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【調剤報酬改定のポイント】地域に根ざす薬局を評価‐厚労省 中山薬剤管理官

薬+読 編集部からのコメント

2018年4月に診療報酬が改定されましたが、その改定のポイントはどこにあるのでしょうか。
厚生労働省の中山智紀薬剤管理官が基本の考え方、調剤報酬改定・薬価改定・評価のポイントなどを語りました。
重要視されている部分としては、
・かかりつけ薬剤師・薬局の推進
・地域医療に貢献する薬局の評価
・薬局における対人業務の評価の充実
・医薬品の適正使用の推進
・いわゆる門前薬局の評価の見直し
などです。

 

今月から診療・調剤報酬が改定された。調剤報酬では、厚生労働省の「患者のための薬局ビジョン」で示されている、「服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導」、「24時間対応・在宅対応」、「医療機関等との連携」などの方向性を踏まえ、地域医療に貢献する薬局の実績を評価する「地域支援体制加算」(35点)を新設。薬局が医療機関と連携して内服薬の処方を減らす取り組みを評価する「服用薬剤調整支援料」(125点)を新設するなどして、連携に関する項目を手厚く評価している。一方で、いわゆる「門前薬局」を念頭に低い調剤基本料を算定する「特例点数」の対象拡充や、敷地内薬局を想定した「特別調剤基本料」(10点)を新設し、報酬の適正化を図った。抜本改革となった薬価制度は、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度の対象範囲見直し、後発品上市後10年を経過した長期収載品の薬価を段階的に引き下げる仕組みを導入した。厚生労働省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官に調剤報酬改定、薬価制度見直しの考え方などを聞いた。

 

薬剤師の処方提案を推進‐医療機関と信頼関係構築を

 

――18年度調剤報酬改定の基本的な考えは。

 

医薬分業が本当に患者のためになっているのかという批判があり、「患者のための薬局ビジョン」が策定された。そうした流れの中で、16年度改定では、「かかりつけ機能を手厚く評価し、門前薬局の評価を適正化する」という方針のもと、「かかりつけ薬剤師指導料」を新設し、いわゆる大型門前薬局を想定した調剤基本料の適正化が行われた。

 

18年度改定は、こうした歩みをさらに進め、調剤報酬に反映させたということになる。主な柱としては、かかりつけ薬剤師・薬局のさらなる推進、地域医療に貢献する薬局の評価、薬局における対人業務の評価の充実、医薬品の適正使用の推進、いわゆる門前薬局の評価の見直しなどが挙げられるだろう。

 

――そうした考えは個別項目や点数、要件の見直しにどう反映されたか。

 

薬局ビジョンでは、「服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導」の一環として、副作用や効果の継続的な確認、多剤・重複投薬や相互作用の防止などを挙げているが、個別項目でもこうした取り組みを評価している。

 

「服薬情報の一元的・継続的把握」を進めるという意味では、今回、「薬剤服用歴管理指導料」の点数を3点上げた。具体的には、「原則、過去6カ月以内にお薬手帳を持参して同じ薬局を繰り返し利用した場合」に41点、「患者の初回来局時等の6カ月以内の再来局以外の場合」に53点、「特別養護老人ホーム入所者に対して行った場合」を41点に設定すると共に、今後の継続的な薬学的管理と指導の留意点を薬歴に記載することとした。

 

記録のための記録になるのではなく、記録に基づいて、薬学的管理や指導を点ではなく線で行ってもらうにはどうしたら良いか考えた結果、要件を見直した。

 

薬剤服用歴管理指導料は、ほぼ全ての処方箋の受け付け時に算定される点数で、プラス改定の大きな要因になっている部分でもあるので、ぜひともしっかり取り組んでほしい。

 

服薬情報の一元的・継続的把握という観点から、重複投薬・相互作用等防止加算を、現行の30点から、残薬調整(30点)と残薬調整以外(40点)の2段階とし、残薬調整以外の点数を上げている。

 

また、薬剤師による医師への処方提案を進めるため、服用薬剤調整支援料(125点)を新設し、6種類以上の内服薬が処方されている患者さんを対象に、本人の意向を踏まえて薬剤師が文書を用いて医師に減薬を提案した上で、内服薬が2種類以上減少し、そのうち1種類以上が処方提案による場合に算定できるようにした。

 

