処方せん

「問診ナビ」で病歴聴取‐薬剤師が研修医修了レベルに

薬+読 編集部からのコメント

筑波大の前野教授が開発した「問診ナビ」は、患者の病歴収集ができるシステム。
「問診ナビ」を薬剤師が使うと、研修医終了レベルの情報が得られるそう。
薬局やドラッグストアで働く薬剤師にとって、地域住民の健康相談など、かかりつけ薬剤師の強力なツールになりそう。

来局者の受診勧奨を判断 


前野氏

前野氏

 

筑波大学医学医療系地域医療教育学の前野哲博教授は、患者の主訴から診療に必要な情報を収集できる問診システム「問診ナビ」を開発し、薬剤師が来局者の症状に応じて受診勧奨を行うべきかを判断する症候診断の支援システムとして、調剤薬局やドラッグストアへの導入を提案している。患者自身が簡単な質問に回答するだけで、入力データが問診結果として自動的に文章化される仕組み。問診ナビの主訴リストにある徴候であれば、ほぼ研修医修了レベルの病歴収集を行うことができ、その情報を電子カルテに貼り付けることも可能だ。今後は調剤薬局の薬剤師が患者の病歴を聴取し、地域の多職種連携の中で患者情報の橋渡しに活用したり、ドラッグストアの薬剤師が地域住民の健康相談に役立てる。前野氏は、「かかりつけ薬剤師として地域で必要とされる存在になれるようサポートしたい」と語った。

 


従来行われている問診では、診療に必要な情報を集めるのに多くの時間を要するだけではなく、必要な情報を聞き漏らすリスクもある。さらに、一般的な問診票も患者一人ひとりで問診すべき項目が異なるにもかかわらず、同じフォーマットに記入してもらうために情報量が少なくなり、医師が問診をやり直さないといけないのが現状だった。

 

問診ナビは、患者に鑑別診断を行う際の医師の思考回路を、コンピュータ上の臨床推論アルゴリズムによってシステム化し、患者と応対する医師以外の医療スタッフが質の高い問診を行えるようにしたもの。総合診療医である前野氏とソフトウェア会社「メトロネット」が共同開発した。医療者が患者から病歴を聴取するのではなく、患者自身がタブレット端末から症状に基づき画面表示に従って、問診ナビの一つひとつの質問に回答すれば、自動的に必要な情報を収集できるようにした。

 

 

もともとは、病院の外来の待合室にいる患者が入力し、医療者の業務削減につなげることを想定していたシステムだったが、“健康サポート薬局”“かかりつけ薬剤師”が提唱される中で、地域住民との接点が増えるドラッグストアや調剤薬局で働く薬剤師が、来局者の症候診断に活用できるシステムとしても展開を図ることになった。

 

医師が問診に費やす時間やマンパワーを削減する。前野氏によると、医師が病歴を聴取する内容について、[1]全症候に共通する情報[2]症候ごとに共通する情報[3]個別に収集すべき情報で定型化できるもの[4]個別に収集すべき情報で定型化できないもの――と四つのカテゴリーに分けられるという。今回、[4]を除くカテゴリーで、体系化が可能な症候診断については、コンピュータのアルゴリズムで定式化することに成功した。

 

 

具体的には、患者が「頭痛」や「発熱」「めまい」「咳」などの症状を選ぶと、症状に応じて「いつからですか?」「痛みの強さは?」「どんな痛みですか?」「症状は突然始まりましたか?」などの質問が自動表示される。「痛みの強さ」であれば、「ごく軽度」「我慢できる程度」「ややつらい」「かなりつらい」「耐えられない」といった選択肢が表示され、そこから選ぶ仕組みだ。問診結果は、自動的に文章化され、入力データはそのまま電子カルテに貼ることができるため、医師への情報伝達に役立つ。

 

実際、問診ナビで取り扱っている症候に限れば、研修医修了レベルの病歴収集が可能になり、病歴を体系化しやすい小児科ではニーズが高いと見ている。また、それぞれの質問・選択肢、結果の根拠については解説が付いており、例えば頭痛における「痛みの強さ」に関する質問では、「痛みが弱くてもくも膜下出血を否定できないため、注意が必要」と記載され、症状や既往歴からどんな疾患の可能性が高いかを判定する臨床推論の考え方を知ることができる。

 

薬剤師向けには、問診ナビの機能を絞り込み、特に緊急性の高い症状を持つ患者だけを対象とした「簡易版」も開発しており、現場での導入を促す。前野氏は、「コンビニエンスストアよりも多いといわれる調剤薬局やドラッグストアは、地域住民との大事な接点になる。薬剤師の方々が問診ナビを通じて、地域の人たちの健康を支える存在になっていただきたい」と話す。

 

問診ナビは日本語版のみならず、英語や中国語の外国語翻訳機能も導入しており、外国語で入力し、結果を日本語で表示できるため、外国人とのコミュニケーションを促進するツールとしても広げていく。

 

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出典:薬事日報

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