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中国が新薬創出国に総力‐イノベーションで日本を猛追

薬+読 編集部からのコメント

医薬品市場規模が約11兆円と世界第二の規模を誇る中国。今までその内訳の7~8兆円はジェネリック医薬品が占めていました。
しかし2015年に中国共産党が新薬の研究開発力から経済成長につなげる戦略実施を打ち出し、2018年現在では日本に猛追しています。

ジェネリックから新薬‐中国共産党が規制改革

 

中国が悲願の新薬創出国に向け総力を挙げている。従来はジェネリック医薬品主体だったが、中国共産党が研究開発型の製薬企業を育成しており、中国発の新薬候補で米国と同時期に中国で第I相試験を実施し、欧米製薬大手に評価される形で高額で導出する事例も出てきた。キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T療法)では10件以上の治験申請、抗PD-L1抗体では初の上市申請も行われるなど、イノベーションで先行する日本を猛追し、一部の製薬企業やCROは日本市場での事業活動を本格化させた。今後、中国製薬企業の統合によるメガファーマの誕生や海外企業の大型買収の可能性も指摘されており、グローバル市場で中国企業が台頭しそうな勢いだ。

 

AR-T療法の治験申請数は二桁へ

 

中国の医薬品市場は約11兆円と、米国に次ぐ世界第2位に位置しているが、そのうち7~8兆円はジェネリック医薬品などが占めている。巨大な市場規模を誇りながらも、自国企業の新薬開発力や規制当局の審査の質やスピードでは世界に後れを取っていた。

 

そこで、バイオ医薬産業の育成を目指す共産党は、2015年3月に初めて新薬の研究開発力から経済成長につなげる“イノベーションドリブン”の発展戦略実施を打ち出し、同年8月には医薬品・医療機器の審査・承認制度改革に関する意見を通達。昨年10月には、医薬品・医療機器のイノベーション奨励を目的に、治験管理の改革や医薬品上市に向けた審査・承認をスピードアップすることなど6項目36件の意見をまとめた。

 

研究開発環境が整備されつつあることで、国内外のヘルスケアファンドから中国の製薬企業に対する投資が急拡大し、多額の資金調達も行えるようになった。中国の一部上場医薬企業の研究開発費に反映されている。

 

中国の新薬メーカーで構成された業界団体「中国医薬イノベーション促進会」(PhlRDA)の宋瑞霖会長によると、「売上の10%近くを研究開発費に投じている」という。

 

新薬を開発するだけの実力はつけつつある。中国企業が開発する新薬プロジェクト数は、合成医薬品が443件に達しており、そのうち上市申請まで到達しているのが12件。バイオ医薬品では160件が開発中で、上市申請が5件となっている。中国のみならず、海外で治験を行う企業も出てきている。

 

治験開始の申請件数を見てみると、合成医薬品では16年の71件から17年には98件、バイオ医薬品では21件から56件へと拡大。特にCAR-T療法では、昨年から今年にかけて中国企業によって13件の開発プロジェクトで治験実施の申請が行われた。

 

免疫チェックポイント阻害剤では16件が治験申請済み。注目すべきなのが、中国の新薬メーカー「信達生物製薬」が開発する抗PD-L1抗体「IBI308」で、中国製薬企業初の免疫チェックポイント阻害剤で上市申請にこぎつけた。

 

米国の投資家からも高い評価を受けている。16年にナスダック上場を果たしたベイジーンは昨年、米セルジーンに対し、第II相段階にある抗PD-1抗体「BGB-A317」を導出。契約一時金4億ドル、マイルストンまで含めると合計約14億ドルを受け取る大型契約を結び、時価総額は91億ドルと急上昇している。

 

宋氏は「今後、中国の製薬企業は集約化される」と予想。世界的な製薬大手を目指し、中国からメガファーマが誕生する可能性にも言及した。海外展開が本格化する中、ターゲットとなりそうなのが日本市場だ。今後減速が見込まれるとはいえ、ブランド薬では中国を上回る世界第2位市場と、未進出である研究開発型の製薬企業にとって魅力は大きい。

 

PhlRDAは4月に日本オフィスを設立し、日本での活動を開始した。また、中国医薬品市場で18位の「LUYEグループ」は昨年、日本法人を立ち上げており、今年にはパートナー企業との協業により、いくつかの化合物で治験を実施する予定。10年で10製品の上市を計画し、日本法人売上800億円という野心的な目標を掲げる。

 

創薬支援から非臨床試験、臨床試験、製造まで製薬企業向けにフルバリューチェーンのサービス提供体制を持つ中国最大の受託企業「Wuxi」(如是)も、中国での充実した事業基盤や米国での顧客ネットワークを武器に、日本市場での本格展開に動き出している。

 

中国市場は争奪戦へ‐日本企業にも好機

 

中国におけるブランド薬市場規模は15年の210億ドルから20年までに380億ドルと年率二桁以上で拡大する見通し。輸入医薬品で、早期から国際共同試験への参加が許可され、中国を含む国際共同試験による申請が可能になったほか、従来は中国での承認申請の前に必要だった海外承認が不要になり、選定された特定の新薬に対して早期承認に道を開く優先審査も利用できるようになるなど、市場拡大を後押しする。

 

中国の規制当局が新薬の承認審査で海外の治験データを受け入れる市場開放にも乗り出したことで、中国外の製薬企業が中国市場に攻勢をかける。苦戦が続いていた日本の製薬企業にとっても市場を開拓する好機が訪れており、今後市場争奪戦が激しくなりそうだ。

 

輸入医薬品の新たな管理制度を検討し、中国規制当局とのコミュニケーションの中で早期承認を達成しようとする動きも出ている。田辺三菱製薬は1月、中国で慢性動脈閉塞症を適応に販売中の「アルガトロバン注射液」(製品名:ノバスタン)について、臨床試験を実施することなく、虚血性脳梗塞急性期に対する適応症の追加承認を取得した。エーザイは自社創製の抗癌剤「レンバチニブ」の肝細胞癌適応に関して、日本、米国、欧州からわずか3~4カ月遅れでの中国承認申請を達成した。

 

しかし、海外製薬企業に比べると日本の製薬企業では中国に対する投資が少なく、売上全体に占める中国売上比率で10%を超えているのは、エーザイや大日本住友製薬などごくわずかに過ぎない。今後の打開策として、宋氏は「いずれは日本と同じように新薬をベースとした処方になると思うが、付加価値のある長期収載品やジェネリック医薬品であれば、一定のニーズはある」との考えを示す。新薬のみならず、日本では価値を失いつつある長期収載品での事業展開も戦略オプションに挙げる声もあり、日本の製薬企業が中国で成功するためには、市場ニーズを把握し、現地で事業基盤を持つ中国国内のパートナーを持つことが必須になりそうだ。

 

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出典:薬事日報

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