ただ、医師側からすれば、顔も知らない薬剤師から減薬の提案されても、受け入れがたいと思うので、日頃から医療機関と信頼関係を構築しておくことが大事だ。

 

向精神薬の使用適正化に向けて、「向精神薬調整連携加算」(12点)が新設された。多剤処方や長期投与の状態にある患者さんの薬を減らした上で医師が薬剤師、看護師と協働して症状の変化等の確認を行った場合を評価するもので、医療機関と連携してしっかり役割を果たしてもらいたい。

 

基準調剤加算を廃止して新設した「地域支援体制加算」では、夜間・休日、24時間対応など、薬局が地域医療に貢献する体制を有していることを示す相当の実績を求めているし、在宅医療に関しては、無菌製剤処理加算の点数を上げた。

 

具体的には、中心静脈栄養法用輸液、抗悪性腫瘍剤、麻薬について無菌製剤処理を行った場合は、1日につきそれぞれ67点、77点、67点(6歳未満の乳幼児の場合、1日につきそれぞれ135点、145点、135点)に設定したほか、無菌調剤室を提供する薬局と処方箋受付薬局の両者の合議とすることを明確にして共同利用をしやすくした。

 

また、自宅で療養している6歳未満の乳幼児や家族に対して、薬学的管理・指導を行った場合の「乳幼児加算」(100点)を新設した。ニーズに応えられるよう、努力いただきたい。

 

分割調剤、かかりつけ強化に期待‐地域の薬局での受け取り促す

 

――分割調剤に関する手続きが明確化された。現場の薬局に期待することは。

 

地域のかかりつけ薬剤師・薬局がしっかりと機能を果たすということにつながれば良いと思う。原則として、分割指示に係る処方箋の交付を受けた患者に対しては、継続的な薬学的管理・指導のため、処方箋を受け付ける前に、処方箋の1回目の調剤から調剤済みになるまでを通して、同じ薬局に処方箋を持参すべきであるという旨の説明を患者に行うことになっている。

 

これは、患者さんが初回に門前薬局に行ったとしても、2回目、3回目に自宅や職場の近くにある薬局で分割調剤を受けたいという要望があれば、初めから地域の薬局で分割調剤を受けてもらうようにしてくださいといった趣旨の説明を薬剤師が行うことが原則となっている。

 

ただ、患者さんの都合で、初回に関しては門前薬局で薬をもらいたいが、次回からは別の薬局で薬をもらいたい旨の申し出があった場合には、患者の了承を得た上で、次回以降、処方箋を持参しようとする薬局に対し、調剤の状況とともに必要な情報をあらかじめ提供することを明確化した。

 

分割調剤は、薬局側の都合ではなく、まず、患者さんの希望が優先されなければならない。そのために、患者さんが行きたいと思う薬局に促す仕組みにしたし、留意事項でしっかりと明確化しているので、ぜひとも制度の趣旨に沿った丁寧な対応をお願いしたい。

 

地域支援体制加算、実績要件で判断‐門前薬局は特例範囲を拡大

 

――「基準調剤加算」(32点)を廃止して新設した「地域支援体制加算」(35点)では、いくつもの「実績」を求めている。

 

薬局は、地域の実情を踏まえてしっかりと機能を発揮してもらわなければならない。そうした地域医療に貢献している薬局をどう評価するかを考えた時に、やはり実績で示してもらうしかないだろうということになり、こうした要件設定となった。

 

具体的には、1年に常勤薬剤師1人当たり、▽夜間・休日等の対応実績400回▽重複投薬・相互作用等防止加算等の実績40回▽服用薬剤調整支援料の実績1回▽単一建物診療患者が1人の場合の在宅薬剤管理の実績12回▽服薬情報等提供料の実績60回▽麻薬指導管理加算の実績10回▽かかりつけ薬剤師指導料等の実績40回▽外来服薬支援料の実績12回――の全ての実績があることを要件にした。

 

かつての基準調剤加算は、面的な分業を進めるための体制を整備している薬局への加算という意味合いが強かったと思うので、地域医療に貢献する薬局の要件をどう設定するかを考えた結果、実績要件で判断することとした。

 

――門前薬局の評価見直しでは、調剤基本料の特例範囲を拡大した。

 

調剤基本料は、薬局が機能を果たす上で、必要な体制整備を評価する点数という側面がある。見直しに当たっては、医薬品の備蓄数や、医療経済実態調査の損益率などを根拠にしたが、それらの部分で効率性が高かったので、基本料を低く設定するという方向にならざるを得なかった。

