国内合弁会社「武田テバ薬品」「武田テバファーマ」を設立。この決断が“長期収載品離れ”の号砲となった。同年には塩野義製薬も共和薬品工業に長期収載品を譲渡した。

 

その流れは今年になって加速。アステラス製薬が長期収載品に特化した製薬企業として昨年から事業開始したLTLファーマに、長期収載品の譲渡を発表した。

 

田辺三菱製薬もGE薬事業と長期収載品の一部をGE薬子会社の田辺製薬販売に吸収分割により承継させ、田辺製薬販売の全株式をニプロに譲渡した。

 

さらに、中外製薬は、来年4月にプリント配線板事業に強い太陽ホールディングス子会社「太陽ファルマ」に国内で製造販売する長期収載品13製品の製造販売承認を譲渡すると発表した。

 

これらの会社に共通しているのが新薬に経営資源を集中させる戦略だ。薬価制度の抜本改革で導入される長期収載品の薬価引き下げルールは、GE薬販売後に10年が経過した長期収載品のうち、GE薬への切り替えが進んだ製品について、先発品メーカーに市場撤退を迫っている。もはや長期収載品依存では生き残りが難しい時代となった。

 

バイエルがカルテ無断閲覧‐副作用も期間内に報告せず

 

製薬企業の社会的信頼が揺らぐ不祥事もあった。バイエル薬品の営業社員3人が2012年と13年に、患者の同意取得の有無を明確に確認することなく、氏名、年齢、性別、生年月日、主病名など、最大で298人分の患者情報を不適切に取得していたという問題だ。

 

非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の「イグザレルト」の発売前後に、同じ領域の他社薬剤の服薬状況を把握するために診療所医師の協力を得て患者を対象に調査を実施したが、その際に同社の社員が無断でカルテを閲覧した。かかわった営業社員の告発によって明らかになった。外部専門家による調査結果によると、バイエル社では15年にこの問題を把握し、16年1月にアンケート調査結果に関する論文を取り下げる措置を行っていたにもかかわらず、不適切な個人情報取得問題を開示せず、当局への報告も怠っていた。

 

厚生労働省からはバイエルが関与した医師によるアンケート調査論文を活用した「イグザレルト」の広告活動について、「適正な広告プロモーション活動の観点から不適切と思われる点がある」として口頭で指導を行い、バイエルに再発防止策の策定を求めた。その後、類似事例の発生防止を目的に、製造販売業者の広告プロモーション活動に関するルールを定めたガイドラインが策定されることになった。

 

外部専門家を交えた調査の過程では、イグザレルトの服用症例のうち副作用を厚労省に報告していなかったことが判明。バイエルが調査を行ったところ、報告義務対象の4品目86症例の副作用が報告されておらず、厚労省から同社に対して薬機法に基づき文書で改善指導が行われた。

 

Dgsも“健康サポート”実践を‐JACDSが次世代ビジョン

 

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)によれば、業界規模は6兆5000億円(昨年比106%)、店舗数は1万9000店(同400店舗増)と、小売業の中でも比較的好調な状況で推移しているドラッグストア業界。その中でJACDSは、将来的な人口減少、超高齢化、既存マーケットの縮小など市場環境の変化、今後の経営環境の変化を見据え、3月に「次世代ドラッグストアビジョン」を策定・発表した。

 

同ビジョンが目指すのは、▽地域生活者の健康寿命延伸に寄与するドラッグストアにシフトする▽地域の生活者の健康に関するプラットフォームになる▽新しいマーケット創造、新しい社会機能を同時に実現する▽他の業態や事業者にできない新しい社会的価値をつくる――こと。即ち、「超高齢社会の中で社会に役立ち、成長するドラッグストア業界の実現」といえる。

 

ビジョンでは、ドラッグストアとしての基本機能に加え、「健康サポート機能」(必須、選択)を実践し、一定項目を満たした店舗を「健康サポートドラッグ」に認定し(日本ヘルスケア協会が審査決定)、その優れた機能を広く公表していく考えで、各社が状況に合わせ可能なものから実施していく。

 

業界が約3年を費やして研究・検討を重ね、業界の総意でまとめた「次世代ドラッグストアビジョン」。今後ドラッグストアが健康サポートの入口として機能していけるかどうかは、来年からの動向にかかっている。

 

抗菌薬適正使用が大きく前進‐ASTの活動が拡大も

 

国のアクションプランを受けて抗菌薬適正使用の機運が高まる中、6月に厚生労働省から抗菌薬適正使用の手引き第1版が公表された。いわゆる“かぜ”には抗菌薬を投与しないことを推奨することが柱で、9月にはダイジェスト版も公表。学会からも医療者が行動すべき内容をまとめたガイダンスが策定された。2018年度診療報酬改定では、病院の抗菌薬適正使用支援チーム(AST)の活動を評価する方向にあり、適正使用に向けた動きが大きく進展した1年でもあった。

 

厚労省がまとめた手引きは、外来診療を行う医師などに抗菌薬が必要な状況かどうかを判別できるよう診療支援を念頭に置いた内容となっている。また、学会レベルでも日本化学療法学会、日本薬学会など医学薬学系8学会が、院内の感染症専門医、薬剤師などが行動すべき内容をまとめたガイダンスを策定。医療職への教育啓発が不要な抗菌薬の処方減につながると推奨した。

 

こうした一連の動きを背景に、感染症専門医と薬剤師をコアとするASTの活動が拡大。入院患者への介入により、薬剤耐性の抑制と広域抗菌薬の使用量節減をもたらしたとして、厚労省は18年度改定でASTの取り組みを評価する方向だ。薬剤師を中心に活発化するASTの活動が評価されることで、抗菌薬適正使用の取り組みは一層加速しそうだ。

 

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出典:薬事日報

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