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平成の医薬品産業~売上データで振り返る30年・2010年編

薬+読 編集部からのコメント

現在から振り返ってみると東日本大震災(2011年)という「嵐の前の静けさ」だったようにも感じられる2010年。国内の医薬品市場にもMSD誕生、企業参入、海外資本との提携による合併会社の誕生と大きな動きを感じさせられました。そんな中、2005年に続き国内売上高のトップを維持したのが武田薬品のARB「ブロプレス」、そして2位もノバルティスファーマの「ディオバン」と、上位2製品がARBという結果に。世間ではAKB48ブームが頂点に達していましたが、医薬品業界はARBの年でした。また1990年のトップ10では最後に「ン」が付く製品名が10個中、6個を占めておりましたが、2000年は5/10、2005年は4/10、そして2010年にはわずか2つだけに減少。製品名だけでも20年の流行の推移を感じられます。

ARBがトップ2を独占‐データ改ざんの「ディオバン」も

 

日本で初めて衆議院選挙を経て野党による政権交代が実現した民主党政権下の2010年。国内の医薬品市場は、万有製薬とシェリング・プラウが統合してMSDが誕生する一方、政府の強力な後発品使用促進策を背景に、後発品事業に勝機を見出そうと企業参入の動きが活発化した。第一三共が子会社「第一三共エスファ」を立ち上げ、国内後発品市場に参入を表明したほか、仏サノフィ・アベンティス(現サノフィ)が日医工との資本提携による合弁会社「日医工サノフィ・アベンティス」(現日医工サノフィ)の設立を発表。

 

さらに、富士フイルムが総合商社の三菱商事、医薬品卸の東邦薬品と合弁会社「富士フイルムファーマ」を設立し、異業種から後発品事業への参入を表明するなど、国内外の企業が入り乱れて混戦模様の市場環境を生み出していた。

 

その10年の国内売上高でトップに立ったのは、武田薬品のアンジオテンシンII受容体拮抗剤(ARB)「ブロプレス」。05年に続いてトップの座を維持した。2位には、ノバルティスファーマのアンジオテンシンII受容体拮抗剤「ディオバン」が05年の3位から浮上。上位2製品をARBが占め、00年代に入って急速に浸透したことがうかがえる。

 

3位には、日本発新薬でグローバル展開の牽引役となったエーザイのアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」がランクイン。米国特許切れを迎えたものの、好調な日本市場等が牽引して全世界の売上高がピークに達した時期であった。4位には、ファイザーのHMG-CoA還元酵素阻害剤「リピトール」が05年の4位を維持し、5位には、久光製薬の経皮鎮痛消炎剤「モーラス」が初登場した。テープ剤市場の拡大を背景に「モーラステープ」群が伸びた。

 

売上高6位以降を見てみると、ファイザーの高血圧・狭心症治療剤「ノルバスク」が05年の2位から順位を落とし、7位にはグローバル製品に成長を遂げる第一三共のアンジオテンシンII受容体拮抗剤「オルメテック」が登場した。また8位と9位には、プロトンポンプ阻害剤(PPI)である武田薬品の「タケプロン」、エーザイの「パリエット」が相次ぎランクイン。強力な作用でヘリコバクター・ピロリ除菌治療、逆流性食道炎に効果を発揮するPPIは両社の屋台骨となる製品に大きく成長した。

 

さらに10位には、日本ベーリンガーインゲルハイムのアンジオテンシンII受容体拮抗剤「ミカルディス」が登場。10年は、トップ10のうち4製品をARBが占め、ARBブームはピークを極めたが、その後2位にランクインした「ディオバン」は臨床研究データの不正で社会的な問題を引き起こすことになり、激しい競合がもたらした負の側面をも写し出すランキングとなった。

 

 

 

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出典:薬事日報

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