 

特定の医療機関からの処方箋集中率が高ければ、それほど多くの医薬品を備蓄しなくてもいいし、多店舗展開するなどして損益率が良い薬局には、基本料を一定程度、引き下げるような見直しはせざるを得ない。

 

また、特例点数に当たらないようにするため、処方箋の集中率や受け付け枚数を分散させるような対策を講じている薬局にも対応した。

 

一方で、処方箋枚数と集中率という側面で基本料を設定しようとすると、結果的に特例点数の対象になってしまう薬局も出てくる。主に医療資源が乏しい地域にある薬局などが該当するが、地域医療を支えている薬局が存在できないということにもなりかねないので、そうした薬局には、特例を設けて調剤基本料1を算定できるよう配慮した。

 

――後発品の数量シェアが著しく低い薬局や、お薬手帳が活用できていない薬局の減算規定も設けた。

 

現時点で、この要件に該当する薬局は少なからずあるようだが、普通に薬局の機能を果たしていれば当然、クリアできる規定だと思う。

 

薬局の機能“見える化”を‐大学と連携し分業批判に対抗

 

――次期改定に向けた課題は。

 

今回、新設した「地域支援体制加算」「服用薬剤調整支援料」をはじめ、評価を充実させた項目がいくつかあるので、それらに付随する業務の実績を中身のある形で積み上げるということにつきるのではないか。

 

患者にとってメリットのある、中身ある実績を積み上げていくことで、医療機関や他の医療職種との連携や、信頼関係の構築につなげていくしかない。

 

――またしても医薬分業バッシングの中での改定となった。

 

昨年11月に政府の行政改革推進会議が秋の行政事業レビューで、「院外処方は、院内処方に比べてコストが3倍」などとする資料を提示し、現在の薬局が果たしている機能に照らし合わせて院内より高い料金を支払うことの費用対効果を疑問視したことがあり、対応には相当なプレッシャーを感じた。

 

行政事業レビューの場では、高血圧や糖尿病患者(内服薬28日分)を例に、薬局の薬剤師が薬歴管理や服薬指導を行うことによって、2608円の医療費適正効果と315円の重複投薬・相互作用の防止効果が期待できるとのデータを示したが、福岡市薬剤師会と大学が連携してまとめた論文から引用したものだ。

 

そうしたデータがあると、救われる時があるので、ぜひ、地域の薬局は大学などと連携して、薬局の機能を見える化する取り組みを進めて、自ら反論する材料を用意しておいてもらいたい。

 

薬局はデータを出すことができるし、大学の先生はそれを論文としてまとめてくれるプロだ。ただ、こうした取り組みは、限られた一部の薬剤師が取り組んでも積み重なっていかないので、一人ひとりが自分のことだと思って地域の薬剤師系団体ごとなどで薬局の機能を見える化する努力に地道に取り組んでほしい。

 

薬価見直し、革新的医薬品創出と長期品依存脱却図る

 

――薬価制度は、抜本的な見直しが行われた。基本的な考え方とポイントとなる部分は。

 

「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」でも示されているように、「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」を両立し、「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現する観点から、薬価制度を大幅に見直したということになる。

 

その中で、より革新的で有用性の高い医薬品の創出を促す一方で、長期収載品に依存しない産業構造への転換を促すというのが大きなポイントになる。

 

この二つは密接に関係していて、まず、前者については、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度の対象範囲を見直し、革新性・有用性の高い新薬に絞られるようにした。

 

長期収載品については、急激に引き下げるようなことをすると、現場に混乱をもたらすので、段階的に後発品まで引き下げるような仕組みにした。

 

具体的には、後発品置き換え率が80%以上となった品目は、まず薬価を後発品の薬価の2.5倍に引き下げた後、6年間かけて段階的に後発品の薬価まで引き下げることとした。さらに、後発品置き換え率が80%未満の段階であっても、同様に、まず薬価を後発品の薬価の2.5倍に引き下げ、その後、10年間かけて段階的に後発品の薬価の1.5倍まで引き下げるようにした。

 

今回、薬価制度を大きく見直したが、改革の成果が良い方向に出ることを期待したいし、引き続き、薬価制度の抜本改革による関係者への影響を検証した上で、必要な対応について検討していくことになる。

 

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出典:薬事日報

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