薬剤師会

かかりつけ薬剤師に検査値提供‐医師の評価提案も日医委員反対

薬+読 編集部からのコメント

医療機関と薬局の情報共有・連携などについて、中央社会保険医療協議会で議論が行われました。
院外処方箋に検査値などの患者情報を記載して情報共有し、服薬アドヒアランスの改善につなげる試みはすでに行われていますが、病院や診療所が患者の検査値などの情報をかかりつけ薬剤師に提供すると共に、かかりつけ薬剤師から情報のフィードバックを受ける医療機関側の窓口を明確化した場合の評価を厚生労働省が提案したところ、医師委員側から反対意見が続出しました。

中央社会保険医療協議会は15日の総会で、「医療機関と薬局の情報共有・連携」などについて議論した。厚生労働省は、薬物療法の最適化を図るため、病院や診療所が患者の検査値などの情報をかかりつけ薬剤師に提供すると共に、かかりつけ薬剤師から情報のフィードバックを受ける医療機関側の窓口を明確化した場合の評価を提案。医師に対して点数がつく評価項目にもかかわらず、医師委員からは「反対」の意見が相次いだ。


既に一部の医療機関と薬局では、院外処方箋に検査値などの患者情報を記載して情報共有し、服薬アドヒアランスの改善につなげる取り組みが進められている。そのため厚労省は、かかりつけ医が必要性を認める場合に、かかりつけ薬剤師に対して検査値や診療上の留意点等に関する情報を提供した場合の評価を提案した。

 

ただ、薬局が医療機関に情報のフィードバックを行おうとしても、特定の問い合わせ窓口を設定している医療機関が少ないなどの課題があり、両者の連携をより高めるため、薬局からの情報を受け取る連携担当者・窓口の明確化などを評価の要件にする考えも示した。

 

これに対して、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、個人情報である患者の検査データを「むやみに提供することは反対」とし、「薬剤師が検査値をもとに何を判断するのか」と慎重な姿勢を示した。

 

また、情報の提供先を、かかりつけ薬剤師に限定している点に触れ、療養担当規則で禁止されている「特定の薬局への誘導」につながる可能性も指摘した。

 

松本吉郎委員(日医常任理事)も、まずは医師が副作用などの情報を含め、患者に「しっかり説明する」ことが重要との考えを示し、取り組みに対する評価には「反対」の姿勢を表明した。

 

今村聡委員(日医副会長)も、医師と薬剤師が患者の検査データを「やりとりする状況にない」とし、「まずは病院薬剤師と薬局の薬剤師が連携をとることが大事」との考えを示した。

 

支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、提案の方向性に理解を示した上で、「事前に患者から同意を得る」ことや、「連携窓口の明確化」が重要になると指摘。幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も、連携窓口を明確にすることの重要性を指摘し、情報をやりとりするための様式を定め、「双方向のコミュニケーションができれば評価してもいいのでは」とした。

 

診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、検査値をもとに処方された薬剤量が適正かどうかを確認する試みが一定程度普及している状況を踏まえ、患者にあらかじめ同意を得ることを前提条件に、「取り組みを推進してもらいたい」としたが、評価の対象となるはずの医師委員からは、提案に反対する声が上がった。

 

改定意見、両論併記で合意‐加藤厚労相に意見書提出

 

またこの日の中医協では、2018年度診療報酬改定に関して公益委員がまとめた意見書を了承した。加藤勝信厚生労働相に提出する。意見書は、18年度改定に臨む姿勢をめぐる基本認識については意見の一致を見たものの、「国民負担の増大を抑制する方策を早急に講じなければ、2025年以降を乗り切れるとは思えない」とする支払側と、「医療従事者への適切な手当が必要であることから、プラス改定とすべき」とする診療側で意見が分かれたため、両論併記となった。

 

意見書は、人生100年時代を見据えた社会の実現が求められる中、国民が安心・安全で質が高く効率的・効果的な医療を受けられるよう医療提供体制の再構築、地域包括ケアシステムの構築に取り組むことを重要課題に位置づけた。

 

社会保障審議会医療保険部会と医療部会がまとめた18年度改定の基本方針でも、重点課題として医療機能の分化・強化、連携を進め、効果的・効率的で質の高い医療提供体制を構築すると共に、地域包括ケアシステムの構築に取り組むことが示されたとし、これらに対する協議を進めていくとの基本認識については、支払側委員と診療側委員の意見の一致を見たとした。

 

ただ、18年度改定に臨むべき姿勢については意見の相違が見られたとし、支払側は「国内経済はデフレ脱却を達成するほどの力強い成長には至っておらず、医療経済実態調査の結果では、国公立病院以外は概ね堅調であり、国民負担の増大の抑制策を早急に講じなくては、25年以降を乗り切れるとは到底思えない」とマイナス改定を主張。薬価引き下げ分を診療報酬本体に充当せず、確実に国民に還元することを求めた。

 

診療側は、「医療機関等は総じて経営悪化となったこと、医療従事者への適切な手当が必要であることなどから、薬価改定財源は診療報酬本体に充て、プラス改定とすべき」と主張した。

 

新薬の14日処方制限‐再度「見直しに反対」

 

一方、13日の中医協総会では、新薬の14日処方日数制限について改めて議論した。6月の「規制改革実施計画」に処方日数制限の見直し検討が明記されたことを受けた対応。この日の議論でも「既に議論済み」「基本的方向性は変わらない」など反対意見が相次ぎ、引き続き新薬については14日の処方制限を厳守していく方向性で一致した。

 

新薬の14日処方日数制限をめぐっては、これまでの中医協の議論でも「安全性確保の観点から厳守すべき」との意見で一致していたが、規制改革推進会議から「短すぎる」など処方日数の延長を求める意見が出ていた。

 

これら意見を踏まえ、厚労省は、▽21日、28日、30日に延長▽個別の患者事情を考慮し、患者状態に応じて処方日数を延長▽処方日数制限を行わない現行の取り扱いにラセミ体を光学分割した場合、代謝物や代謝前成分の場合などを追加▽現行の取り扱いを維持――の四つの案を提示した。

 

ただ、委員からは「既に議論済み」「処方日数の延長は賛成できない」「基本的方向性は変わらない」など、従来の見解を踏襲する意見が相次ぎ、14日の処方日数制限の延長は反対で一致した。

 

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出典:薬事日報

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